オーディオ環境改善報告(未エイジング)

ロードスターのオーディオ環境をグレードアップした。これは購入時の既定路線だったが、プランニングと当方の予算捻出(計算)に思いの外時間がかかってしまった。実際の施工は1泊2日で完了。プランの全貌をレポートする。

●マツダコネクト搭載済という罠
筆者が購入したNDのグレードは「Sスペシャルパッケージ」。左様、マツコネことマツダコネクトが最初からインストールされていた。

マツダコネクトとは?

残念ながらマツコネのオーディオ品質は筆者の好みに合わなかった。ギラついた高音域と、ブースト気味の低音域でパッと聴いた印象は今風の派手な音ではある。一方コンテンポラリー音楽に重要な500Hzから2kHzくらいまでの中音域は蔑ろにされている。ヴォーカルやギターの根幹的な周波数は乏しくやや後ろに引っ込んだ印象となり、同時にベースの輪郭もはっきりしない。逆に言うとそういう音づくりをすると今風の派手な音質になりがちなのだ。ということで、マツコネ純正オーディオの全体的な印象は、解像度は粗く全体的に低域に寄ってしまい、音像は膝・腰のあたりに溜まってしまうものだった。もちろん筆者とて屋根の開くクルマのオーディオ品質にピュアだのプレミアムだのの冠言葉は不必要と思うが、幌を閉めた時に(存外に防音が効き居心地が良い)好きな音楽を心地良く聴きたいとは思う。解像度の高い、低中高すべての帯域がバランス良く鳴って、劣化の少ない音質で鳴って欲しい。

●BOLTジャパンさんを頼る
今回は仙台市内にあるオーディオプロショップ「BOLT ジャパン」さんを頼ることにした。車両購入店オープンカークラブ仙台・H田店長の大推薦があったからだ。取り付けにショップを頼ることはあったが、プランニングからお願いしたことはなかった。今回のロードスター購入は周囲の方々とのご縁がご縁を呼んで……という側面があった。ならばオーディオに関しても、その流れに乗るが吉であろう。

BOLT ジャパン

BOLT ジャパンさんにメールで問い合わせを入れると、店舗で直接相談に乗ってくれるという。プロショップに依頼する本当の意味はこういう部分にあると思っているので、非常に嬉しい。こちらの理想や考え方も直接お話ししたいし。で、相談の結果どうだったか。BOLTジャパンのTさん曰く、スピーカー交換よりもデッドニングよりも、まずはDSP内蔵アンプを入れてみましょうと言う。これには面食らった。というのも、筆者の中でDSP(Digital Signal Prosessor)には良い経験がなく、使い処を間違うと返って手の施しようがなくなる……と考えていたからだ。だがTさんのお話をよく伺うと、DSP導入の利点についても一定理解できた。大前提としてクルマのコクピットには、タイヤやエンジン、排気系からのノイズ、風切り音などが溢れており、音楽を聴く環境としては実に劣悪である。またドアという物体も、スピーカーユニットを鳴らすための筐体としては決して良いものではない。従って仮にピュアな劣化最小の信号をスピーカーに送ることができたとしても、不要な共振があったり、余分な吸音や乱反射が発生してしまう。

デッドニングは確かに不要な共振やエネルギーロスを減らすことはできるが、基本的にコクピット内はノイズや乱反射と共存するしかない。そこで共存前提で周波数調整を効率良く行うのがDSPであり、目指す音質がはっきりしているなら確かに有効なウェポンではあろう。Tさん提案のアプローチは、まずコクピットの周波数特性を計測し、目指す音質に調整する。しかる後調整済の信号をデッドニング+良質スピーカーで鳴らすというもの。コクピットのように劣悪かつ複雑な形状の環境の音質調整には、もはやDSPは欠かせないというのがTさんのお考えなのだった。

●施工プラン
せっかくゼロから相談に乗っていただいたし、2022年最新のDSP性能を体験するチャンスではある。では……!と意気込んだのも束の間、見積りを頂戴して現実に引き戻される。この世の真理として良い機材は高価である。予算オーバーではあるが工賃はダウングレードしようがない。結論から言うと今回DSP導入は見送ることにして

・左右ドアのデッドニング
・スピーカー交換
・インナーバッフル取付

のみをお願いすることにした。DSPなり別体アンプを導入しないとなると、最大の懸念点はマツコネ純正アンプの性能である。実際マツコネの内蔵アンプはスルーできないらしい。これは考え方によって評価が分かれるポイントだが、NA-Rなんていうレース用の素モデルをラインナップする配慮があるなら、マツコネにもある程度の自由度は持たせて欲しかった。約2週間純正状態のオーディオで馴染の音源を聴いてみた印象は冒頭に書いたとおり。全体像の印象は純正アンプ+スピーカーの合算だから、一概にアンプ性能だけを論うわけにはいかないが、期待はできない。今回の決断には正直なところ不安も大きかった。

●費用
改造後の印象を書く前に、ファクト、つまり費用を明らかにしておこう。

スピーカー BLAM RELAXシリーズ 165RS2 21,780円
インナーバッフル 3,850円
上記取付工賃 22,000円
デッドニング工賃(材込み) 55,000円

合計 100,000円(値引きあり)

BLAM 165RS2
BLAM RELAX 165RS2

●改造後の音質やいかに?
まず「10万円もかけたので悪くなったとは思いたくない」という心理的バイアスがあることは認める。その上での印象だが、はっきりと解像度は上がった。イコライザー無調整の状態でも高音域は充分にあり、音像全体が肩の辺りまで上昇した。膝、腰のあたりでわだかまっていた純正環境とは大違いである。これは高域を担当するツイーターが良い仕事をしている証拠だ。高域が改善されたことによって、低域も輪郭がしっかりした。これはデッドニングも効いているはずだ。Tさんの説明によれば、収音・消音よりもポイントを見極めた共振防止を狙った処理が中心。ドアの内側で余計な拡散が無くなったので(低周波数は指向性が少なく、360度に広がってしまう)、効率的に低域が乗員側に向かってくるようになった。

一方で中音域周波数が凹んでいる(不足している)印象は変わらなかった。ということはこの中域が凹んだ音質がマツコネ純正アンプのキャラクターなのだろう。純正アンプ出力をスルーできない以上、DSP導入は確かに不可欠な改善策なのかもしれない。そういう音質的傾向を呼び込んでいるもうひとつの要因があるとしたら、エイジング不足だ。スピーカーユニットが設計通りに十全に鳴るようになるためには一定期間入力し続けなければならず、この慣らし期間をエイジングという。このエイジングにも実はテクニックがあって、低い方から高い方まで満遍なく周波数が含まれる信号(音)を同一レベルで入力し続けるのが最善なのだ。そんな都合の良い音楽、あるの?と思われるだろう。エイジングにもっとも向いているのは実はピンクノイズだ。昭和のテレビ放送が終った深夜に、信号が途絶えて「砂の嵐」と呼ばれる状態になったことを知っている読者もいると思う。あの「ザーッ」という音がホワイトノイズ。ピンクノイズは帯域ごとのエネルギーが同じ。つまりスピーカーユニットに全帯域に渡って同一の負荷がかかるので、余計なクセが付きにくい(聴覚上はほとんど同じザーッ)。新車の慣らし運転と同じだ。だが移動中の車内でピンクノイズを1週間以上聴き続けたら発狂してしまう。当面はなるべくダイナミックレンジの広い音源(スティーリー・ダンとか?)を聴くように心がけることにしよう。特に海外ブランドのスピーカーはエイジングが終わる瞬間を体感しやすい。音が劇的に良くなる瞬間があるのだ。1週間かかるか2週間かかるか……。楽しみに待つしかない。

こんな動画(?)を見つけた……

脱線したが、全体的には目指すべき音質傾向に近づけることはできた。エイジング終了後にもう少し様々な音源を聴いて結論を出したいが、納車直後の今でも充分改善を実感できる仕上がりであはあった。BOLTジャパンTさん、ありがとうございました。

6件のコメント

  • ツイーターつけると、床面やドア等への中・高音域の吸収が少なくなるし、音像も車内で上がってくるので、かなり違いますよね。それだけでも成功だったと思います。私達の年代は、3wayスピーカーなんて主流だった時代なので、スコーカーの意味は大きく、中域も大切にした全体的にフラットを狙った世代なんですよね。ドンシャリで1〜4KHz中域を軽視した今の音作りはどうしてもボーカルの歌詞が聞こえづらい音源があったりギターがかっこ悪い音だったり、もどかしいです。自分的には、車内ではフラットに若干低域をブーストさせた感じが好みです。今のボルボのXC40のハーマンカードンはその好みにぴったりで嬉しい誤算だったりします(笑)
    それにしても、DSPを優先したセッティングって、やっぱり今どきですよね。。。

    • もう10年くらいドアのコアキシャルスピーカー2発のみ!ってシステムで聴いてきたので、ツイーターの存在が新鮮です。みいさんと私くらいの年代だと、機材的な変遷もありますが、やっぱり「ピュアオーディオ」って言葉に弱いんじゃないかと思います。劣化変質最小限!が合言葉みたいな。でも2010年代後半からの、前に出したい音は全部のっぺり貼り付いてるみたいなミックスには3wayとか不向きじゃないかなー。あれは再生側の音が悪くて当然っていう思想のミックスじゃないかと疑ってます。ともあれ、機材はすべて向き不向き、適材適所ですから、私の狂ったプレイリスト再生には今回のような改善策が必要だったってことかと。ハーマンカードンの音も聴いてみたいです。
        
      DSPに関してはまだ諦めてないっす。財布に余裕ができたら挑戦してみようと思ってます。

  • ピュアオーディオ的価値観だと、DSPのような「かませ物」は邪道という考えは根強いですよね。私もどちらかと言えばあまり使いたくない派です。
    しかし、そもそも環境条件が厳しい車内であれば高忠実性を狙うよりガッツリ補正をかけてしまう方が手っ取り早い…ショップさんのご意見は(商売事でもあるでしょうが)ド正論だと思います。
    ホームオーディオ、特にホームシアター界隈ではAVアンプにDSPが標準装備化されて久しく、マイクで音場測定&音場補正も普通の機能と言えます。技術的背景を考えると、今どきのカーオーディオDSPの威力は絶大なのかもしれません。物の本によると、カーオーディオの数少ない音響上のメリットとして、「リスナーのポジションがほぼ固定」という条件があります。”スウィートスポット”をホームオーディオよりかなり追い込める余地があるそうで、ここがDSPの本領発揮ではないでしょうか。いや、スピーカーセッティングを容易に変えられない車内では、電気仕掛けしか方法がないのかもしれませんが。
    エイジング後のインプレッションを楽しみにしております。

    • 実際に電源や機材間を接続するケーブルの素材によって劇的に音が変わることを知ってしまうと、シグナルプロセシングの前にやることがあるんじゃないか……と思いがち。でも商売云々を差し引いたとしても、ロードスターなんてピュアオーディオには為す術もない環境(笑)なわけですから、今回の提案は至極妥当だと思いました。それにまずきちんと体験してみるのも大事かと考えました。予算という現実に阻まれましたが(笑)。
        
      ご指摘の案件、いちいちごもっとも。ひとつ「あぁやっぱりそうだった」と思ったのがツイーターの存在。ドアのコアキシャル2発だけだと、左右確認のために身を乗り出すだけで位相がグニャッと変化して、気持ち悪かったんです(笑)。高域だけでも分離して出してやると、音場がしっかり安定して気楽です。お盆の頃にはエイジングも終わるでしょう。お待ちください。

  • >低い方から高い方まで満遍なく周波数が含まれる信号(音)を同一レベルで入力し続ける

    Perfumeいいぞ!スペアナでLo~Hiまでほぼフラットww
    赤信号停止中音漏れしても、それほど世間体も悪くあるまい

    • ナカタすげえな。ところでプン太郎に積んでたヘッドユニットとアゼストのアンプは確保してあるので、魔改造すれば積めることもわかった。それはそれとして、今度音聴いてみてよ。

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