試乗記・代車の日産 キューブとスバル インプレッサ
家人のシトロエン C3、筆者のアバルト プントエヴォ、立て続けにこの2台を株式会社イデアルさんに入院させた。そこで代車をあてがってもらった。今回はその2台の印象記である。
C3の代車:日産 キューブ
総走行距離約64,000km
初年度登録 平成20年(2008年)
形式 DBA-Z12
原動機の形式 HR15
排気量 1.49L(ガソリン)
車両総重量1,455kg(前軸重720kg 後軸重460kg 車両重量1,180kg)
全長 389cm
全幅 169cm
全高 165cm
プン太郎の代車:スバル インプレッサ
総走行距離約110,000km
初年度登録 平成19年(2007年)
形式 DBA-GH3
原動機の形式 EL15
排気量 1.49L(ガソリン)
車両総重量1,595kg(前軸重770kg 後軸重550kg 車両重量1,320kg)
全長 441cm
全幅 174cm
全高 147cm
インプレッサは受け取りから返却まで3日間だけ、キューブに至っては交通量激少の環境下で30分程度しか運転できていないので、項目ごとに詳細な検分結果のようなものを提示できないことをご了解いただきたい。印象的だったことを書いてみたい。
運転環境
まずどちらにもペダルオフセットがあった。筆者はこれまで右ハンドル環境のハンドルやペダルのオフセットは、手抜き設計のRHD改変輸入車の専売特許だと思っていたが、どうやらそれは間違いのようだ。左側通行右ハンドルが前提の国産メーカーの小さめのクルマ(軽規格やA,Bセグメント)には、ペダルやハンドルのオフセットが「あるのが普通」のようだ。インプはそういうつもりで足下を検分すれば「あ……、ありますね」レベルだったが、キューブは酷い。A、Bペダルの左遷移だけでなく、踏面高の段差も投げやりな設定で、Bペダルを踏むのがだんだん億劫になってくる。百歩譲って踏み間違い対策の可能性はあるが、エンジンブレーキの希薄なCVTでは、減速はやはりペダル中心。やってらんねえのである。
座席回りも事情は大差ない。概ね恙なく姿勢を作ることができるインプレッサに対して、キューブはもはや運転行為を軽視している印象すらある。運転席は過剰にクッションが柔らかく、沈んで支える系ではあるが、そもそも左右のサポートが皆無に等しい。その点インプだってギュウギュウ締めつけてくるようなサポートではないが、少なくとも腰の脇部分を中心としたサポートは(微力ながら)あったし、後で触れる旋回動作との辻褄はあっていた。キューブはそもそもボディの上背が高いので、旋回中のロールが必要以上に大きく感じられる。運転手はそのロールを肩付近で感じることになるのだが、このシートと導き出される運転姿勢では、クルマからの運動情報が希薄。前席は6:4分割のベンチシート然としており、運転席側6割のシートバック中心は可倒式アームレストになっていて、そこに左腕を置いてなんとなくロールをやり過ごすことはできるが、ハンドルを片手で握る前提のそんな方法はそもそも間違っている。
両車両とも後部座席環境は未検分。ちなみにキューブ助手席は、形状こそ運転席と同等だが、剛性からクッション厚から明らかに運転席よりも劣っていた。助手席や後部座席軽視は日産に限った話ではないが、ここまであからさまなのは初体験。
走る・曲がる・止まる
どちらも1.5t前後の車重を、1.5リットル自然吸気ガソリンエンジンとCVTで動かす。心を穏やかにしてクルマの言い分を聞いてやり、エンジンとCVTが一番無理なく働けるアクセル開度を探す。そういう状況だと、加速は鈍い。青信号からスタートする際、自車の1台前のクルマが少し元気なヤツだと、あっという間に置いていかれる。どちらも「それじゃあ」と踏み増しても、目立った加速は発生しない。近所への買い物ならそれでまったく問題はないが、郊外の直線路で追い抜きを実行しようとすると、相当気合いを入れてペダルを踏み込む必要がある。キューブの場合それでも苦しいが、インプはインプで突然気が狂ったようにレッドゾーンまで回す。両車とも、こと加速性能に関しては、運転苦手を自認する人か、年寄り向けだ。
旋回ははっきりと吉凶が分かれていて、キューブは酷い。というか、キューブはそもそも真っすぐ走ることが苦手だ。60km/h以下の速度域限定の話だが、ハンドルにはっきりと固着感がある。常にグイッとまずは力まないとハンドルが回らない。固着感を乗り越えると、今度は異様に軽くてスルスル動いてしまう。で、動かし終わるとまた固着する。どんなクルマでも直進とは言え微量な修正舵をあてる必要があるが、その修正舵がまず一仕事になってしまう。従ってキューブの車体は常にフラフラと左右に揺れるし、旋回最初期も旋回中もとても気を使う。加えて前述のオフセット有り、段差多目のペダル配置だ。これで運転を楽しめと言われたらケンカを売られているとしか思えない。
一方インプは加速と旋回に一本の筋が通っていた。プントエヴォと比べて旋回がややクイックで、筆者の常識と照らし合わせれば、いつもよりもゆったりとハンドルを回してやる必要はあったが、一度そのリズムを体感してそのように操作してやれば、インプはキレイに一筆書きの軌跡で旋回する。さほどしっかりしていないと思えたシートも、一般道をそのリズムで走ってる限りでは充分快適に運転姿勢を保持できる作りにはなっている。今回のインプ個体は15Sという最下限のモデルのようだったが、一番安いモデルでもちゃんと世界が構築できているなら、トップモデル、例えばSTiモデルならさぞや楽しいことだろう。スバルのクルマばかり乗り継ぐ「スバリスト」が多数生息する理由がよくわかった。
制動についてはどちらも特筆すべき能力ではない。止まる。けど制動力の立ちあがりから停止まで、フォーカスはかなり曖昧。踏力一定できれいに停止できるようにはなるが、そういう制動動作を作ろうとすると、速度はあまり出せない。両車の商品としての立ち位置を考えれば、まぁこれで良いのだろう。
その他
インプレッサの水平対向4気筒エンジンを抱えたエンジンルームたぁどんなもんだ?と、興味津々でボンネットフードを開けてみた。
エンジンそのものは低いが、こんなに補機類が上に乗ってたら低い搭載高のメリット云々はチャラになるのでは?ともあれ、ダンテ・ジアコーサ技師発祥のFFレイアウト車両のエンジンルームばかり見てきた筆者にとっては、とても新鮮な眺めだった。ちなみに車齢が高くなると、水平対向エンジンはオイル漏れが顕著らしい。ま、アルファロメオのツインスパークエンジンだって、他人のことは言えないが。ちなみにインプの燃費は、オンボードコンピューターによる表示を鵜呑みにすれば、6-7kmくらい。やはり4WDは喰うのだろう。
自動車の素養は酷いものだったが、道具としては工夫があちこちに見られたキューブ。荷室回りのフック類の配置は、欧州車はぜひ参考にしてもらいたいものだ。ライフスタイルが違い過ぎて導入できないのだろうか。コンビニで飲みものを買って、その袋をゴミ箱代わりに引っかけて使ったりしないのだろうな、欧州じゃ。
まとめ
いろいろ書いてきたが、まとめれば言いたいことはふたつだ。ひとつは日産実用車の凋落は酷い。もうひとつはスバルやるな。インプレッサのSTiモデルにマニュアルトランスミッションで乗るのは断然楽しそうだ。あとはデザインだけなんとかしていただければ……。
スレ違いですがプント良化おめでとうございます!しかし色んな意味で中々な代車でしたね。キューブは初代をレンタカー、現行?を代車で運転しました。初代の功績は日産の販売台数の窮地を救った、それだけだと思ってます。現行のリアシートはあれでも初代からは良くなってるんですよ(;´д`)。現行はパッケージは良いと思うんですが、如何せんドライブフィールは全く同感です。これが日産の実力だと思いたくないですが新型ZとGT-Rの行く末が…。インプレッサのドライブフィールは流石SUBARUっすね。歴代レガシーもハンドル握ったのは2、3回ですが個人的に楽しかったです。現行ラインアップが北米で販売好調なのも納得です。しかしUBARUのデザイン全般、本当にこれが良いのか、アルファに見向きもしないアメリカ人よ(負け惜しみ)。
ありがとうございます。しみじみとシフトチェンジを楽しんでおります。キューブ、今調べたらまだ売ってるんですね!どんだけ古いプラットフォームで商売するんじゃ、シトロエン!あ、間違った、日産!ものすごく好意的に解釈すると、マーチは国産車あるある、40km/h前後で走る時に最良のバランスになる、じゃないでしょうか。でもだとしたら、あれは日本国内のどこを走る前提でチューニングされたのか。正直ベースで言えば、40km/hで走る時間なんて、ほんのちょっとしかないのに。不可解です。本音と建前の乖離が、いろいろとちぐはぐな乗り心地、操作性に繋がっているように思います。ただしあのパワステのチューニングは酷い。40km/hで走っている時でも弁明の余地がない。
一方でスバルは軽く驚きました。乗って走り出した10kmくらいは、CVTの無反応ぶりに心底がっかり。でも加速のさせかたがわかると、旋回も制動もちょうど良くバランスするポイントが「あ、ここか!」とわかるという。で、バランスする速度範囲がちゃんと広い。まぁ一般道では加速以外はある程度納得できるようにチューニングされてました。結局キューブ、インプともCVTですね、諸悪の根源は。加速にダイレクト感がほぼない。マジックハンドでおっぱいもんでも興奮しませんもん。
こんにちは。キューブはかなりひどそうですね。息子の嫁が先代のノートで、一度運転しましたが、運転しづらい。また乗ってみたいとは思えません。日産のコンパクトカーはおしなべてそんな感じなのでしょうか?GT-RとかZとかは評価が高いのに、残念です。量販車はとにかくコスト優先で開発しているのでしょうか。スバルは2台インプレッサを所有して乗ったので、だいたいおっしゃりたいことは、分かります。CVTが我慢できるかどうかですね。あるところまでグッと踏んで、ちょっと待つ、みたいな感じで運転していました。それを除けば、まずまずです。運転が楽なんですね、バランスがいいというかすんごくいい、というところはない(インプレッサに限ってのはなし、WRXとかは乗ったことがないので)けど素直という感じ。疲れないという点では上位に来ると思います。スバル乗るなら、MTで決まりです。
キューブについては、あれこれ挙げていますけど、とにかくパワステが酷い。セルフアライニングトルクも足りなくて、まっすぐ走るところまで戻してやらなきゃならんのです。やってらんねえ。Z12型はゴーンショックの前だと思っていたのですが、どうなのかなぁ。現行のマーチを見ると、もう完全に日本市場は捨ててる感じ満載で、今さらキューブのパワステの年次改良などやってられるか!なのでしょうか。
で、その上でCVTじゃねぇ……。たぶんCVTでも、もっとトルクのあるエンジンと車重が軽ければ印象はぐっと良くなると思うんです。非力な上にそれをカバーする能力の無いCVTが組み合わさっているのが悲劇の始まりではないかと。インプの運転が楽ってのはうなずけます。「これはこれで、楽しいじゃん」と本気で思いました。