感激!岩沼シーサイドロード

友人のみいさんに誘われて、午前中、早春の太平洋沿岸の道を走ってきた。木枯らし紋次郎さんもご一緒である。

photo by みいさん

みいさんからはもう何度もお誘いを受けていたのに、都度体調や都合が悪くてお断りを続けてきた。それでも声をかけ続けてくださってありがたい限り。それにR4よりも東の、今回の走行舞台となったエリアに筆者は滅多に近寄らない。なぜならR4の西側山間の地に住む筆者は、海沿いの空気を堪能するためには必然的に混み合う仙台市街地を抜けて行かねばならず、それが非常に億劫なのだ。仙台市街地の東側にお住まいのみいさんは、同じ理由で山側に滅多に行かなくなったそうだが……。ともあれこういうお誘いのおかげで休日の午前中に仙台・岩沼・七ケ浜の海沿いの道を久しぶりに走ることができたのである。

朝9時、仙台市若林区にある旧荒浜小学校向かいの駐車場に集合。この周辺は2011年の東日本大震災による津波の被害がもっとも大きかったエリアのひとつで、町がいくつも消えたし亡くなった方も200人以上いる。現在は居住禁止区域に指定されてしまったため民家はなく、津波被害を伝える広大な広場になっている。何も知らずにその地に立てば広々とした気持ち良い場所だが、発災当時テレビで繰り返し放送された津波が町を襲うシーンの、まさにその場所であることを知っていると思いは複雑である。だが過去も現在も知っておくことに意味がある。そう思ってこの光景を受け入れるしかない。そして久しぶりに木枯らし紋次郎さん、みいさんに会うと、楽しい時間になることもまた確かなのだ。

木枯らし紋次郎さんのNDロードスター 990Sはお馴染として、みいさんはこの日BMW Z4M40iで登場。筆者は初対面である。直6ガソリンエンジン、3リッター、最高出力387ps/5,800rpm、最大トルク500Nm。なんちゅうか、すげえなの一言なのだが、佇まいはどちらかと言うと紳士然としていてどう猛な雰囲気はなく、そういう数値を連想しにくい。オープンモデルだからかなぁ。おしゃべりもそこそこに全車オープンにして走り出す。この日のコースは完全にみいさんにおまかせ、みいさん、筆者、紋次郎さんの順でまずはK10を南下。目指すは亘理郡鳥の海方面である。

このK10も津波で完全にズタズタに破壊されたので、自治体をまたいでかなり長大な区間が数メートルかさ上げされ、防潮堤を兼ねた道路に作り替えられた。造りが良いのはありがたいが、おかげで流通や工事車両が以前よりも増えた印象。筆者は以前まんまと大渋滞にはまった過去がある。休日の午前中にみいさんが指定してきたのはその混雑を避けるためで、この日は狙いどおりペース良く走ることができた。こうなるとめちゃくちゃ気持ち良い道路である。

名取市に入りK10を避け仙台空港を迂回しつつ岩沼市に入る。さらに南下するにあたり以前は文字どおりもっと海側に県道(おそらく125号線)があって、波打ち際の砂浜のすぐ脇を走るという、山下達郎や角松敏生のPVに登場するようなシーサイドロード(笑)を堪能できたのだが、当然津波でめちゃくちゃになった。筆者は2011年5月にこの周辺の様子を見にきたことがある。「仙台港、仙台空港付近を見に行く」というエントリーで詳細を書いた。あれは恐ろしい光景だった。その後は、その周辺を走れば当時の変わり果てた様子がフラッシュバックするし、完全再現の再整備などあるまいと勝手に思い込んですっかり御無沙汰していた。ところがみいさん、どんどんその海沿いへ角を曲がって行くではないか。え?マジ?走れるの?と半信半疑で着いて行くと、突然あの懐かしい県道に乗っていた。驚いたことに道沿いの縁石など当時のままである。これには心底驚いたと同時に感動した。なんと懐かしい……。13年ぶりである。西側に点在した人工建造物はすっかり無くなっていたし、真夜中によく訪れた温水プールは跡地の形跡すらないが、確かにあの県道である。素晴らしい。また今度ひとりで来てみよう。

K10に再び乗り、雄大な阿武隈川を渡って鳥の海を左に見つつさらに南下。セブンイレブン亘理荒浜店でコーヒーブレイク。

亘理を出発し、ほぼ同じ道を北上して次は七ケ浜町を目指す。実はこのフェイズ、筆者睡魔とたこ殴りの格闘を繰り広げていた。睡眠障害というヤツだろうか、とにかく夜眠れずお日様が昇ってくると眠くなる日々。まるでドラキュラだ。実際ツーリングの前夜もほぼ一睡もできない状態ではあった。一方で交感神経が活発化する案件があると日中でも案外普通に目が覚めているのも体感として事実だったものだから、楽観して参加したのだが……。実際は眠気だけではなく左足が攣りそうな気配すら現れる始末。踏んだり蹴ったり、M40iのケツなど掘っては人生の一大事とばかりにがんばっていたところだったので、みいさんが仙台港付近で「日和山」観察のために蒲生干潟の日和山駐車場に立ち寄ってくれたのは本当に助かった。

中央の、ちょこんと石積みされているところが日和山頂上。
全高3mだったかな?
蒲生干潟(がもうひがた)。
津波で壊された生態系は数年で元に戻ったという。
強い

防潮堤に上がったりなんてことのない会話を交わすことで眠気も攣る気配もうまくリセット。危なかった。引き続き七ヶ浜うみの駅七のやを目指す。

このブログではお馴染、SHICHI NO RESORTがこの日のゴール。七のやの駐車場に3台並べて停めてしばしおしゃべり。実はみいさん、プライベートのある困難によって精神的に追いつめられ、オープンエアモータリングがもたらす極上の解放感にずいぶん救われたという。幌を開けた瞬間の、心の憂さが空に蒸発していくような爽快感は、屋根開きグルマに乗った人間なら多かれ少なかれ実感することだが、みいさんのお話はことさらに実感が込められていて、筆者は「クルマが人を救うこともあるのだ」と改めて実感することになった。とにかく何もかもが良い方向に流れて行くことを今は祈るばかり。

昼頃に解散。筆者は利府・塩竈から仙台市泉区へ抜け帰ってきた。休日の正午前後にR4を素早く横断するには、高い経験値と英知が必要なのだが、この日R4横断はそこそこうまく行ったものの、その先の泉中央付近で渋滞に遭遇する失敗を演じてしまった。だがこれも抜け道センサーを駆使して被害を最小限に抑えることができた。もしも本気で筆者基準の快適さで今回のコースを堪能するなら、荒浜出発は夜明け前の設定でないと難しいだろう。もしくは七ケ浜からの帰路は大きく北へ迂回し、利府・大郷・大和町経由とするか。それはそれで楽しそうじゃないか!みいさんからは次回はここ七のやで朝食をというプランが提案された。おいおいうまそうじゃねーか!5時間/135km。短時間・短距離・少人数のツーリングだったが、今の筆者の体調にはこれくらいのヴォリュームがむしろありがたいのかもしれない。紋次郎さんありがとうございます。みいさん、お誘いいただきありがとうございました。

photo by みいさん
目線加工のみ筆者

※今さらだけど、みいさんがご自身のブログに詳細を書いてます。
みいさんの今日このごろ送信所「朝ツー行ってきました

6件のコメント

  • おおお、羨ましい!いいですね〜。
    あの津波の悲劇が風化するなんてことはないと思っていますが、それでもやっぱり繰り返し訪れることで鎮魂の祈りを捧げることは大事だと思っています。
    いいなぁ、次回はぜひご一緒したい。しかし参加するには距離が〜。
    ともあれ、みいさんもご自身のブログで書いていらっしゃったけど、このラインナップだとM40iが大きく見える。うちの124
    が混ざったらどんなふうに見えるのかなぁ。

    • 現地を訪れることが最上なのはもちろんなのですが、思い出し続けることにも意味があると思います。能登にしても熊本にしても。ご希望があれば被害が著しかった場所を結ぶツーリングもやってみたいですね。
      __
      M40iは、めっちゃでかかったですよ(笑)。威風堂々。本文に書く余裕がなかったけど、排気音がまたエグい(笑)。ロードスターなんか「小舟」ですね、あれと並ぶと。高速道路を走るのはすごく楽だろうなぁと思いました。あれで実際にE4でも走ってみたい。

  • こんにちは。みいさんのZ4は当然ですがロードスターより一回り大きいですね。いかにも速そう。この3台の絵面が格好良すぎです。
    私は何度も仙台ー亘理間を走っていますが、やはり必ず先導車がいて、残念な思いで走ることばかりです。でもオープンにすると気持ちいいのは確かです。今度は用事のついでではなくて、ツーリングを目的に走ってみますか。次回は七ヶ浜とか、これまた美味しくて楽しいツーリングになりそうですね。

    • あの辺(宮城野区仙台港あたりから岩沼市仙台空港、亘理町)の海沿いを走るなら、とにかく早朝か深夜ですね。さもなければペースを上げることはあきらめるか。海沿いを走るんだから深夜はあまりおすすめしないなぁ。暗い太平洋を見ると仙台人はいろいろ考えちゃうと思います。一転して朝走るのは思った以上に気持ち良かったです。亘理町か山元町においしいお店を知っていれば、わざわざ七ケ浜に戻らなくても良いと思います。七ケ浜はまた別のコース組みをする価値がありますね。トーマスさんにお知恵を拝借したい。

  • 遅ればせながら、朝早くお誘いしてしまい、ほんと申し訳ないです。ありがとうございました。 おかげさまで楽しいツーリングでした!
    今はもう、津波被害にあった沿岸部も、だいぶ復興しまして、でも、だからといって、傷は癒えてないはずで、一番いいのは、沿岸部で頑張っている方々の商品を購入したり食べたり飲んだりして、うちらが楽しめば、自然と、その方達も潤うという、Win Winな関係が一番良いのかなと思っております!

    次回は、七のやで朝飯食べようツーリングもいいですが、acatsukiさん絶賛のハンバーガーを食いに行こうツーリングも捨てがたいです。
    なんか、そういう、ユルいので、いいのです、もう、私(笑)
    歳とったからかもしれませんが、でも、結局究極は、この辺にたどり着くのかなと。色々経験で車の色々を知ってしまったから。
    若い方々は、どんどんコアなところに突っ込んでも全然いいと思います!
    でも私くらいの年齢になると、もう、究極、FAN TO DRIVEと、付随するプラスアルファ、楽しければいいかなと(^^
    もし、acatsuki主催のツーリングがあれば、是非、最後尾でお願いしますw

    で、最後に一言。
    最終的に、終の車は、8Cがいいなあ(希望)
    頑張りますw

    • ちょうど良いタイミングでコメントをいただきました!ドラレコ映像ですがちょちょっと編集して、このシーサイドロードを中心にムービーを公開すべく編集作業が終わったところです。明日には公開できているはず。このタイミングで追体験もオツなものかもしれません(笑)。
      __
      複数台で走るのは楽しいのですが、台数が増えるとどうしたってペースメーカーが苦労することになりますよね。その辺痛し痒しで、私ももう自分で旗を振って何台も集まるのは「走らないオフ」だけしようかなと思っております。決めたわけではありませんが。今回みたいなゆるいツーリングを久しぶりに味わうと、走るオフもいいよねと思ってしまうので(笑)。津波被害が酷かった土地にお金を落とす作戦は個人的に(些少ながらも)続けております。ただオレ、海鮮系にあまり興味がないってのがどうにもこうにも……。
      __
      >>最終的に、終の車は、8Cがいいなあ(希望)
      こないだベンツがいい!って言ってたじゃん!

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