アルファロメオ 159を考える・その5

しつこく筆者の考察を書き記してきたこのシリーズは今回で最終回。159という車種全体の話ではなく、筆者が購入した個体のあれこれを書いておく。

●くたびれた足●
初年度登録2009年、総走行距離約12万km。仕方ないことだが足回りのヘタリは鈍感な筆者でもわかる。アスファルトの継ぎ目などの日常的なアンジュレーションから受ける衝撃の吸収が悪い。悪いってか遅い。「ドッ」で済む緩衝が「ドドン」みたいな反応。それでもシャシーはどこ吹く風みたいな頑丈さなのは素晴らしいが、ボディ外皮はこれ、けっこうダメージが溜まってるんだろうなぁとも思う。これが曉号のようにブッシュ類交換でリフレッシュできるなら万万歳だが、純正にせよ車外品にせよコイルやダンパーも含めて刷新となると、金額が想像もできない。

●1インチダウン●
足周りと言えば、ウチの個体は現在スタッドレスタイヤを履かせていて、これが18インチ。

現状)235/45/R18
純正)235/40/R19

高性能バージョンを意味するTiなもんだから純正状態で車高が低められており、18インチと言えども意外や底摺りが多い。これで積雪30cmなんて話になったらまた悪夢のエンジンルームアンダーカバー(の前部)脱落でアルファロメオ雪かき機になりそうだ。幸い2024-2025シーズンの仙台は降雪少なめでそんなことにはなっていないが、2-3月にどうなるかなどわからない。くわばらくわばら。19インチの裸ホイールは嫁入り道具の中に入っているので、ノーマルタイヤだけ新調すれば良く、実は今これがもっとも楽しみ。

●ルームミラーが暗い●
後部座席はプライバシーガラス。おお!高級車!しかし純正ルームミラーで後ろを覗き込むと、暗いし視野は狭いしで困っている。特に晴天時は四捨五入で60歳になるおじいさんの目では絞り速度が追いつかず、このままでは安全確認すら覚束ない(世の高齢者自動車事故ってこういうマイナーな身体機能低下が下地にあるんだろうなぁ)。デジタルミラーの導入を目論んでいるとあるエントリーのコメント欄に書いたら「ワイドミラーでも良いんじゃね?」的なアドバイスを頂戴した。これぞ正に天啓。さっそくアルファロメオ MiToに乗っていた頃に装着していたワイドミラーを、捨てずに取っておいたはず……と探したが見つからず。思えばあれは親友トシユキからもらったもので、もう30年以上前の製品。いや新しいの買えよと自分に自分で言いたい。

●音が出ない●
オーディオの音が出ない。正確にはスイッチを入れて再生が始まっても音が出ない。でも諦めずにそのまま走っていると唐突にドンッと出る。一度出るともう音が途切れることはない。しかし良く聴くとローが掠れていたりする。左右のバランスおかしいなと思うと片側のローが鳴っていない。スピーカーのユニットが固着してるのか?と思いボリュームを上げると掠れは消えるので、どうもユニットがダメなようだ。後付けされたオーディオユニットはcarrozzeria DEH-P01という、ブランドの中ではハイエンドモデル。筆者も以前導入を試みたが正札11万円の前にあえなく玉砕。しかもウチの159には別体アンプが仕込んであって、「そういや予備タイヤって積んでるんだよな」と確認のためにトランク床面カバーを上げてみて驚いた。スピーカーはJBLものに換装してあるらしい(現物を見られないのだが)。このシステムが完全動作している時の音は素晴らしい。1kHz付近に妙なピークがあるが、解像度が高く、高入力でもまったく歪まない。いや、歪んでいるのか?それすらアナログオーバードライブで気持ち良い。別体アンプに起動時の保護機能があるのかもしれない。原因調査からかぁ。めんどうくせえ。

予備タイヤってどうなってんだ……?と
トランク底蓋を開けてみて爆驚!
ワイヤリングの美しさに惚れ惚れ

●プラグ交換●
消耗品だからいつかはせねばならぬ。実は納車前の整備メニューにエントリーされていたが、急ぎじゃないし……と見送っていたもの。アルファロメオ仙台=株式会社イデアルさんへ持ち込むのが最善だが、工賃を考えると腰が引ける。今回はかかりつけ医、株式会社ファン・ファクトリーさんのKさんへ相談してみようと思う。プラグはネット通販を利用して自分で買うことになろう。事のついでと言ってはナンだが、159の健康診断もしてもらおう。昨年の購入時に関東の某ディーラーで全体的な検査はしてもらってはいるものの、筆者は油圧アシストパワーステアリング系統やトランスミッションなどのオイル漏れや経路のホース類の劣化が怖くて仕方がない。


●総括……のようなもの●
159はアルファロメオ初心者だった2010年頃の自分が憧れることすらおこがましいと思っていたクルマの1台。これまで各要素考察で言葉を変えて何度も書いてきたとおり、アルファロメオというブランドが考える高級車像が、運転を重ねればすっと自然に腹落ちするようにできている。加速・旋回・制動がそれぞれに濃厚な感触で、それに相応しい運転をせよと運転手に語りかけてくる。筆者はこの「クルマからの語りかけ」を良いクルマとして評価する時の最低条件だと考える。そして159はその条件を満たした上で、その乗り味に呼応する運転手に確固たる159ならではの世界を見せてくれる。誰が何と言おうとこういうクルマは名車である。もちろん3.2Lだから、トルコンATだからなどなど、そういう印象を持たれる要素は多い。これが2.2Lで6MTならどうなのかということにも興味は尽きないが、今はもっともっと当家の個体を味わうことが先だ。出来得るなら足周りは言うに及ばず、エンジンルーム内のあれこれもリフレッシュして5万km分は若返らせたいところだが、まずは健康診断をマメに受けることを心がけたい。

主力戦闘機NDロードスターには馬にちなんで「曉号」の愛称を与えた筆者。だからと言って159への愛称が不可欠かというとそんなこともないのだが、このブログで単に「159」と書くのも味気ない。購入当初は外見の印象から女性キャラと思っていたが、実際に運転距離を重ねていくと前段で書いたような濃厚な挙動はむしろ男性性を強く感じるところ。趣味車の究極みたいなクルマではあるが、当スタジオでは高齢者の送迎車という地味かつ実用的な立ち回りを負担してもらうことになる。そのキャラクターは女性ならメイドさんだが、男性、それも年配男性を彷彿させ、となるとそれは執事である。よって当スタジオのアルファロメオ 159 3.2 Q4 Q-Tronic Tiは、今後「バトラー君」と書かれることになるだろう。どうか末長く健康でいてほしい。このシリーズはこの項で終わる。冗長なテキストにお付き合いいただきありがとうございました。

よろしく頼むぜ!バトラー君!

「アルファロメオ 159を考えるシリーズ」
その1 運転環境
その2 加速
その3 旋回
その4 制動
その5 その他(本稿)

6件のコメント

  • 逆に送迎のようなシチュエーションでこそ、その車のサスやボディの実力が如実に出ると思います。自分のしょーもない車歴で、車酔いしやすい友達が殆ど酔ったことないので、走りに拘った車は同乗者も一体感があるのだと思います。これはドライバーオリエンテッドな車の隠れた美点の一つだと思います。実名は出せませんが、自分が運転して友達が酔いまくった車もありました。決してだめな車だとは思わないのですが、何か欠けているものがあるのでしょう。そういう意味では159は間違いない車で、まさにバトラーと呼ぶに相応しいですね。

    • あの「いつの間にやら60km/h」みたいな加速だけでも、同乗高齢者に充分優しいと思うのです。これで純正どおりの19インチに格上げして、足周りもリフレッシュすればさぞや……と思うのですが、Tiならではの(と思っている)ロールの少ない旋回マナーもより良く左様していると思います。さらにあの靴底ぶ厚い感。もうちょっと送迎体験を重ねないと見えてこない要素もあるとは思いますが、先日「あぁ、やっぱり送迎用にコイツを買って良かった」と思うシチュエーションがありまして。病院だの高齢者用住居施設だのの往き来に、同じ道を何度も走るケースがどうしても発生するんです。さすがにこればかりは多少の工夫はすれども避け難い事態。だ・け・ど!同じ道を走っても159は楽しいんです。まだ身体に馴染みきっていないせいもあると思いますが、次はこうやって走ってみようとか、このカーブはこのラインが正解だったのか!みたいに発見があるし、そんな風にネタを探しながら走らなくても、漫然と走っていても乗り味が濃い。これは素敵なことですなぁ。そんな印象も執事然としていて、特にロードスターと比較するとより輝きます。来週末に健康診断を受けます。まずはプラグ交換じゃなぁ。

  • 前の記事へのコメントで私の旧愛車のMitoが廃車予定だとお伝えしましたが、不思議なことが起こった結果、Tipoのフォトグラファー・奥村氏の手に渡ることになりました、というか2/7に引き渡しが完了したそうです。
    奥村氏の足車になるそうなので、東京・埼玉でエンカウントされる方がいらっしゃるかも?
    後付けしたエンブレムがそのまま残されるとすれば、リアの右側の『Q2』が判別ポイント。

    • 奥村さんって以前オートカージャパンでも仕事されてませんでしたか?バックナンバーが今すぐ確認できないのですが、確かお名前を見たはず。でもいいですねー、誰かが引き継いでくれるの。

  • ちょっと不思議なことすぎて、現実味がないというのが正直なところです。
    とはいえ最後を看取ってくれそうな方の手に渡ることができたのは、あのMitoにとっても冥利に尽きるんじゃないかなと思っています。
    ちなみにMitoの注意書きの原本?も持って帰られたそうです。

    • わはははは!いや、注意書き?真の取説?はとてつもなく有益ですよ。奥村さん経由でどんどん広がっていくといいですね。まだまだMiToを中古で買う人はいると思うので。

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