試乗記・マツダ 3/高解像度制動
kanaパイセンのマツダ 3を再び運転させてもらうことができた。以前も運転させてもらった。
2020年11月3日
試乗記・マツダ3 敢えて言おう!国産Cセグ決定版であると!
実際再び運転してみても、上記内容から修正すべき事柄はなく、実は「アルファのクルマ」にこだわらなければ、中古のジュリエッタを買うよりもシアワセになれるかもしれないとすら思っている。だが今回の試乗目的はクルマとしてのトータルインプレッションではなく、焦点はひたすらブレーキの一点だった。
なぜかというと、自動車評論家森慶太のメールマガジンで、マツダ 3のブレーキが革命的に素晴らしいと読んだからだ。おそらく見出しだけ読んで上記2020年の試乗があって、その時は「あ、確かに過剰な味付けなしの、リニアリティ重視のブレーキだな。クルマ全体の機能バランスとも合致してる」と判断して、そこで終わっていたのだと思う。森慶太が評価するポイントは「踏力一定ブレーキ」がとてもやりやすいからとされていた。ブレーキ動作が一定なのは当然で、良いクルマと評価する時の重要なポイントではないか。
筆者もブレーキ評価では、制動力がリニアに効くかどうかを重点的に見てきたつもりだった。が、3のブレーキを体験し、これをリニアと評価するなら、例えばアバルト プントエヴォのブレーキはリニアではないと言わざるを得ない。まず先にプントエヴォのブレーキ動作というか、踏む操作を詳述してみよう。まずペダルを踏む。制動初期のサーボが強力だからガツンと効く。望む制動力が得られたら踏力を徐々に抜いていく。速度がどんどん落ちる。それに比例して踏力を弱めていく。最終的に止まる。プントエヴォのブレーキに関して筆者がこれまで「リニア」と表現していたのはこの抜き動作のことで、踏むことではない。同じリニアという表現を使っても3のは踏む力でプン太郎のは抜きである。真逆の動作についてリニアという同じ表現を使っていることになる。これは自分自身の中でどうにも収まりが悪い。改めて3のブレーキ動作はどういうものなのか、知りたくなったのだった。
3が3として発売された時。ヤヤコシイがマツダ アクセラから3へ改名するモデルチェンジの時、3のブレーキは、多くの自動車評論家がインプレッション記事中でブレーキに疑問符を付けたという。要は効かないということらしい。だが前段の説明をお読みいただけば、その印象の正体もわかると思う。筆者が改めてそのつもりで3のブレーキを踏んでみた印象では、ブレーキサーボによるアシストが非常に穏やかだと感じた。ペダルの踏み始めに、サーボがガツンと立ち上がらない。サーボアシスト強めのクルマにばかり乗っていると、「え?なに?効かないぞ??」と感じる。そして望む制動力に達した後の効き方も違う。アシストが穏やかだから、踏んだ踏力を維持したまま踏み続けなければいけない。ガツンとアシストが効くブレーキに慣れていると、これは「効かない」と錯覚しても仕方ない。だが一度それを理解すると、3のブレーキ、制動をかけて望む速度まで減速する、あるいは止まるまでの動作全体の解像度が高いことがわかる。踏み込み量を精緻にコントロールしやすく、その領域が広いのだ。ガツンアシストに慣れてしまった筆者は、「決然と踏まないといかんなぁ、これは」と思った。
なるほど。踏力一定か……。
プントエヴォのブレーキも3のブレーキも、ロジックはわかる。わかれば適正にコントロールできるとも思う。それにエンドユーザーとしては高い金を払って手に入れた自分のクルマが提示する、そのロジックによる動作に慣れるしかない。3の側に立って言えば、「ブレーキを踏む」と言うように、自車を止めるために必要な制動力は、一義的にはブレーキペダルを踏む動作で得られる。だから3のブレーキのように「踏む動作」の解像度が高いことは歓迎すべきことだと思う。ブレーキのありようとして正しいのかもしれない。それなのに今までなかった。森慶太が特筆したのは、だからこそだろう。
アバルト プントエヴォは、速度を上げた時の動作の正確性に重きを置いている。だから高速走行時の制動力の立ち上がりは速くないと困る。サーボがギンギンに効いてガツンと制動力が立ち上がるプン太郎の制動動作は、過激・過剰を売りにする変則的なメーカーコンプリートカー、アバルトブランドのクルマとしては正しいし、必要でもあり、運転手の安心材料である。一方のマツダ 3は、目を釣り上げて限界走行を楽しむよりも、日常生活の中で上質の運転体験を供することを目的としている(と思われる)。そこに神経質な要素はいらない。だが軽自動車やコストを抜きまくったBセグメント車両のような、最低限のサーボアシストはしますけどー的な、嬉しくも楽しくもないグニャッとした反応しか返してこないブレーキにはしなかった。Be a Driverという標語を掲げ、「これが実用車のあるべきブレーキだ!」と提示してきたのだ。ブレーキ動作の好き嫌いを言う前に、自動車好きならそのことは評価すべきだ。
ちなみに試乗時はオーナーのkanaパイセンが同乗してくださった。実はブレーキ動作が気になって……と再試乗の理由を説明したら、「そぉお?オレ気付かなかったけど!」と笑っておられた。これがマクロな視点であり、リアルオーナーズボイスである。この一言は、逆説的にマツダ 3が均整のとれた良いクルマである証左にならないか。kanaパイセン、ありがとうございました。
誰もが、車を乗り換えた時に一番気になるのがブレーキのタッチですよね。特に車に興味のない方でも、ブレーキはカックンとくれば気になります。重要な部分です。acatsukiさんのおっしゃるとおり、ブレーキのメカニックなしくみやメーカーでの初期設定での比較は重要ですが、ブレーキパッドもかなり重要だと思います。まあ、ブレーキの踏んだときの感触はどうしようもないですが、カックン系はサードパーティーのブレーキパッドへの交換でかなり改善出来たりしますよね。
余談ですが、うちのトゥインゴはフロントはディスク、リアはドラムです。ケイマンやレネゲードに乗ったあと運転すると、必ずカックンします(笑)ドラムはコストダウンが一番の目的でしょうけど、私は、トゥインゴなんかは前後両方ドラムでいいんじゃない?って思ったりしますw なによりブレーキダストがホイールに付かないのはイイですね(笑) うちの他の車では、ケイマンとレネゲードは、タッチも効きも純正状態で非常に優秀なブレーキだと思ってます。
ちなみに、マツダ3や他のマツダ車は僕もちょっと気になっていた車で、大昔にプレマシーを運転して以来一度も運転したことがないので、そのうちディーラーに試乗に行ってみようかと思ってました(^^
MiTo、DS3と社外品をいくつか試してみて、結局純正がいちばん気楽に乗れるという、いわば雨降って地固まるな結論に今のところなっています。プントは結局純正以外付けたことがないですが、まったく不満がないですし。パッドやローターよりも、RHD輸入車のブレーキマスターが左に置き去りの方が罪深いと思います。こっちは社外品を試すとかやりようがないですもの。
当家だとパッソがドラムですね。ドラムだからと言うよりも、チューニングの志が低くてゲンナリするブレーキです(笑)。次期主力戦闘機のブレーキタッチが今は楽しみです。
なるほど、倍力装置・マスターシリンダーの位置ですね。webCGか何かでその記事を以前読んだことがあります。今の日本向けのRHD輸入車はブレーキだけは右専用に作り直されているものも多くなったと聞きますが、少し前の中古車等だとおっしゃるとおりですね。僕は鈍感なんであまり気にならなかったりしますが(笑)、acatsukiさんのようにクルマの挙動を非常にセンシティブに感じながらドライビングをする方には重要なファクターだと思います。なんか自分は本当によっぽどじゃないと(エンジンからの金属音等[流石に致命傷なのでw])色々と気にしなくなっちゃったので(汗) 変なイタフラ車を乗り継いでいるとイタリア人気質もうつってくるって本当でした(笑) なので、acatsukiさんのような繊細な方じゃないと気づかないようなことをこのブログは詳しく書かれているので、とても面白いです(^^ 次期主力戦闘機、なんだろう、想像がつかないです。楽しみにしてます。パッドですが、そのうちトゥインゴのフロントをディクセルにしてみるつもりです!
ブレーキマスター移設してる/してない問題は、してない状態しか知らないとすぐにそうだとは気付かないかもしれません。オレは文章で読んでああ、なるほどと思ったクチですから、人様よりセンシティブなんかじゃないと思います。もっとも気付こう気付こうと思ってなければわかるようにはならないでしょうから、努力はし続けようとは思ってます。
ディクセルは間違いないセレクトですね。どう変わるか興味あります!
acatsukiさん。
素晴らしいインプレありがとうございます。
当のオーナーが全然気にしていませんでしたが、
攻めるクルマでも無いし、いたって普通な乗り方だけにブレーキ挙動ってあまり気にならないのかもしれません。
ジュリエッタよりもおすすめとはちょっと言い過ぎたか?と思ったりもしたんですが、そもそも目指している走りが違うし、それぞれの世界観がちゃんと達成できているという意味では、やはり良い比較対象だなと思い直しています。攻めなくても良いって、若い時はわからんかったなぁ(笑)。
ブレーキを殊更意識しないっていうことは、やっぱり良いことですよ、うん。そして週末が楽しみです。
こんばんは。ブレーキは効くのがもちろん第一ですが、おっしゃる通り、どういう風に効くのかも本当に大事です。長距離や知らない土地や道を走る時の疲れに差が出るような気がします。そして自分の車だと知らない内に慣れてしまうことも往々にしてあります。私は妻のタントもよく運転しますが、こちらは必ず意識して踏むようにしています。ググっと踏むと、ペダルが変な動きをすることもあるので、怖いから、できるだけ大人しく運転しています。
他のクルマのブレーキインプレッション、貴重です。ありがとうございます。現代のクルマでブレーキがプアってことはまずないと思いますが、それでもやはり加速性能と釣り合いがとれていなければ、運転していて疲れてしまいますよね。別のクルマでの話ですが、ペダル取付剛性も、「ブレーキの効き」を感知するにあたって重要なことがわかりました。クルマっておもしろいですね。どんなに効くブレーキでもペダルの取付がふにゃふにゃだと、そのブレーキを信頼できないですもんね。
私もmazda3を試乗したときに一番感じたのがブレーキが効きにくいのかな?でした。あのブレーキにまさかそんな深い意図が隠されていたとは…
昨今の運転環境やイージーになった運転により多発するストップアンドゴーやまるでオンとオフしかないようなドライビングにまるでブレーキは直前にガツンと踏むのではなく後続車に減速を知らせるために早めから踏むものなんですよと言わんばかりの味付けですね!
私も、もう一度試したくなりました。
言われてみると、確かにブレーキ操作が雑な、つまり直前にガツンと踏むドライバーを見かけますね。ああいうのは他のクルマに迷惑なだけじゃなく、同乗者の頭もがくがく揺すられて酷いでしょうね。
オフ会などで誰かのクルマを運転させてもらうと、違和感を感じることはまず無いんです。それはプントエヴォを基準にした感想なので、おそらく現代のクルマのブレーキのほとんどはアシストが早めに立ち上がるようにはされているんだと思うのです。そこのあの3のブレーキですから、なんか違うなぁと思う人がいても変な話ではないとも思います。私だってそのつもりで2回目乗ってみて、ようやく全貌がわかったような気になったのですから。少なくとも「一石を投じた」という意味で、マツダのブレーキ調律は貴重だと思います。そう言えばレンタカーで乗ったデミオ(2になる前)のブレーキはサーボガツン系の柔らかめみたいな調律で、特筆するような出来ではなかったしな(笑)。
実例をあげると、私のルーテシア4ではマスターシリンダー&ブースターが右側に移設されていますが、
Bペダルの裏面付近よりも結構高い位置にあり、そのぶん長いペダルアームを使っているようです。
しかし、Bペダルに数㎜ほど横方向のガタが元々あったため、ちょっと気になってディーラーにあった同じルーテシア4の展示車や試乗車(R.S.モデルも)のBペダルを調べましたが、やはり同じようなガタがありました。普段運転するぶんには特に意識することもないのですが、ペダルの中で最も重要なブレーキにこういったガタがあるのはあまり歓迎できないところです(※ある期間に製造されたペダルアーム支点の部品の寸法公差に若干違いがあるらしい)。ちなみにA、Cペダルにガタつきはありません。
あくまで私見ですが、ちょっと無理してシリンダーを移設したからペダル周りの設計や組み付けにも怪しい所が出てしまったのかと想像しています。それとも、設計上ブレーキリンク機構の配置が難しかったから移設せざるを得なかったのか・・・とか。ABS/ESCユニットはしっかり左側に残っています。まあ、これまで移設してしまうとブレーキ配管の取り回しも大幅変更になるし、もうスペースも無いからだと思われますが、本来はマスターシリンダーの直後にあるべきユニットだと思います。ブレーキフィールそのものに特に不満は無い(もちろん慣れもあります)ですが。
マスターシリンダーの位置は、あくまでブレーキフィール全体の一要素と考えています。その他にもマスターシリンダー取付剛性≒ボディ剛性、ペダルAssy、ブースター容量、配管&ホース、フルード、そしてキャリパー&パッド&ディスク(またはドラム&シュー)・・・やはり最終的に乗ってみて自分がOKならOKという、至って普通の結論で終わりますww
マツダもといNDのブレーキも大変興味をそそられますね!
>>マスターシリンダーの位置は、あくまでブレーキフィール全体の一要素
おおおおおおおおっ!この実例はわかりやすい!実は今up!の試乗記を書いていて、あれのペダル剛性はすごいんですよ。ガチガチ。不安ゼロ。性能云々ということもありますが、人間の感知力って本人が思っている以上って面がありますよね。ペダルの取付剛性ひとつで、そのクルマを格上に思わせるわけですから、クルマって難しいなと思いました。ヤマベ号もブレーキホースを替えたりして、なんというか、表情豊かなブレーキになってたのが印象的です。NDは990Sで3と同じ味付けのブレーキになったそうですから、つまりオレが買う2015年式はそうじゃないってことです(笑)。それはそれで楽しみですが。