川瀬巴水に山形で会う
視覚オンチの筆者が珍しく熱を上げる明治ー昭和中期の版画家・川瀬巴水(かわせはすい)。浮世絵の正統的な後継者であり、現代の風景イラストに通じるポップさと叙情的な画題はむしろ当時の日本よりも海外で評価され、あっちでは北斎や広重に並ぶビッグネームなのである。その川瀬巴水の展覧会が宮城県のお隣り、山形県山形市で開催されるという。山形美術館で7月から開かれているこの企画展「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」は、2022年に秋田でも開催されており、実は西蔵王の恒例オフ会のあと、そのまま北上して観に行った。作品数も充実していて、巴水真刷り初体験の筆者は知恵熱が出そうなくらい感動した。あれがまた観られるのか!行くしかねぇ!家人を伴って曉号で出撃である。
生憎とクルマ移動に関しては特にトピックはない。R286で川崎町へ進み、川崎ICからE48山形自動車道に乗って山形蔵王ICで市内へ。つまらなくて申し訳ない。なので巴水展の感想と山形市内の飲食店2軒の情報を書いてみる。山形市内へ遊びに行く時の参考情報にしてほしい。
仙台を出発するのが11時くらいだったので、まずは腹ごしらえをすることにした。山形市内には行ってみたい町中華、町食堂、洋食屋の類いが山ほどあるのだが、気が向いてすごく久しぶりに「とんかつちん豚(山形市城西町4-20-30)」さんを訪問してみた。
入店は12時を回っていたがまだカウンター席には余裕があって、家人と揃って「とんかつ定食」を発注。これはよそのお店で言うところのロースカツ定食である。なぜか定食には大根おろしの小鉢が付いてくる。これは山形県内の他のお店でも見られる傾向で、消化を助けるための一品なのか、ついでに和風おろしカツも楽しめまっせというサービスなのか真意がわからない。筆者は後者と推定して、山形でとんかつ定食を食べる時は必ず一切れは和風おろしカツ風に醤油で食べることにしている。またこのお店のローカル注意点としてソースにかけるドレッシングやソースが卓上にない(あるのは醤油のみ)。筆者はキャベツには割と多めにドレッシングやソースをかける派なのだが、醤油オンリーはちときつい。前回訪店時はそれでも醤油だけでクリアしたが、今回は勇気を出して「キャベツ用のソースとかドレッシングとかないすか?」とお店を仕切るおばさん2名に訊いたところ、あっさり「ありますよ」とソースを出してくれた。なんだ、あるんじゃん。おかげで心置きなくキャベツを平らげることができた。もうひとつの注意点は、とにかく白飯の量が多いこと。56歳になった筆者にはもはやトゥーマッチな質量だが、とんかつ、白飯、キャベツをワシワシと頬張り、喉に流し込むように飲み込む快楽には抗えない。今回は覚悟を決めて取りかかったのでライスマネジメントで破綻することなく完食した。食べ終えて改めて思うが、凄い量である。ごちそうさまでした。
ちん豚から山形美術館は遠くない。霞城公園を迂回し市営駐車場に入れれば徒歩1分なのだ。今回の展覧会は山形美術館で開催されているものの、企画協力とクレジットされているステップ・イーストなる会社のパッケージ展覧会のようで、秋田で観たものとキュレーションに大きな違いはなかった。しかしそれでも再び美術館という空間で巴水の作品を浴びるように観賞するのは幸せな体験であることに変わりない。秋田で知恵熱が出そうなくらい感動したと書いたが、これはそれほどオーバーな表現ではない。作品そのもののサイズが小さいからか展示作品数が膨大で、後半はボーッと観てしまうことになった。これを反省して、今回は全体をあっさり眺める感じで観賞することにした。幸い距離の近い隣県山形県で開催されているのだ。会期中2回でも3回でも来れば良い。山形訪問の口実にこれ以上のものはないのだし。
とは言えどうしたってじっくり観てしまう。ここに作品画像を掲載することができないが、お手数でもGoogleで「川瀬巴水 作品」などの適当な語句で画像検索をかけてみていただきたい。そして検索結果としてだーっと表示されるサムネイルをできれば1枚1枚クリック(タップ)して大きく表示してみていただきたい。筆者が前述した「叙情的」とか「現代に通じるポップさ」の意味がおわかりいただけるだろう。
ポストカードなどの公式グッズをいくつか購入して退館。図録は秋田で買ったからいいや。次回観賞時は関東大震災後の作風変化を中心に観賞してみたい。美術館を出て灼熱の熱気!と覚悟していたが、風さえ吹けば日向でもそれほど苦にならない気温。ひとまず曉号を駐車場から出して七日町付近を徒歩で探索することにする。
山形市七日町は、ある意味で本当の繁華街。クルマでどうこうするよりも自分の足でてくてく歩きたくなる町だ。仙台市で言えば中央通りや一番町に隣接する区域の雰囲気に近いが、こちらの時間軸は昭和から平成に切り替わるタイミングを彷彿とさせる。明治、大正から残っている建物もちらほらあり、人出も多く賑わいもちょうど良い。そう考えると仙台って新陳代謝が激し過ぎるんだよなぁ。味のある建物やお店がいつの間にかギラついたビルに変わっていたりして。
座ってお茶を飲みたい気分だったのでカフェを探す。便宜上探すと書いたが、七日町初心者の筆者、ここはもう老舗喫茶店「シャンソン物語」一択。しかし、なんとお休みだった……!これでフラれるのは2度目である。実はまだシャンソン物語に入店したことがない。残念。他にどういうお店があるかな?と南に向かって歩き出したら、すぐに「和洋菓子十一屋」さんを発見。どうもお菓子屋さんの奥にはカフェ?レストラン?があるようだ。洒落た外観から入店を即決。店舗奥のレストラン「十一屋レストラン kitone」さんへ。
ちん豚のヘビー級とんかつ定食の後なのに、うっかりフレンチトーストなんてボリューミーなメニューをオーダーしてしまった。でもおいしかったからOK。店内をよくよく見てみれば、カウンター席には常連らしい若い女性と年配の男性がそれぞれ店員と談笑している。女性2ー3名のグループの声の響きがあまり気にならない。そう言えば天井が高く、グランドピアノ設置済。生楽器の小編成アンサンブルなどと相性が良さそうなルームアコースティックだ。帰り際にチラシを見つけた。管楽器三重奏のコンサートが近々あるらしい。なるほどね。家人の記憶によれば改装成って日が浅いらしい。これから人気になりそうな様子。おいしかった。ごちそうさまでした。
巴水をじっくり見て脳みそのリソース残量はぎりぎり。歩き回っているから体力の残量もぎりぎり。ということで一路帰ることにした。帰路は往路と同じなのでやはり書くことがない。すみません。6時間/129km。8月25日までの展覧会期中に少なくとももう一回は見に行くだろう。巴水も楽しみだが七日町周辺のおいしいお店への訪問も楽しみだ。
今回訪れた山形美術館とちん豚、kitone
acatsuki様
複数回観に行きたくなるってあるものですよね~。
私の場合は、近場でしたが、仙台市博物館に聖観音菩薩立像を、東北歴史博物館で鑑真和上像を、それぞれ複数回観に行きました。聖観音菩薩立像は美しく神々しすぎて圧倒され、しばらくその場から動けませんでした。細かいことが分からなくても観て圧倒されるっていうことはあるものなんだなぁ…とこの歳になって経験しました。(滝汗)
美術系はまったく疎いのですが、あとは棟方志功さんの作品もすごい迫力でしたっけ。
まぁとにかく、目で見る芸術系は本当によくわからない私ですが、仏像は確かに圧倒されることがありますね。立体でショックを受けたのはダリの彫刻作品群です。裏磐梯の諸橋美術館。あそこもそうとう時間をかけて見ないと「な、なんだかすげえ体験をした……」という感想で終わってしまう、ものすごい迫力満点の美術館だと思います。裏磐梯っていうと仙台から走って行くのにちょうど良いし(笑)。
「川瀬巴水 作品」でググりました。「叙情的」とか「現代に通じるポップさ」、その通りだと思ったのよ。そしたら驚いたことにもう60年以上前にお亡くなりになっているじゃない!現代の方かと思った。すごい!
そうなんですよ。ビッグネームに比すれば新人扱いで良いと思うんですけど(笑)。日本人に響きがちな要素を言葉少なに訴えるような画風なので、未だに古びないのだろうと思います。会場で本当に版木から摺った作品が2点販売されていて、10万円しないの!一瞬「買えるな……」って思っちゃった(笑)。
acatsuki様
諸橋美術館は行きたいと思いつつ、まだ行けておらず…。(残念)
30年ぐらい前、箱根の彫刻の森美術館に行ったとき、「なんか、すごいの見てるんだろうな」で終わりました。(滝汗)
今行ったらもう少し味わえるのかと尋ねられると、全く自信がありません。(滝汗その2)
諸橋、裏磐梯方面へふらりと出かけた時に3時間くらい時間に余裕があったらぜひお立ち寄りをお薦めします。私は以前あおさんがプランを立ててくださった主催オフ会で初訪問。その時でさえ「おいおい、こりゃオフ会でちょっと立ち寄ってさらっと見て行くか、じゃ済まないぞ」と驚いて(かつ疲れて)、後日再訪したクチです。
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美術館にどうしてカフェが併設されているのかよくわかりました。あれを観賞したあとすぐにクルマなんか運転できないです(笑)。それくらい脳みそに刺激強いです。お茶と甘味でも口にして気分をリセットしないと大変(笑)。
霞城公園は庭なので、毎週のように行きますが、美術館は何時も素通りしております(猛省)
シャンソン物語最近やってるのかなぁ~。私も最近休みの日に2度ほど行ってみたけど開いてなかったです。
「ちんとん」ほんと頭の中から消えてました。やってるんですね!宮城の方から情報もらうとは・・・
霞城公園、いいっすよねー。大好きなんですが、広くて疲れる。ちな、シャンソン物語、閉業疑惑ですか!?友人夫妻のデートスポットだったのに(爆笑)。で、ちん豚はばりばり現役ですよ。かつ丼のオーダーも多かったなぁ。