試乗記・アルファロメオ 4C Italia Spider – 器に入りきらない
2024年10月下旬に開催された宇都宮での表題車のお披露目オフ会に参加した。なんのお披露目かというと千葉組重鎮じゅんすかさんの新足グルマ「日産 マーチ 1.5nismo S」と関東組首領Profumo姐さんの「アルファロメオ 4C イタリア スパイダー」である。マーチの試乗記は別途エントリーしたのでお時間があればご覧いただきたい。本稿では4C イタリア スパイダーの試乗印象記をお送りする。
4Cを運転するのは初めてではなくて、じゅんすかさんの(そう、じゅんすかさんの主力戦闘機は4Cなのだ!)愛車に試乗させていただいたことがある。まったく消化できなかった(笑)。各要素は驚くほど性能が高いのだが、それらが連携しておらず(あるいは連係不足で)どうしてもクルマと一体感を得られなかった。なるほど凄い!楽しい!だけど……と、なぜか最後にエクスキューズが付いてしまう。以前から折々に「どうして4Cと仲良くなれないのか」と理由を考えてきた。突き詰めれば恐らく以下の2点が原因だと思う。
1.RHD環境でのペダル配置
2.後方視界の悪さ
筆者はよくRHD環境のペダルオフセットについて糾弾しているが、4Cの場合単純にオフセットしていて踏みにくいのではなく、都度ふたつのペダルを探しながら運転しているような気になってしまう。Aペダルは思っているよりも左に寄っているような気がするが、別に踏めないわけじゃない。だがBペダルに足を乗せ替えようとすると踏面がずいぶん手前にあって、Aペダルを踏む右足の踵の支持を一度解放するような動きになってしまう。だからBペダルからAペダルへ戻る時、今度はAペダルを探すような感覚になってしまう。日本導入時にディーラーである(株)イデアルさんのバックヤードで着席だけさせていただいた時は、こりゃ左足ブレーキが推奨されているんじゃないか?とすら思った。となれば乗りこなすなど正直お手上げである。
後方視界はこの手のクルマでは文句を付けるべき要素ではない。それは承知しているが、ペース遅めの日本の公道での合流や右左折時の心理的負担になることも無視できない要素ではある。
以上の2点は試乗を終え、帰宅し、マーチ1.5 nismo Sの試乗記を書き終わるかどうかというくらいまで時間が経たないと到達できなかった想定原因である。試乗前にはここまでクリアに考えや感覚をまとめられていたわけではない。ハンドルの位置が右と左でもペダルの踏みにくさは同じだろうと漠然と運転席に座ったのだ。まずハンドルを握ってみる。相変わらず停止状態のハンドルは岩のごとく動かない。ノンアシスト。これが動き出すと実に甘美なステアリング機構に豹変するのだけど、停車していると「これ、ホントに回るの?」と思ってしまうほど重い。相変わらずですなぁ。ハンドルセンターと身体の中央はぴったり。よしよし……と思いながらAペダルに足を置こうと伸ばしてみると……。
驚いた。ごく自然に伸ばした先にAペダルが待っていたのだ。
RHD4Cとはここが決定的に違う。オフセット皆無のペダル配置なら曉号ことマツダ ロードスターND5RCのセールスポイントのひとつで、毎日その恩恵に浴している。だからこそLHDの4Cイタリアのペダル配置の素晴らしさも太鼓判を押せる。RHDでは異様に感じてしまうほど違和感のあるBペダルの角度やAペダルとの距離も、LHD環境ではまったくスムースに右足1本で踏める。
シートとハンドルのセンターがぴったり。そして自然な姿勢でペダルを踏める。これだけで印象がガラッと変わる。クルマそのものが一回り小さくなったように感じられて、自分の制御下に置ける自信が湧いてくる。なんでこんなに違うんだ……?と腰から下をぐるりと見てみると運転手の身体そのものがクルマの中心方向に向かってやや偏向して座らされているようだ。それがますますペダルの踏みやすさに繋がっているのかもしれない。余談だがもしそうだとして、この環境をRHD環境にミラーリングしているなら本来はもっと違和感なく運転できたのではないか……。ナゾだ。もう一回RHD環境の4Cを運転してみないとわからない。
何かあったら洒落にならないので、オーナーP姐さんに助手席に座ってもらいエンジンをかける。今回は早く前に進みたくて仕方ない。モード設定もそこそこにまずはノーマルモードで走り出す。100mも進まないうちに運転のしやすさを確信する。オフ会会場の道の駅を出てR293を車列に紛れて南下する。いやもうこりゃ楽しい。速く走っていなくても楽しい。ノンアシストのハンドル、トルク感溢れ上限を感じさせない加速、脚色のない制動。クルマの振動を余さず背中とお尻に伝えてくるカーボン素材のシート。路面とクルマの情報の洪水だ。「あ、自動車ってこんなに情報を伝えてくれるものなのか」とちょっと驚いてしまう。
一方で助手席のP姐さんは「えー?なんで?そんなすぐに慣れなかったよ!」と驚いている。当のP姐さんはむしろRHD環境のじゅんすか号の方が違和感が少ないという。おもしろいものだ。
ところで4Cと仲良くなりづらいもうひとつの理由、後方視界。右だろうが左だろうがこればかりは絶望的だが、左車線を走る日本の公道では右後方視界が悪いのは致命的に運転しづらさに直結だ。だが本機には右リアタイヤ付近を映すCCDカメラ+小モニターディスプレイが増設されていて、センターラインを踏み越えているかどうかのチェックを容易にしてくれていた。LセグメントのLHD車両で右後方視界を小型カメラ映像でサポートするユーザーは実は多いと聞いたことがあるが、なるほどこういうお助け機能はやせ我慢せずに積極的に取り入れた方が良いと思った。だが本機にはふたつの後付けCCDカメラ映像によって、右後方と右リアタイヤ付近の映像がモニターに映し出されていた。特に右リアタイヤ付近の映像はセンターラインを踏み越えているかどうかのチェックが容易で、なるほどこういうお助け機能は積極的に取り入れた方が良いと思った。※ 試乗コースを冒険したら道に迷ってしまい、けっこう狭い道を走った上に対向車との際どいすれ違いなどあったが、このふたつのカメラには助けられた。もっとも試乗後半はほとんどそれらを見なくても車幅が掴めるようになってきていたけれど。
※勘違い。カメラは1台だけだった。オーナーProfumo姐さんのご指摘で発覚。すみませんでした。
どんなに4Cをフレンドリーに感じたところで「欲しい」という情動にはつながらない。素晴らしい機械だけど、晩ご飯の材料の買い出しに乗り出すクルマじゃない。400km先の旅行目的地へひたすら走るとか、サーキットに持ち込んで限界性能を試したりするためのクルマだ。そういうシチュエイションが筆者には滅多にない。だから4Cと暮らす生活がピンと来ない。残念だがこれが人間の器というものだ。逆に言えば「自動車の最もピュアな姿を感じてみたい」「現代の自動車工業の高みを体感したい」なんて人にはぴったりだ。もちろん購入と維持に必要充分なお金を持っているという条件は付く。だがお金の条件以外にも4Cは乗り手を選ぶ。例えばフェラーリやランボルギーニの一連のV8車を考えてみよう。4Cはそれらとは明らかに風合いが異なる。価格帯だけの話ではない。フェラーリもランボもある種のイメージ商売だ。もちろんアルファロメオも同類だが、そんな中4Cだけはあまりにも生真面目に「自動車の高性能の一例を作る!」気概に溢れている。憧れや雰囲気で乗るクルマじゃない。運転下手でも488を運転すれば「うぇーい」と盛り上がれるかもしれないが、4Cの場合は発車して最悪5分で路肩に突き刺さっている可能性が高い。この運動性能を御せる人、御したいと真剣になれる人以外は気軽に手を出さない方が良い。これも筆者には縁がない理由だ。
こんなに楽しいのに!Profumo姐さん、ありがとうございました。末長くお幸せに。
オーナー様より早いコメントすいません!RHDぜひもう一度(笑)!個人的にも確かにLHDの方がレイアウト自然だと思いました。「お金以外にも乗り手を選ぶ」のはそうかもしれませんね~。経済的に余裕があってもステータスで乗る車ではないですよね(因みに未だローンの最中)。当たり前だけどスパイダーも気軽なオープンカーではなかった(笑)!スパイダーですらこのスパルタン(というよりストイック?)さを体感すると4Cは「アルファロメオDNAの具現化」かもしれないです。本国では「ピュア アルファロメオ」のキャッチコピーだったような。
あぁ、もう、ぜひじゅんすかさんの4Cの再試乗、お願いしたいです。オーナーさんがわざわざ書いてくださっているので便乗してしまいますが、4Cってステータスで乗るクルマじゃないですよね(笑)。世間一般的にアルファと聞いてイメージするのは147,
156,Brera,ジュリエッタ……と来て今じゃジュリアという、ラグジュアリだがスポーツマインドがちらりってやつだと思います。反して4Cはあまりに筋肉バカ過ぎる(笑)。ストイックにも程がある。そいつをピュアアルファロメオと言われたら、こっちは困っちゃいますよね(笑)。
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実際運転してみれば面白いのも混乱に拍車をかけとる(笑)。
オーナーです(笑)。納車直後から緊張しまくって、乗りこなすどころか普通に運転することすら危ういオーナーです(涙)。いやぁ、断然じゅんすかさんの4cのほうが扱いやすかった。左ハンドルのほうが大きな車は運転しやすいのに…。その違いがなんなのか、もう少し突き詰めて考えてみたいと思っています。うーむ、なんでだろ。
どうでもいい修正ですが、運転中に起動しているCCDカメラはサイドミラーの根元についてる1台だけだよ。それがリアタイヤあたりを映してくれる。右後方は普通のサイドミラー。あとはバックカメラと連動しているルームミラーに映るタイプなので見る機会がなかったかも?
まさに、運転してあれこれ刺激されて楽しいクルマなのだけど、普段使いは私には難しい。911は買い物だってなんだって気楽に行けたのに。気楽に買い物に行けないクルマは過去所有していた中で他にあっただろうか?あ、Type 1がちょっとその気があったかも。4cSpider Italiaが納車されてから、「自分にとって好ましいクルマとはなんぞや」という禅問答に陥っています。このテーマ、そのうちエントリにあげたいと思ってる。考えれば考えるほど難しいよねぇ。
改めて試乗させてくださってありがとうございます。右、左での運転のしやすさの体感違いの原因、もしかしたらチルトの下げ幅ってのがあるんじゃないかと思ったりして。4Cのハンドルにはチルトもテレスコもあったけど、調整代がもう少しあるといいなと思いました。ハンドルを上から見下ろせるくらいまで下げてもメータークラスタの見やすさが確保できていないと、運転しづらいと思うかもしれません。自分の例で言うと買ったばかりの頃のMiToがそうで、結局ステアリングコラムを下から支えている横棒を吊っているロッドにワッシャー咬ませて3mmくらいチルト値を下げたらめちゃくちゃ運転しやすくなったんです。あれじゃないか。
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カメラの間違い、ご指摘感謝です。カメラ映像ディスプレイとドアミラーの2面なのね(笑)。やっぱり緊張してたんだなぁ。
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自分にとってk路の増しいクルマ???それが解ったらもう頻繁な買い替えは無くなるかもね(笑)!
遅ればせながらお疲れさまでした!
いやはや、相変わらずの鋭い感度に驚かされますね。普段乗ってる車が曲がらない止まらない進まないとペダル配置やハンドリングセンター?なにそれ美味しいの?みたいな感じなので自分だとペダル配置の良し悪しすらわからない鈍感と化しております…
私も数度じゅんすかさんの4cを試乗させてもらいアクセル、ブレーキ、ハンドリング、Gの掛け方、掛かり方などうまく纏めることが出来ずに四苦八苦した記憶をもってましたがP姐さんの私的にもっと纏めることが困難な青い目をしたイタリアっ子4cを経験することで日本にホームステイ歴の長いじゅんすかさんの4cとは少し分かり合うことが出来ました!
羨ましいとは思いつつ自分が持ってても絶対しょーもないところで段差に引っかかるんだろうなぁと(笑)
自分の試乗時のチェックポイントなど受け売りでしかないのですが、いくつか必ずここはチェックするという自分なりの基準をもっていると、体感値だけでなく理路として感想を言語化しやすくなる側面は確かにあると思います。体感センスが低いのでそうせざるを得ないってのもあります(笑)。しまの助さんはイタリアの方が運転しづらかったですか……。うーん。いちどテッテテキに2台乗りくらべしてみないとダメですね。しょーもない段差の件は私もまったく同様(笑)。あと縁石乗り上げが致命的になりそうなんで、ホント、無理ですわ。
こんばんはー
お披露目会行きたかったんですが都合つかず…
まだ直にお目にかかれてないので早く見たいなとw
やはりアバルトもそうでしたが右ハンドルのペダル位置はなかなかどうしてなんですねw
実はこのコメント欄にはハンドル名「ざわ」さんが複数名おられまして(笑)。私の想像どおりの関東にお住まいのざわさんだとしたら、なんか愛車に大変動があったと風の噂で訊きましたが……。ともあれ、ハンドル位置の右・左の話。でもLHDのイタリアオーナーはRHD 4Cの方が抵抗が少ないって言ってるんですよね(笑)。どういうこっちゃ。私個人の体感値としては左の方が断然運転しやすいです。やはり右環境を真面目に作るつもりはないんだろうと思っとります。
なんとw
噂を運ぶ風はなかなか強い風だったようですね…w
姐さんのタイミングと同じく大変動してしまいましたw
またどこかの機会で乗ってくださいませー
「大変動」、確かに(笑)!オレなんかが運転していいのか躊躇するようなクルマと訊いております。まずは眼福に預かれれば幸いです。
ざわさん
そうなのよね、納車1日違いだもの。
うちの青いやつ、なかなかクセモノです。私が未熟なせいももちろんあるのだと思いますが、結構手こずってるんです。
まぁ、みてやってください。ぜひ並べましょうぞ!
acatsuki-studioさん
以前のメガーヌや姐さんの車に比べるとだいぶレア度は下がりますので、全く問題ないです。ぜひぜひ乗ってやってください!
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Profumoさん
ぜひぜひお願いしますw
いまはなぜか雨遭遇率100%なので、その呪縛から解放されたらお願いします。晴れの日にあまり乗れてないので、うちもまだ完全に感覚掴んでません…w
>以前のメガーヌや姐さんの車に比べると
あぁ、言っちまったよ……。レアかどうかについては地域性もあると思います。少なくとも仙台では1回見たような気がしますが、夢だったかもしれません(笑)。もし運転させていただけるなら、全力で安全運転します!