2025年4月19日・宮城県亘理郡山元町
宮城と福島の県境、山元町へひとりツーリングに出かけた。これは毎年行っている東日本大震災を忘れないためのもの。仙台ですら桜の花が散った今ごろになってなぜ……とお思いの読者もおられよう。いつもはずばり3.11を避けて下旬のどこかで海沿いへ出かけていたが、今年は3月22、23日にミュージシャンとして出演する公演があり、そこに向けて余計な体力を使わないよう自重。そしたら24日朝に使った機材をバトラー君のトランクから降ろしている時に人生初のぎっくり腰。様々な情報に当たっても1-2週間で徐々に治ると書いているが、筆者の場合は3週間以上かかってようやく日常生活が普通に戻ったかな……という感じ。実はこの日も3時間以上クルマを運転して腰に悪影響が出ないだろうか、おっかなびっくりではあった。
なぜに県南・山元町なのかというと、昨年は女川だったから。あれ?その前は雄勝(これも北)に行ったような……。実は2021年にこのシリーズでやはり山元町を訪れた際、大して進んでいないように見える復興作業の進捗に、「復興作業を人任せにしてきた自分のせいでもある」と気が付いて、猛烈に落ち込んだものだ。宮城県南の海沿いを直視するのはちょっと怖いという思いが筆者の中にあれ以来ある。だが目を背けてばかりもいられない。
往路は名取市内を南下し、仙台空港の南から海沿いのK125を走ることにした。このコースを復路に選ぶと、結局名取や仙台の市街地を横断することになり、走ってもまるで楽しくないからだ。4月19日は土曜日だったのだが、どういうわけか市街地は交通量が目に見えて多く、ペースが悪くて辟易した。調子が出てきたのは岩沼市の「千年希望の丘」という津波被害からの復興のシンボルのような公園以降だった。

K125は筆者にとって非常に思い出深い道路。運転免許取得後、自分の運転に徐々に自信がついてきて(錯覚だけどさ)、友達と意味もなく夜に走りに行くようになる。え?なりますよね?で、その頃頻繁に走った道というのがいくつもあるのだが、このK125もそのひとつ。海岸線から数十メートルしか離れておらず、津波で甚大な被害を受け消滅した……と思っていた。2011年5月のある夜、この道路がどうなったのか様子を見に来た時は変わり果てた様子に衝撃を受けたものだ。その時のことは初代ブログの記事にしてあるが、当該部分を抜き書きしてみよう。
仙台空港には行かず、そのまま海沿いの一本道に行ってみた。免許取りたての頃から幾度となく走った道である。だがこの辺に来るとかつての景色を思い出すのも難しいほど様相が変わっている。もちろん真っ暗なのもあるが、傾いて骨組みだけになった家々が点在し、あとは砂と瓦礫と正体のわからないものが堆積しているばかり。夜活の一服ポイントにしていた自動販売機の群れも場所すらすぐにはわからない程だ。海沿いにひっそりあったラブホテルは跡形も無い。そこから少し走った先にある老人介護施設は構造物こそあるが、戦争後の廃虚のようだ。ラブホテルにしても介護施設にしても、従業員・利用者、全員が無事に避難できたのだろうか。311以降、随分時間が経ってからもまだ海沿いには回収しきれない遺体があちこちにあったという。車高を落としたMiToが走れるくらいだから、ある程度道路清掃もされたはずで(事実路肩の左右には砂浜と同質の砂が1mくらいの土手状に延々と続いている)、もはや遺体が放置されているなんてことも無いだろうが、ごうごうと風と波の音が響く真っ暗な一本道にクルマを停めて、廃虚となった施設を眺めるのは恐ろしいものがある。
クルマで行きます「2011.05.03 仙台港、仙台空港付近を見に行く」より
この夜のことは今も鮮明に覚えている。真の暗闇の中で震災廃虚とズタズタの道路を、クルマから降りてひとりで見る。いやもう本当に怖かった。だが先日みいさん、木枯らし紋次郎さんに誘われた朝練で、実は無事だったことを知り喜びもひとしおだった。千年希望の丘が整備されたおかげで震災以前と同じポイントから走ることができるようになっている。嬉々として走り出すと直線や時々現れるコーナーの角度や順番まで思い出せる気がする。南下する道路の西側にあった人工建造物は一切これ無く、時折新規に建造されたらしい建物がぽつりぽつりと見えるくらい。前走車・後続車は皆無。時々対向車、ライダーがいる程度。そろそろ阿武隈川を渡るために、一本西に入ったK10に合流せんとする直前に進入できそうな広場があったので、曉号を停めて海を見てみることにした。

再び走り出す。K10に乗り換えて阿武隈川を渡ると、そこはもう亘理郡亘理町である。町内を抜けK38に乗りひたすら南下する。ストロベリーラインと名付けられたK38は、震災後の復興工事で超快適な対面2車線道路に変身した。盛土の上に整備されたのでほとんど自動車専用道路。信号はほとんどなく、ほぼ直線なのでこの区間だけは並走するE6常磐道をわざわざ走らなくても良いと思える。亘理町や山元町にはいちご農園が多く、今の季節「いちご狩り」で賑わう。いちどだけ家族で来たことがあるが、たかが莓と侮るなかれ、20分くらいで満腹になってしまう。それでいてコンデンスミルクの消費量は普段の3倍くらい軽くいく。あのイベントはやばい。
なんてことばかり考えていたわけではない。周囲の景色を見ると明らかに人の生活があり、ようやくリセットされたように見える。復興とは元通りに戻すことではなく、震災後に暮らす人たちが暮らしやすいようにリデザインすることなのだ。自動車で通り過ぎる分にはそれが感じられて、2021年に訪れた時とは異なり、少し心が軽くなった。
いつの間にか目的地に。目的地というか、福島県には入らずに戻ってこようと考え、GoogleMapで県境付近を眺めていたら目に付いたのが「磯浜漁港」。あと数百メートルで福島県境という位置にある。到着してみれば本当に普通の漁港のようで、土曜日だからか漁に出ている船もないらしく、閑散としていた。


もっとも稼働中のガチ漁港はいくらクルマを停めるスペースがあったとしても、仕事の邪魔になるようで部外者が気軽に立ち寄って良い場所とも思えない。いろいろラッキーだった。漁港のあちこちを歩き海辺にも行ってみたが、静かな上に波も穏やか。この日はどういうわけか夏日で、文字通り初夏の陽気だったのも幸いだった。

宮城県南、海沿いの穏やかな景色を見られて良かった。昼時を過ぎている。意中の店に移動して昼メシとする。こちらもやはりGoogleMapで当たりを付けておいた焼き肉屋「大東山(宮城県亘理郡山元町坂元堤入8-13」さん。当たりを付けるも何も、福島県へ越境することなく宮城県内で食事をしようと思うと、磯浜周辺には飲食店がほとんどないのだ。


蒸気機関車の釜に石炭をくべるがごとく、焼けた肉を自分のペースで口に放り込めるのがひとり焼肉の素晴らしさ。カルビランチにロース一人前を追加して1,640円。堪能した。
さてここからは復路。筆者のひとりツーリングには珍しく、今回はこの復路も大いに楽しめた。
宮城県南内陸部を目指し、K44に乗り角田市方面へ。このK44が思いの他楽しい道だった。R6付近から田園地帯を西進し、E6常磐道をアンダークロスすると一気に山中のワインディングロードに。道中の景色からずっと以前に走ったことがあることに気付いたが、それでも新鮮だ。

途中K245に乗り換え尚も進むと、お馴染K28にぶつかる。こうなればもう勝手知ったる県南路である。一気に帰路後半も脳内構築。K28からK14へ乗り換え、K116で北上しつつR4、K52を跨ぎK25に乗ったら西へ進む。するとすぐスポーツランドSUGOなのだ。このコースがまた交通量激少のライトワインディング。たまりませんな。E4東北自動車道菅生PA脇を走り抜け、K31で仙台市内へ戻ってくる。約5時間/145km。思った以上に身体には堪えたらしく、翌日午後くらいまでぐったりしてしまったが行く価値のあるツーリングになった。県南海沿いも、もう少しちょくちょく出かけてみよう。
あのプチツーから1年・・・早いですね。
腰はある程度落ち着いたっぽいですね、良かったです。
またお誘いしますね。
県道44で角田へは、私もよく通ります。ほどよく楽しい道ですよね(^^
なんとなく、ねずみ捕りがいそうな気がして、なかなか踏めませんけど(汗)
そのへんなら、県道103も刺激的で面白いです。一度アバルトで通りました。
一人焼肉、渋いですね!
そして、いつのまにかもう5月になりますが、
恒例の蔵王ミーティングは今年は開催されるのですか?
K125のあの時の感激は忘れられません……!え?ホントにこっち行くの?通れるの??……なんとー!!走れるじゃないかーーー!!という、自分にとっては映画を見ているような感覚すらありましたもの。今回はそこまでの感激はありませんでしたが、もう完全に復活している様子を実感できて嬉しかったです。
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K103も走ったことあると思うんですが、今度確認してみます。あの辺は平地と山地をどっちも味わえるのでお得ですよね(笑)。5月のアレは昨年のレポート記事の予告どおりですが、近々に告知エントリーも上げます。予定通りでっせ。
こんにちは。今回のルートはK44以外は自分も分かります。菅生からのコースなんて毎日通っていましたからね。いつもは自分より遅い車しかいなかったのに、ある日マツダのCX-3に引き離されたのが、悔しかったのを今でも覚えています。
K44は走っていなかったので、今度走ってみます。家族の実家が山元町浜吉田なのでしょっちゅう行きますから場所は分かります。海岸から西に向かって走るとあまり高くない山が連なっていて、緑の濃いクネクネ道が楽しい県道が肋骨のようにそろっていますね。意外と穴場かも。
土日は赤城山と榛名山を走ってきました。今回は家族をあしかがフラワーパークに降ろして機嫌を取って(藤が満開)から向かいました。43と比べると、山道はロードスターの方が断然楽しいです。高速道は苦手だと分かりました。ロードスターに高速道でぶち抜かれることがないし、山道では沢山楽しそうに走っているのに会うなあと思っていましたが理由が分かりました。主戦場が違うという事ですね。19日に納車されて昨日で1200キロになったので点検に行きます。連休明けですが。
連休後半は男鹿半島に行ってきます。
ところで西蔵王は159でいらっしゃいますよね。紋次郎さんと3台並べたかったなあ。
K44、角田までの短い区間ですがNDで走ると本当に楽しいのでお奨めです。いやぁ、kikuchi大先輩にこんなレスを付ける日がくるとは……!そうなんです。高速巡航はあまり得意じゃない……というか、楽しくないんです。逆に赤城山、榛名山なんかはめっちゃ楽しい。主戦場が違う、まったくおっしゃる通りです。
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はい、5月24日は159で向かう予定です。ND3台ミーティングやりたいです。が!しかし!リア周り消耗品をリフレッシュした曉号受取のまさにその日、再びぎっくり腰をやってしまいまして引き取ってきた足でしかまだ運転できていないのです。復活したら3台ミーティングやりましょう!
3台ミーティング良いですね〜
宮城の道に疎い私。
楽しいコース設定よろしくお願い致します。
kikuchi大先輩が渋い道をたくさんご存知なので、お知恵に期待!
もうオープンオーナーではありませんが(あ、ガラスルーフはあるか!)
3台ミーティング、もし行くときはお誘いください!
画像には入りませんのでw
カメラマンくらいはします!
HAHAHAHAHA!そんな、恐縮です。オレのぎっくり腰が落ち着くまで今しばしお待ちください。情けない……