勇み足・飯舘村様子伺
福島県は飯舘村にひとりツーリングに出かけた。先日は宮城県北の気仙沼。居座る寒波の先も見えないこの日、北に向かう気になれなかった。2024-2025冬シーズンはどうも体調が安定せず、それに引っ張られる感じでメンタルも盛り上がらない日が続いた。守りの日々ばかりでは自分自身が盛り上がらない。こんなことではイカン!と思っていた矢先の晴天。脳内アドレナリン欲しさに出かけてみた。相棒は曉号ことNDロードスターである。
「無理のない範囲」とはすなわち高速道路の積極的利用である。10年前なら朝8時頃出発して、全行程三ケタ国道だけで向かっただろう。しかしそれでは疲労してしまって飯舘村に一泊ということになり兼ねない(まぁそれはそれで楽しそうだが)。元気満々というわけでもないので、ここは実利を取ることにする。出発前に結局一寝入りしてしまい(したのかYO)、出発は11時。すべての準備を整えて玄関を出たら、曉号、雪を被ってました。ずこー。まずは雪下ろしの儀から。
気を取り直してまずは仙台宮城ICからE4東北自動車道へ乗る。白石IC付近で横殴りの吹雪。そもそも飯舘村は高地の村だ。福島に入ってもこの調子なら無理せず伊達市あたりで引き返そうと思っていた矢先、県境の国見PAではすっかり晴れていた。E4では他に福島県安達太良SA付近も天気急変ポイント。

さらに南下して桑折JCTでE13東北中央道に分岐。このブログでは何度も書いているが、自動車専用道路が新設されると既存の国道の交通量ががくんと減り、E13に対するR115のようにヘンタイツアラー向けのライトワインディングロードが爆誕する。そんな味わい深い旧道をそのまま太平洋沿いの相馬まで走るのも一興だが、今回は峠道、霊山ICで降りてR115をしばし東進。すぐにR349との交差点が現れるので、右折してR349を南下。伊達市月舘町内のローソン伊達月舘町店(福島県伊達市月舘町御代田関ノ下35-1)交差点でR399へ乗る。このR399沿いの月舘町内が実に味わい深い。

古び方の深度こそ違うが、岩手県遠野に向かう途中好んで通り抜ける人首(ひとかべ)を彷彿させる。あっちが昭和50年代ならこっちは平成5年だろうか。郷愁を覚えるという意味では同格だ。
R399を東南へ進むと、どんどん道が狭くなりやがて峠道となる。

途中R315との分岐点が現れる。地図で確認したらどちらを走っても飯舘村西端に出るのだが、この日はR399を堅持。R315は恐らく以前走ったことがある……はず……。リアル峠道のR399も路面に残雪はなく、ま、どちらを走っても楽しい。峠道を下り切ると東西に走るK12へ合流して飯舘村内へ。
どうして飯舘村なのか。直接のきっかけはあるドキュメント映像を見たこと。
「飯舘村に帰る」
東日本大震災・原発事故による避難指示で避難を余儀なくされた人々が、避難指示解除に伴い徐々に生まれ故郷飯舘村に帰り始める。その帰還村人の心情を丁寧に聞き取りをした記録映像なのだが、その作品中に収録された飯舘村の景色の美しさがとても印象的だった。その後ツーリング目的地として何度か訪問するようになる。野山の起伏が穏やかな、高原の景色や空気の美しさは格別だ。
R399で飯舘入りしたのは、「村カフェ753」さんにスムースに立ち寄るためだ。販売しているベーグルの美味さは曉スタジオが自信を持ってお奨めするもの。またCOVID-19騒動で休止してしまった店内カフェが今どうなっているのかも気になる。K12沿いの店舗前まで行くと大きく「定休日」の看板。仕方なし。また訪問する良い口実ができたと考えよう。時間はすでに13時近い。もう少し東進した先にある道の駅「いいたて村の道の駅までい館」で昼食とする。

到着してみると程よい混み具合(誰もいない道の駅というのも居づらいものだ)。食券食堂「MADEI KITCHEN」のメニューが増えていて驚いた。記憶の3倍くらいある。おかげでメニュー決めに(筆者としては)時間がかかった揚げ句、「迷ったら……」の定番、ロースカツ定食1,100円をオーダー。受付カウンターの女性に食券を渡すと「ロースカツは調理に10分くらいかかりますがいいですか?」と確認される。ということは揚げ置き温めじゃないということ。むしろ嬉しい。

道の駅の食券食堂にしては無難な味だったが、油っこ過ぎて少々胃もたれ(実は翌日まで後を引くことに……)。

そもそもおいしいとんかつとは……
専門店以外のカツ、あるいはチェーン店のカツにありがちな話だが、豚肉にパン粉を固定するためのバッター液の量が多すぎるケースが多い。このバッター液層が過剰に揚げ油を吸い過ぎてしまい、食後感が非常に重いカツになってしまう。また揚げ油を頻繁に取り換えず、劣化が進んでいたりすると味わいも胃もたれもさらに悪化する。バッター液は揚げ技術のない人(アルバイトや揚物の勘所がわかっていない調理人など)でも安定して衣を固定できるように工夫したものだろう。調理行程もひとつ減らせる利点があるし。だがうまいとんかつとそうでないとんかつの、ここが別れ道でもある。ごく少量の小麦粉をまぶした肉を良質の卵液にくぐらせてパン粉を定着させる本来の「とんかつ」は、ひたすら肉・パン粉・揚げ油のバランスだけで味わいをコントロールできる。だからこそおいしいとんかつのお店の調理人は「職人」として客から敬意を向けられるのだ。肉と衣のバランス云々はまずこのレベルをクリアして初めて成り立つ議論。調理の時間短縮と技量不足をカバーするためのバッター液べったりの揚物は議論のまな板にすら乗らないのだ。
もっとも道の駅の食券食堂の1,100円のロースカツ定食に正論を吐くような野暮はしない。むしろ揚げ置きじゃなかったことを多いに称賛したい。ごちそうさまでした。隣接する物産コーナーで切り餅のお土産を購入。あと自分用にアイスキャンディーも。飯舘村産の品物は物産コーナーの中でも希少で、ラベルを丹念に見て選んだ。

帰宅後焼いて食べたら滅法うまかった。
髙橋トク子さんの素晴らしいお仕事。
もっと買ってくるべきだった……
E4・E13併用のおかげで90分強で飯舘村入りが叶う。当然疲労感も少ない。までい館を後にして目の前のK12をそのままひたすら東進。K12のこの区間を走るのは初めてだが、ずぅっとゆるい下り。往路の峠道を思い出し、改めて飯舘が高地を拓いてできた村だということを思い知る。恙なく進みE6常磐道・南相馬ICへ。E6のここから北の区間は終始対面通行で非常に退屈なのだが、体力温存のためやむを得ない。幸いこの日は交通量も少なくマイペースで走ることができた。むしろ問題はE6をどこで降りるか。E6、そして宮城県内で接続するE45三陸沿岸自動車道は海沿いを走るので、仙台市の山際に住む筆者には亘理ICや鳥の海IC以北は使い勝手が悪い。この日は思いの他体調も良いので福島と宮城の県境、新地ICで早めに降りてみることにした。
新地ICで降りるとそこはR113。おお!太平洋・相馬から日本海・新潟までを結ぶR113!新地からひたすらに西に走れば日本海まで行けるなんてロマンでしかない。早速西進する。

R115同様にこちらも交通量は少なめ。スムースに宮城県丸森町内で冬季ツーリングの筆頭コースK28に乗り換え、今度は北上する。天気は上々、雲を被った蔵王連峰がくっきり見える。


K28は南下しても北上しても気持ち良い道路だ。ただしいい気になって進むとR6・R4という混み合う国道にぶつかってしまう。適当なところで阿武隈川を渡ったら、柴田町槻木でK52に乗ることができた。こいつも田園風景が美しい一直線の県道だ。ひらめきでコース変更したが大正解。やがて村田町内に至り、お馴染K31で仙台市内へ。融雪剤を浴びまくった曉号を洗車してから帰宅。

7時間半/230km。帰宅してみれば少々疲れてもいたが、大満足のひとりツーリングとなった。今回、飯舘村では昼メシを食べて帰ってきただけになってしまったので、春になったら改めて訪問したい。真野ダム周辺のワインディングロードも次回の宿題としたい。