【大人の遠足】福島・伊達屋の塩ラーメンと松川浦
メルセデス・ベンツ SLC180と曉号の2台で「大人の遠足」に出かけた。メンバーはSLCオーナーのO、Sonido del Vientoのおさとさんとまりんちゃん、そして筆者の4人である。行く先は福島市内、そして相馬の松川浦である。
大人の遠足が恒例行事となった背景を詳述はしないが、きっかけはレコーディング休憩中の与太話である。ここ最近筆者が編曲やレコーディングで関わるSonido del Viento(以下ソニド)のレコーディング現場では、昼ごはんを食べながら「あそこのあれがとても美味い」的な話で毎度盛り上がる。となれば「じゃあみんなで行こうよ!」というのが自然な流れ。Oはそのレコーディングスタジオのオーナーにしてドラマーであり、筆者とは高校2年生にあがる春から数限りないステージでいっしょに演奏してきた盟友である。あれ?今気付いたけど今年で出会ってから40年じゃないか!O君これからもよろしくね。ともあれここのブログでは触れていなかったが、山形でそばとか、仙台・秋保温泉のさらに奥地でピザとか、ウマイモノ行脚が秘かに続いている。
今回のメインディッシュは福島市のラーメン屋「伊達屋(福島市南沢又下番匠田22-22)」さんの塩ラーメンである。伊達屋の人気はすごい。すご過ぎる。開店は11時だが店前の入店希望リストに出来るだけ早く名前を記入しておかなければ、閉店の14時までに入店できない可能性がある。我々は9時過ぎにリストに記入したが、すでにリストの6番目であった。1番目の人はいったい何時に記入したのだろうか……。
先を急ぎ過ぎた。まぁそういう人気店なので我々は仙台を8時に出発した。まずはE4東北自動車道に仙台宮城ICから乗り、福島飯坂ICで降りる。平日の朝、E4の走行車線はそれなりに走行台数が多く、どうしたって追越車線にたびたび出ることになるのだが、1.5L自然吸気のNDロードスターでSLCに着いて行くのは運転手が野生の予想運転スキルをフル活用する必要があり、どうにも油断がならない。しかも同乗のまりんちゃんとの音楽談義も交わしつつである。もっともこの運転中のおしゃべりが眠気対策には非常に有効でもある。例によって前日夜はほとんど一睡もできなかったのだが、おしゃべりのおかげで運転中睡魔に襲われることが一度もなかった。すばらしい。
福島飯坂ICから福島市内を少し走り、K3沿いの伊達屋にまずは向かう。このK3は福島交通飯坂線というローカル鉄道と並走しており、沿線には昭和・平成を生き抜いてきた老舗商店が並ぶ味わい深い道。以前福島駅前から飯坂温泉まで走ってみたことがあるのだが、たまたま夕暮れ時ということもあって旅愁漂う素晴らしい体験だった。センチメンタルなヘンタイ諸氏にはオススメの県道である。
前述のとおり伊達屋駐車場に9:15に到着。お店の佇まいといい隣接する駐車場の空気といい、この段階では伊達屋の人気っぷりは一切伝わってこない。入店希望者リストに記名してきたOが「オレらでもすでに6番目」とあきれつつ笑いながらSLCに戻ってきても、やはり「へぇ……」というマヌケな感想しか持てなかった。常連のO曰く店内は狭いので6番目では一巡目で入店できるかどうかの瀬戸際らしい。おいおい開店2時間前でっせ?どんだけ人気なんだよ。と驚きつつ、こうなるとあとは開店時間を待つしかない。そこで時間つぶしのために我々はほど近い道の駅ふくしまへ移動。
道の駅ふくしまはようやく実用に足るようになったE13東北中央自動車道の、福島大笹生ICの新設に伴って整備された比較的新しい道の駅。建物内外はきれいだしフードコートメニューも充実している。このフードコートに周辺の有名店の名物メニューを並べるのが新し目道の駅の特徴ではないか。お店の名前でお客を呼ぶのである。ここでもいくつか食べてみたいメニューが並んでいる。だがしかし時は10時前で当然フードコートは営業準備中である。辛うじてピーチジュース400円を購入できた。福島でこの季節と言ったら桃である。
このピーチジュースがとても濃厚で、最初の一口で驚くことになった。うまーい!もはやSAや道の駅の屋台だからと言って舐めてかかると損をする時代なのだ。気を良くして家族へお土産を購入。もちろん桃も買った。こいつがまた甘味も酸味も素晴らしいバランスで……。言うまい。みんな福島の桃を買って食べてくれ。
そろそろ10時というあたりで伊達屋へ移動開始。重ねて書くが開店は11時である。だが10時くらいに駐車場に入らないと、あっという間に満車になってしまうという(店裏に第二駐車場もあるのだが)。マジで?本当に1時間も駐車場のクルマの中で待つの?と半信半疑で伊達屋駐車場に入った直後からどんどんお客のクルマが集まり始め、10時過ぎには満車になっていた……。筆者は行列が嫌いなので自ら選んでこんな人気店で食事をすることはまずない。これも信頼できる舌を持ったOがぜひにと言う店だからで、2時間前のリスト記名や1時間前から駐車場で待機なんて、筆者にとってはもはやアトラクションである。ホントにそんなに美味いんだろうな?
10:50、伊達屋の前にはすでに20名近い待ち客がゾンビのように群れていた。リストに記名済だから別に焦る必要などないのだが、じりじりと店の入り口に近づいてしまう自分がいる(笑)。ここまでにOから聞いた伊達屋の情報を整理すると、
・塩ラーメンが評判のお店
・年配のご夫婦だけで営業している
・混乱を避けるためにリスト記名順に呼び出されて入店
・Oは下手すると月に2回くらい来店しているほどお気に入り
だという。そもそも筆者の中でラーメンという食べ物はプライオリティが低い。増してやあっさり醤油味を好むので塩や味噌など数年に1度食べるかどうかである。そんな自分がこんなにワクワクしてしまうとは……。それもこれもOの盛り上げがうまいことと、たむろするゾンビたちの「早く喰いたいオーラ」にあてられたせいであろう。11時ぴったりにご主人が暖簾をかけ、奥様がリストの最初の人を呼び出す。驚いたことに最初の人は「1名様」だったのだが、その人が奥様と店内に入ると入り口はぴたりと閉められてしまった。ええええ???なんでも注文トラブルを避けるためにひとり(一組)ずつ入店するのだという(O解説による)。おおおおお!すごい焦らしテクニックじゃないか!そうやって二組目、三組目としずしずと入店が進み、とうとう我々の順番がやってきた。店内はカウンターが数席、4人掛けテーブルがふたつ、2人掛け席がふたつとなるほどタイトである。もし一組目も二組目も4人とか6人の客だったら、我々は確実に一巡目では入店できなかったろう。着席するかしないかのタイミングで奥様から注文を確認される。醤油も味噌もあるのだが(味噌味など白みそと赤みその2種類ある)、我々4人は塩一択。筆者は塩チャーシューメンをお願いした。
やがて各々が発注した4種4杯の塩ラーメンが着卓。まずはスープをひとくち……。
うーん。言葉が出ない。確かに塩味だが単なるあっさり塩味ではまったくない。いやむしろ普通の醤油ラーメンなどよりも複雑玄妙、あっさりとも濃厚とも言えない不思議なスープである。ひとつ言えるのは決定的なひとつの味わいがのど越しまですべて支配的に振る舞うタイプではないということ。様々な要素が複雑に絡み合い、その奥行きが果てしないマルチレイヤーなスープである。ごく表面的な、最初に舌が認識する成分が「塩味」というだけの話で、喉を通過するまでに様々な味わいが舌の上で展開する。こうなるとストレート細麺は大正解で、汁絡みがあっけない方がスープと麺のバランスが良い。極端に熱いわけでもないので、最初の一口からグイグイ行けるのがまた嬉しい。また3枚乗っているチャーシューは厚み充分、しかしほろほろと崩れてしまうほどの煮込み具合で、のんびり食べていられない。スープの味わいが複雑なので、ストレートなチャーシューの味わいが良い区切りになる。と言う事は……とふと気が付いて途中で投入した白こしょうもこの丼の中ではいつになく存在感が強く、単なる味変以上の効果を発揮。
もう!なんなんだこれは!美味い!美味すぎる!!
Oはオートバイも嗜むので、そちらの仲間とのツーリングで頻繁に来店するという。帰路、インカムを通じた会話では「次は何を注文すべきか」という議論になるほどのぞっこんぶり。だが「いざ入店すると塩ラーメンを頼んじゃうんだよなぁ」とのこと。わかる。筆者ごときがどれほど長考を重ねても、せいぜいライス類をアドオンするくらいしか思いつかない。すごい体験をしてしまった。来週にでもまた来たいと思っても、2時間前にリスト記名、1時間前に駐車場待機である。仙台からの客としてはなかなかに愛を試されているように感じる。だが伊達屋の塩味ラーメン、そこまでしても食べる価値があると断言できる。これはアレだな、飯坂温泉に宿を取って、8時にリスト記名(リスト出てるのかな?)、電車で入店というプランがお大尽コースではないか。本当にうまかった。ごちそうさまでした。
感動の伊達屋を後にし、次に我々が向かったのは遠く太平洋の際、相馬市の松川浦である。再びの福島飯坂ICでE4へ。桑折JCTからE13に乗り、一度霊山ICで降りて「道の駅伊達の郷りょうぜん」に立ち寄ろうとしたが、駐車場満車で諦め。E13に乗り直し相馬ICまで走りきる。あとはR115+K74で海岸を目指し、海と浦を仕切る岸を北上する。ここまでの経路、筆者なら迷わずR115を走るところだが、高速道路を使う選択はこういう機会じゃないと試さないのでありがたい。
ご覧のように松川浦は東に太平洋、西に松川浦、間を走る細い岸がそのふたつを分ける。Oはここをフルオープンで走ったら気分爽快MAXと目論んだ。それは道理である。一方筆者はと言うと松川浦を訪れたことは何度もあるが、いずれもR6経由で北から、あるいは西から浦北側へのルートしか走ったことがなく、大洲海岸沿いの南北の一本道を走破したことがない。Oのプランに是非もない。当日松川浦の天候はどんよりした曇りで気温は30度少し。一応レディが同乗していることもあり、オープン走行を本当に実行するのか現場に到着しても半信半疑だったが、一旦路肩に寄せたOはSLCのルーフをオープンに。初志貫徹を是とする筆者も幌を開け崖を北上。これで晴天なら最高に気持ち良かったろうが、反面灼熱地獄でもあったはずで、結果的にベストコンディションだったということになろう。
松川浦のゴールは「浜の駅松川浦」。かなり食指の動く海鮮丼などがあったが、さすがに伊達屋の塩ラーメンを上書きする気になれず。浜の産直広場としても扱い商品がかなり魅力的で、平日の午後早くだというのに客足が途絶えない。うーん、これは今度はこっちでの昼食をメインに据えたプランを考える必要があるなぁ。
三々五々にお土産など購入、その後はアイスを食べながら我々4人で立ち向かう本業の制作案件のスケジュールや内容を打合せ。海の匂いを感じながら日陰のテラス席でのんびり話し合うのも悪くない。一定の結論が出たところで帰路に着くことにする。実は筆者の充電が切れかかっていたようで、一部経路を思い出せない。宮城県山元町あたりまでは県道を北上したはずで、たしかE6常磐自動車道へ上がり、仙台南部道路経由でE4に合流。仙台宮城ICで降りたのは間違いないところ。朝の集合場所、Sonido宅で解散となった。同乗者を不安にさせない運転の励行とパワーのあるSLCに着いて行くというふたつのタスクを常に実行しつつの道行き。少々疲れてしまうのも仕方ない。約8時間/240km。1台のクルマにみんなが乗り込んで、道中車中わいわい言いながらの旅路も楽しいが、こんな風にオープンカーに分乗して走るにもまた別の楽しみがある。そして仲間とのツーリングを体験すると、今度はひとりマイペースに走る楽しみもまた身に染みてくる。次のひとりツーリングはどこに行こうかと考えるだけで楽しい。そしてこの大人の遠足、次回のお店推薦人は筆者なのだった。山形、福島と来たから、次の一手は難しいなぁ。このメンバー、みんな舌が肥えてるから(笑)。9月10月は制作に集中せざるを得ないが、その打ち上げも兼ねてまたこのメンバーで出かけることだろう。参加各位お疲れさまでした。次回もよろしく。
伊達屋はおいしいですよね。
スープがとてもうまいし、麺と具材もバランスよくて時々無性に食べたくなります。
数年前に何度か山形経由でツーリングして、毎回塩雲呑麺を頼んでました
あの行列に並ぶことを考えると、いろいろ試せないんですよね。
大当たりのメニューを1回頼むと、外したくなくて次回も同じの頼んでしまうw
お!denzouさんもご存知でしたか、伊達屋。今回お初ですけど本当にびっくり。うまい。しみじみうまい。でも9時に1回名前書きに行ってまた10時に戻ってきて1時間待ちってのは、それがベテランが到達したもっとも無駄のない所作だとわかっていても、ちょっと面倒くさい。で、そこまでしたら絶対間違いないヤツを頼んでしまう……、仕方ないことです。
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実は開店を待ちながら友人Oと「店の入り口で朝から名前と人数を電話で受けて記入するバイト」やったらそこそこ儲かるんじゃね?という話をしていたんですが、そんなズルッこしてたらあっという間にSNSで何もかも晒されて社会的に抹殺だわなってことになりました(笑)。
福島の桃に引かれたMotiです。
過日、相方と買いに伺いました 汗
(旅行がてら徳を積む理由もありますが・・・)
3パック?購入したはずなのですが、翌日にはなくなっていました 笑
おいしい食情報ありがとうございます 伏
それはそれは、さぞ高い徳を積まれたことでしょう(笑)。しかし6個が翌日に完食……。いや、わかる。あれはそれくらい行く。