990S再び。もしくは知りたくなかった事実について

既報のとおり筆者のND5RCロードスターのホイールインチアップが完了した。同じロードスター990S乗りの木枯らし紋次郎さんに試乗してもらい、客観的評価をいただく機会を得た。しかし筆者としては成り行きで運転させていただいた990Sの挙動にある意味で衝撃を受けたので、そのことと併せて書いてみたい。

前日の大雨から一転して晴天の真夏日となったこの日、集合場所のとあるコンビニエンスストア駐車場、先着の紋次郎さんの第一声は「なんだかコルヴェットみたいじゃない!」だった。あぁそれ!筆者も言語化できずにいたのだがそれだ。やはり見た目はマッスルな印象なのだった。ただしリア側シチサンから見れば……という条件が付くのだが。さっそく移動して七北田ダム湖畔公園に2台を停めて再度静態観察の後、紋次郎さんの運転の助手席に同席させていただき筆者個体のワインディング試乗へ出発。

990S純正ホイールは16インチの7.0J。今回チェックしていただくアドバンレーシング RGIIIとは純粋に径が1インチ異なるだけだ。紋次郎さんの感想も筆者の印象記とあまり相違なく、直進安定性と旋回動作初期反応の向上、心配したほど暴れないバネ下というものだった。もろもろ向上の理由は、おそらく履いているタイヤ、ミシュラン パイロットスーパースポーツのタイヤ幅とホイールのリム幅がツライチで一致しているからだろうという紋次郎さんの見解が非常に興味深い。990Sに乗り換えて(今度は筆者が運転)同じコースを中心に走ってみると、なるほど17インチ比直進が気持ちふわっとしている感がある。タイヤはアドバンスポーツ195/50/16で、停車時によくよく見たればタイヤ幅がホイールリム幅よりもなるほど内側にいる。扁平率の違いもあろうが、単純にタイヤの接地面積の差が直進安定性や旋回動作応答性の違いになっているのだろうと推測。

しかしこれは2台同時に一気に乗り比べたから気になる差異であり、ある意味でトレードオフの関係だ。17インチ+タイヤリム幅ぴったりでは直進安定性は増すが、初期反応はともかく旋回動作もどっしりした印象になる。一方で16インチ+タイヤリム幅狭めでは旋回動作全体の印象はひらりひらりと軽く、ロードスターの本懐はこちらだと思ってしまう。100km/hを超えるとがんばってる感が前面に出てくるNDロードスターの場合、低・中速度域での旋回、もっとピンポイントで言えば下りのワインディングこそがもっとも輝くステージと言いきって反論するオーナーは少ないだろう。そう考えればインチアップは全方位的に快感が増すわけではない。しかしクルマのキャラとのつき合い方にはオーナーの数だけ正解があるとも言える。再試乗できた990Sの印象は相変わらず大変良く、どちらが正解とは言えないのだった。

こういう結論に至ることができたのも、比較対象としての990Sのキャラクターがしっかりと立っているから。990S、このヒラヒラ旋回が決まるの楽しいぃー!と真夏日のワインディングをオープン状態で走りつつ紋次郎さんとあれこれ話していたら、そもそも筆者の個体の足周り、もはやヘタッているのでは疑惑がむくむく湧いてきた!マジか!だが990Sを運転しながら筆者個体の旋回動作をオーバーラップさせてみると、確かに縮み側に生硬さを感じなくもない。現状で筆者の個体はホイールとタイヤ以外は純正状態・無交換を維持したまま6万km以上走っており、旋回動作を味わうためのクルマというロードスター特有のキャラクターを考慮すれば、前オーナーだってそれなりにしごいたはずで、ヘタり始めていたとしても不思議はない。それはまるで20歳と50歳の膝の違いみたいな……。うわー!知りたくなかったよ!足周りに手を入れるならスプリングとダンパー前後同時にが理想なのは言うまでもない。だが「車高、ちょっと落としちゃう?」的なヨコシマな気持ちが混じってくると、無限に広がる大宇宙……じゃなくて部品選択の可能性を前にして途方に暮れてしまう。もちろん財布の都合もある。「も」じゃねーよ!財布の都合「しか」ねーよ!ということで、足周りのヘタりについては気が付かなかったことにしようと決心するもうすぐ納車から1年の夏。

試乗の後は紋次郎さんと定義山は門前喫茶Norahを訪店。自家製スープセットで昼ごはんをキメて音楽談義。あ、クルマの話もしましたけど。紋次郎さんありがとうございました。

6件のコメント

  • こちらこそ
    ありがとうございました。
    とても楽しいあっという間の時間でした。
    .
    自分の990sも足回りに関して色々悩むところですが、車検まではノーマルを満喫する事にしました。たぶん

    • ホント、あっという間でしたね。大変楽しゅうございました。ありがとうございます。990Sは足周りにひと技かけているので、手を入れるにしてもどのように/どこまでが難しいと思います。もしご見解のとおりだとして、7Jホイールに対してタイヤ幅を揃えるだけでも少なくない変化があると思われるので、機械や部品に手を入れる前にタイヤという消耗品から手を付けてみるってのもひとつの手かもしれませんね。
        
      紋次郎さんの悩みのポイントがどこなのかってことにも拠りますが……。

  • 鈍感だから自信はないけど、acatsukiさんのNDの足がへたってるとは思わなかったけどなぁ。確かに990Sとはかなり違う。それこそそここそがキャラの違いなのでは??
    先日紋次郎さんの990Sに乗せていただいた時(ありがとうございました!)、新緑の木の葉のような爽やかなひらひらさを感じました。古武術の受け流しみたいな。んじゃ、acatsukiさんのは?っていわれると言語化できない(笑)

    ま、手と金をかければ変わりますよね。「こうなりたい」っていう明確な目標があればやるのもいいですが、曖昧に始めると迷走しちゃいそう。沼に陥らないように気を付けて~

    • えっ??なにそれ??呪い??「曖昧に始めると迷走しちゃいそう」……??ぐはっ!!
        
      一応理路はあるんですよ、オレの中には。もちろん工学知識ほぼゼロのおっさんの妄想という可能性は高いですが、「今自分はこう感じる」「ということはあそこがあーだからじゃないか?」「となれば、あそこをあーすれば改善するのでは?」ってレベルではありますが、夢想してたって改善はしないし、経験値を積むと思えばまぁ。
        
      んでも990Sの動きが「新緑の木の葉のような爽やかなひらひらさ」「古武術の受け流し」は文学ですわー。オレもそう思います。対してMY2015、走行距離数6万超えのオレの個体は(KPCの有無を除いても)やっぱりちょっと、初期反応に鈍さみたいなのを感じるんですよねぇ。ヘタりじゃなければそれはそれで目出度いけど。

  • あくまで助手席での印象ですが、私もacatsuki様のND5RCの脚回りにヘタリみたいなものは感じなかったですね。ただし履き替え直後に二人して「ビバ!ビバンダム!」などとはしゃいでた精神状態なので何とも言えないですが(笑)。
    よく言われるインチアップの弊害として、直進性の悪化や車輪のバタつきなどがありますが、その原因のほとんどはサス系とボディの能力不足と劣化にあるとみて間違いないと思います。サス系とボディに十分な能力があれば、車輪重の増加による「マスダンパー効果」で、まさしくacatsuki様のおっしゃるように車格が上がったような/どっしりとした乗り味に変化するはずです。反応が鈍くなる、というよりは穏やかになると表現したほうがいいかもしれません。当たりの柔らかさや静粛性はタイヤ性能に依存する部分が大きいと思いますが、総合的な車体の動きはダンパー性能が支配的と言えます(タイヤそのものにはダンパー効果はほとんど無い)。RFと124spiderは17インチが標準ですし、少なくとも現時点ではND5RCの車体性能は十分ではないかと考えます。ハブリングも効いているでしょう(疑問に思ってはいましたが、これはとても勉強になりました!)。

    先日のタイヤ交換時に一つ気になった事なのですが、ND5RCの指定タイヤ空気圧が結構低めだと感じました。
    純正(195/50R16) LI:84 200kPa(前後とも) 負荷能力:450kg (JATMA)
     ↓
    交換(205/45R17) LI:88XL 220kPa(前後とも) 負荷能力:450kg (ETRTO XL)
    ※後輪駆動だけど4輪ともタイヤサイズが同じなのはロードスターの大きな美点
    軽量な車体と前後重量配分に優れるFRなのでこの設定は当然なのだと思いますが、若干空気圧を上げてみてはいかがでしょうか(10kPa~20kPa)?もしくは(220kPaを下回らないようにですが)前後で空気圧を変えてみるとか・・・単なる推測ですが、純正指定は乗り味評価の最後にタイヤ空気圧で妥協点を探ったような印象を受けました。

    ホントに人それぞれですが、私はハイスピードツアラー的な乗り味が非常に好みなので、acatsuki様の感じたND5RCの変化は好意的に受け止めています。タイヤ幅も少し増えたので、特に高負荷の高速コーナーみたいな場面でより楽しめるかなと思います。でも世界のミシュラン、ワインディングスペシャル的な需要も相応以上に対応してくれるはず。そして(オープンカー乗りにはかなり矛盾がありますが)雨の日もぜひお楽しみいただきたいです。
    長々と大変失礼いたしました。

    ※注 私は今回のタイヤ交換案件の取引相手ですので、acatsuki様を「交換して良かった、これがオレの求めていたものだ!」というマインドへ誘導する義務があります(笑)。著しく客観性に欠ける言説であるという点はご了承いただきたいです。

  • 調伏のロングコメント(笑)、ありがとうございます。いやはや勉強になります。普段言語化しないだけで私も「ハイスピードツアラー」が身体に合っていると思っています。なので今のままでも充分気持ち良いですが、慣れてくればきっと「落ち着きすぎ!」と思い始めるはずなので、その際は空気圧をもう少し上げる、ナイス対処ではないかと。純正の空気圧がA.Sudさんご指摘のとおり「低めなんじゃね?」だとしたら、990SのホイールJ数値よりもタイヤ幅がやや狭く接地面積が小さめのデフォルト状態を、補完するひとつの手立てなのかもしれませんね。
      
    いよいよ今週末は仙台は雨降りのようですから、ウェット性能もチェックできると思います。遠くには行かないと思いますが。

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