回せ回せ

おい、こいつぁどうも……。実は違うんじゃねぇか。

丸森市・八雄館ではちみつを買ってきた

実はNDロードスター納車直後から旅行の予定が入っていて、200kmくらい走っただけでお預けを喰らっていた。帰ってきてから宮城県の大雨由来の各種警報のすき間を縫って、短時間ながらロドっちにガソリンを食わせてきた。そして冒頭の疑念が浮かんできた。筆者得意の早とちり、か?

納車直後のインプレッションに、旋回の教科書として買ったつもりのロードスターの、加速と減速の素晴らしさにまずは驚かされたことを書いた。「最低限の馬力でまったりこっくりじわりとトルクが盛り上がる」「3,000rpm以下でもAペダルを通じてのエンジン動作の描写は濃い上に、加速中の前輪の情報も濃厚」などだ。実際このことは今もそのとおりだと思っているが、一方でタコメーターに目をやれば、レッドゾーンは6,500rpm付近から始まっている。間の3,500回転分が単なるマージンであるわけもない。どうも思い違いをしているのではないか、と疑念を持った。

誰の迷惑にもならぬ場所を選びそれなりの負荷をかけてみたところ、疑念は確信に変わってしまった。回すとちゃんと回るしバンバン馬力も出るのだ。至極当然の話なのだが。実は3,000rpmより上もドラマがあると気付いたのは、運転姿勢がようやくぴたりと決まったからだった。メーター盤面と正対、メータークラスター上端とハンドル上端を揃えるという常道で上体を合わせたところ、ペダル類に近過ぎる位置取りをしてしまった。オルガン式Aペダルを踏む時の右足踵の置き方と、Cペダルを踏みきった時の左足膝の伸ばしきらずに済む状態を、シート前後位置調整で正しく合わせられた。するとAペダルの踏み込みがより楽になった。意図せぬ右足への負荷が、深く踏む気を若干削いでいた模様。マツダの言い分どおり、ロードスターのペダル配置は文句のつけようがない。むしろ正しいがゆえに許される運転姿勢の範囲も狭いのだった。

ローソン坪沼店にて。
しかし日本のコンビニの店頭ってのは
キタナイな

早とちりを恥じるとともに、少しだけ言い訳もさせていただきたい。アルファロメオ MiTo、アバルト プントエヴォというダウンサイジングターボ車両に乗り続けた13年間、筆者にとって「高回転では出力がヘタる」は常識であり、負い目だった。排気量を小さくすることで燃費を稼ぎ、排出有毒物質量を減らす。低回転域での非力さはターボ過給で補完する。これが欧州製ダウンサイジングターボというパッケージで、ご当地欧州のみならず、日本国内の道路事情にもフィットする、現実的なソリューションだと思う。だがターボ過給による利得を早々に使い切ってしまうため、加速の終盤では踏んでも伸びない。これを自動車評論家沢村慎太朗は「口喧嘩では威勢が良いが、いざ表へ出ろぃとなると急に腰が引けるダサ野郎」と腐している。筆者の13年はこれが常態であり、もはや無意識にタレる前にシフトダウンしておこうと身体が覚えているのだった。

もちろん日本国内の現実で、MiToでもプントエヴォでも、5,000や6,000など回す場面はサーキットか高速道路の追越し場面くらいしかない。しかし、だからそんな高回転域のことなんか関係ねーよと心の底から言えるクルマ好きがいるだろうか。「必要とあらばいつでもパワーが出る」という背景に支えられているからこそ、40km/hを楽しむことができる。プン太郎からの乗り換えにあたり自然吸気エンジンにこだわったのは、回せば伸びるエンジンを体験したかったからだ。とにかく回しきるまで加速はします、という常識で上書きしたくなったのだ。

蔵王を一望する定点観測地点だが、曇天で見えず

NDロードスターの1.5リットルエンジンは、どこにもピークがない代わりに、体躯に見合った実直な仕事をする有能さも感じる。すでに伸び代はないと思われていた要素技術から見直して、結果的に機能全体を底上げするというSKYACTIVEは「弱者の戦法」だとは思うが、特定の性能的優位はない代わりに、駄肉のない優良教科書になっている。滅多に回さない領域まで整えられている確信があってこそ得られる心理的マージンは大きい。そのためにはウチのND、どうやら少し鍛えてやらねばならないようだ。回せ回せ。回すのは根だけではない。

12件のコメント

  • う〜ん、NCがフォードの意向で例外的に高出力なエンジンを搭載しただけで、どれだけ踏んでも伸びないしスピードが出ないのが本来のロードスターのエンジンだったかと。NDは原点回帰しただけなんじゃないかと思います。
    当時のマツダのエンジンのサプライヤーも基本的に外れが多く、『エンジンの何処かに何か刻印されてる特定のサプライヤー製エンジンだけが額面通りの出力を出せる』とかって眉唾物な話もあった気がします。
    元々がファミリアの汎用エンジンを縦置きにセッティングし直しただけな代物ですし。ただNAの最初期型のMT車だけは高回転だったとか誰かが言ってたような…。
    実際ノーマルのNAは高速道路はもちろんワインディングですら国産ミニバンにブチ抜かれるぐらい遅い車ですよ、乗ってた頃何度も煽られて道を譲った記憶があります。

    • ぐはっ!(吐血)

      • 追記です。実際1.5リットルで馬力がドバドバ出てるエンジンってのを経験したことがないので、NDが遅いのか早いのかは正直わからないです。比較対象がない状態で書いても、多分ばかっ速ではないとは思います。クルマ自体が重いと思ってはいます。そうでなければ、やっぱり「軽やかにフケない」状態か……。
          
        とは言ってもターボ遅れの段付き加速とはまったく違う伸び方なので、それはとても楽しい。遅ればせながら「あぁ、こういうことか」と。あと、実際にワインディングに持ち込んでみて、「よし!ここで伸びろ!」って場面(それは旋回過程の後期)で欲しい分だけ加速してくれるか、で判断できるんじゃないかなぁ、少なくとも自分は。MiToやプントエヴォでは、回転数維持を失敗して過給待ちになることがしばしばありました。まぁ下手っぴなわけですが(笑)。翻ってロードスターなら、厳然とした「過給前/過給後」はないから、場面場面に応じて最低限維持すべき回転数を探せば良いはずで、今はそれが楽しみです。宮城県の大雨で路面状況が悪く、ワインディングへ持ち出すのを躊躇しております。ヴェスペさんに限らず、みなさまどうぞご安全に。

  • こんばんは。新しい車の性格を掴むのには時間がかかりますね。最低限維持すべき回転数を探す、その通りです。MTだとそれができますね。ATだとモードを変えるくらいです。いろいろな道を走ったり、いつもの道を攻めてみたり。条件を変えて、今までの車と比較するのが、これまた楽しいです。
    おっしゃるように、大雨の後の道は心配ですね。いろいろな物が落ちてたりするし。実は今回私は愛車を含川で水没させるところでした。危なかった。花山の方のR398は大丈夫でしょうか。一時通行止めになっていましたが。志津川の方は時間がかかりそうですね。
    早く復旧しますように。

    • もっと勘所がわかっていれば、キャラの把握もすっきりする運転方法も時間をかけずにわかるのでしょうけど……。実はロードスターではまだ「未知の道路」を走っておらず、お馴染のコースがどのように味が変わるか、しか確かめられていないのです。そろそろ岩手探訪第2段と行きたいところ。
        
      にしても、危なかったですね!いつもの道でご油断召されたか。花山や一関も気になりますが、花巻、遠野、盛岡なんかも心配です。あと沿岸ですね。やはり川の増水の被害を受けやすくなりますからねぇ。ネット上の地図を見ていても、意外なところが通行止めになっていたりして驚きます。早く収まりますように。

  • kikuchiさんのおっしゃるくらいのスタンスで、この手の車はちょうど良いと思います。あまり頭デッカチになりすぎると、本来の楽しい気持ちいいはずの走りを、他のネガティブな知識等でスポイルしてしまうんではないかなあと。まずは、何も考えず、自分なりに気持ちよく走ってみて、その気持ちいい所は、きっと段々と身についてくると思います。その後の検証でも良いかと。まずはぜひオープンNAに心ゆくまで楽しんでください!
    関係ないですが、やはりNDって「なんか来たな? 」と思わせるスタイリングですね。カッチョ良いです。

    • おっしゃるとおりですね。まず自分が気持ち良い状態をきちんと把握して、「なぜ気持ち良いのか」と入って行くのが良さそうです。ブログには背伸びしていろいろ書きますが、メカニズムの知識は乏しい私ですので分析には限界があります(それも限界値がけっこう低い)。NDのスタイリングはなかなか意欲的だとは思っていましたが、実際に自分の家に停まっているとぎょっとしますね(笑)。なんか、すげえのがいるな、と。でも老母には「プントと違って排気音が(家の中にいると)聞こえない」と言われました。排気音はジェントルなんです(笑)。

  • 私の印象では、NDは風のようにすぃ~っと軽やかに走り抜ける気持ちのいいクルマかと。そんなNDなのに、ドリフトブイブイやってたり、グリップ走行でもばんばん走っている方が多く、ホントすごいなぁと思ってみてます。
    > 「プントと違って排気音が(家の中にいると)聞こえない」
    うちの母はカーポートのすぐ上の部屋で寝起きしていて、ミトのことを「静かなクルマねぇ」(マフラー替える前)なんて言ってました。が、早朝に124で出かけても全く気付かないのであてになりません(笑)

    • うーん、当てにならない(笑)。ウチの老母も耳、相当遠いですからねぇ。
        
      確かにただ普通に走っているだけでも楽しいNDではありますが、その楽しい成分の1/3くらいはFRによる前輪の負荷が軽いことだと思うので、もうこの段階で充分恩恵はあると言えます。サーキットや峠道でドリフトをキメまくりたいというわけじゃありませんが、「なるほど、ここから先は滑るのね」という境界線は常に意識していたいので、今後もそういう視点で運転するつもりではいます。

  • NAは下のほうのトルクが細い傾向にあるので、回転を高めに維持してやったほうがキビキビ走れるイメージがあります。
    ワインディングとかで意識して回して走るのも楽しいですよね。
    屋根開けてのんびり流す分にはそんな回さなくてもいいでしょうけど。

  • あ、NAは自然吸気の方のNAね。

    • なにしろ「運転がうまくなりたい!」と思い始めてから13年、ようやく、初めて味わう自然吸気エンジンなんで、こんなもんかなぁとこれ気持ちいいなぁが半々で。実際オープンにして走っていれば、速度はあまり関係なくてひたすら気持ち良い。一方で高目の回転数を維持したままシフトをつないでいく楽しさってのも、やってみるとこれまた大いに面白いわけでして。現状では後者の面白さを楽しむには、若干回転の腰が重い印象なわけです。これがこのエンジンの素性なのか、鍛え不足なのか。やっぱり試してみたいじゃないですか(笑)。

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