わたしの知らない世界

プン太郎のローン支払いが2022年1月で終了する。購入から4年、あっと言う間だった。購入時はローンを支払い終わる頃には10万kmを超過していると思っていたが、未だ9万6千km。プン太郎は息災だが、筆者の体調が走行距離を抑えてしまったなぁ。

多聞山

買い替え(あるいは増車)を検討し始めるタイミングは、クルマ好きでも人それぞれだろう。筆者の場合は「ローン完済」が一里塚である。なんと言うか、こう、足かせから解き放たれたような思いがある(笑)。プン太郎を手放すつもりは毛頭ないが、可能性は無限大に広がっている!と、浮き足立ってしまう。←アホ すぐに行動に移すかどうかはともかく、プン太郎に続いて購入するのはアメリカンモダンマッスルカーであると、このブログに何度も書いてきた。その理由はこの12年間に乗り続けたアルファロメオ MiTo、アバルト プントエヴォというダウンサイジングターボ車「小排気量、ターボ過給、FFレイアウト」の逆張り、つまり「大排気量、自然吸気、FRレイアウト」のクルマに乗りたいからで、これもやはりくり返し書いてきた。だがよくよく考えてみると、メカニズム以外にもひとつ心理的にアメ車に魅かれる小さくない理由があることに気が付いた。

えへへ、かっちょいー!

「大排気量、自然吸気、FRレイアウト」という条件だけでピックアップしていくと、実はアメリカメーカー以外にも合致するモデルはある。アストンマーティンの一部モデルはまさにそれ。007シリーズ好きの筆者にとって、アストンは垂涎の的ではあるのだが、今回は選外である。どうにも引っかかる「小さくない理由」がここにこそある。

それを簡単に説明するなら、「欧州車だから」だ。

実は今筆者の中では欧州車の魅力が色褪せつつある。00年代以降のダウンサイジングターボ大合唱からの手の平返し、ディーゼルゲート事件などを見聞きするにつけ、不信は大きくなる一方である。2002年に購入したプジョー 307SW以来、輸入車を乗り継いでいるのは、それらのクルマとそれを作るメーカー(ブランド)には、独自の風土・文化があり、それを土台に製品が作られていると信じているからだ。輸入車に乗る醍醐味は、日本に居ながら異文化を味わうことだと信じている。307SW以前はあまり深い考えもなしに国産車を乗り換えてきた筆者だからこそ、その体験は「自動車を運転する」という行為以上に、今も鮮烈な体験となり得ている。

ところが20年代の今、自動車という工業製品は、もはや欧州全体の経済カードの1枚でしかない。北米と中国市場頼みに収束してしまった歪な市場の覇権争いがゆえに、各メーカーはなりふり構わぬ合併吸収を続ける。だから「個性溢れるモデル」が登場する余地はほとんどない。伝統・歴史などの印象論で差別化を図っているが、裏返せばそれは、資本もプラットフォームも同じなのに、ブランドバッヂを付け替える意味を付加するためにしか見えない。このエントリーが極端な論調であることは承知している。例えばゴルフとA3は実際にVWらしい、アウディらしい製品になっているのだろう。だが同じプラットフォームの要素メカニズム調律を変えたとしても、同じパーツの使いまわしであり、製造原価圧縮の方針はどうしても透けて見える。奇想天外な設計と贅沢な製造を貫いてメーカーが消滅してしまっては元も子もないし、そういうことを望んでいるわけではないが、「ウチのが一番速ぇんだ!」「ウチがやりゃあこんなもんだぜ」的な作り手の情念と意地から生まれる個性や差異と比べれば、ゴルフとA3は同じクルマ(もしくは同一モデルのバリエーション)だと思わざるを得ない。

もちろん日々このように厭世的にクルマを眺めているわけではない。しかし、大排気量で自然吸気、アストンじゃだめなの?と訊かれた時に、のどに小骨が刺さるがごとく大肯定もできない。欧州車ブランドって、今どこもあんな感じだからなぁと思ってしまう。ところがアメ車とアメリカ自動車文化は違う。なにしろいまだにフォード F-150(ピックアップトラック)が売り上げナンバー1である。確かにポルシェもフェラーリもレンジローバーもイケてるが、それはそれらがオルタナティブとしてちゃんと存在感があるからであり、オルタナティブが光るということは保守本流がしっかりあるからと考えられる。北米ではクルマがないと生活が成り立たない圏域がほとんどで、そこに確たる市場要求があり、北米メーカー(ブランド)は、まずそれを満たすことを優先する。そこにアメリカならではの自動車文化が生まれる。「文化」が口幅ったいなら「自動車世界」でもいい。ガラパゴス化に近い。しかしだからこそ、日本人から見た時に、異文化の工業製品として魅力も生まれる。その魅力に触れる面白さに目覚めてしまった筆者は、「オレたちはこれじゃないとダメなんだ」というロジックから生まれた製品にこれからも乗ってみたいのだ。

うっかりするとフォード マスタングの一部モデルが搭載するエコブーストエンジンはマツダ由来だったり、ステランティス傘下のダッジは「これからはeマッスルカーです!」と言いだしたりして油断も隙もないが、風土に根付いた国民の思想や嗜好が10年20年で変わるとも思えない(つまり欧州メーカーの変わり様は、国の存亡に関わるレベルの一大事だったのだろう)。20年近く欧州車に乗ってきたヘンタイが「まだこんな世界があったのか!」と瞠目するには、もはやアメ車やロシア車(や旧東欧車)に乗るしかないと思う。

AUTOCAR JAPAN 2021.07.12
【尖っていくブランド】ダッジ電動化戦略発表会で「EV売らない」 マッスルカ―本家はどこ向かう?

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4件のコメント

  • もしかするとミトやプントはギリギリ良い時代に生まれて、我々も辛うじてイタリアの異国文化や異国情緒に触れることができたのかもしれません。意地悪な意見だと4Cだって「エリーゼでもアルピーヌでも良くね?」となりますから。部品のグローバル化もイタリア車の薄味化(含む堅牢化?)に繋がったのかもしれませんw。しかしロシア車!?ただ、未だにドイツでも旧ロシア車のクラブみたいなのはあるのをテレビで見たことあります。ノスタルジーも含めて趣味の色合いが濃いのでしょうが、西側陣営の人間には異国情緒感は半端でなさそうです。

    • 実際見る人によって「いつからわざとらしいブランド味付け」が始まったのかは、意見が別れるところではあると思います。フィアットからプラットフォームを押し付けられた155からって言う人もいるでしょう。オレみたいな超初心者にはわかりやすくて良かったですけどね、MiTo。FFのメリットデメリットもわからなかったわけですし。ま、今もちゃんとわかってのか微妙ですけど。8Cと4Cはどう解釈すれば良いのか、識者に訊いてみたいです。アルピーヌはRRで出してきたら「ルノーやるじゃん!」ってなったかもしれません(ゴーンがいたから無理だったでしょう)。
       
      ま、でもグローバル化の恩恵として、じゅんすかさんのおっしゃるとおり「国際水準品質」になった側面はあると思います。超初心者でも安心!とか思っていたら、レネゲードではなぞのエンスト事例がそこそこの確率であるらしいので、スピリットは健在かもしれません。ラーダ ニーヴァがエンストしても「ロシアじゃしょうがねえ」って思える……のかなぁ(笑)。

  • こんばんは。アメリカに行って思うのは、ピックアップトラックとは彼らにとってどのような存在なのか?です。たくさん走っているので日常使いでもあり、結構ドレスアップしているものもありです。そして大きさもあるのか、私から見ても格好いいんです。もちろんマッスルカーはラグジュアリーかつ戦闘的、と言えますが。そしてそのブランドなりアメ車なりの特徴は、実際に所有して初めてわかることなのではないでしょうか?昨日長男と初ランボでした。店で話を聞いて車を見ただけでも認識が変わりました。「速いけど乗り心地は?スパルタンなんでしょ?」みたいな偏見がなくなりました。セールスが「イタリア人は金と時間を保証すれば、超絶いいものを作る」と言っていました。アメ車のことを知るにはやはり所有!ですね。頑張ってください。

    • がんばります! イデアルさんでもダッジ、フォードを持ってこられるそうなので……。あとは先立つものだけ(笑)。

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