【報告】退役・老母のトヨタ パッソ
老母の足となっていたトヨタ パッソが退役した。未確認ながら2004年か05年式KGC10系のもっとも簡素なモデルであろう。あろうというのは車検証を確認し忘れたからである。それくらい筆者にとってもどうでも良い商品であった。2023年6月下旬に車検が切れるのを機に退役となった。
今年82歳になる母が運転を続けることに筆者は反対だった。今回その話を持ち出したのではなく、もう5-6年その話を繰り返してきた。そもそも母は運転が達者なわけではない。もはや近隣の「いつもの決まった場所」にしか運転していくことができない。出歩かないから道路知識もアップデートされず、従っていつもの場所にしか行けないという負のスパイラル。加えて反射神経や視力の衰えなども加わり、いつぞやはR4からのかなり道幅の広い幹線道路を逆行して捕まった。母にとって片側4車線の道路など存在自体が信じられない上に走り方もわからないのだろう。夕暮れ薄暮の時間帯だったとは言えこれでは他者に致命的な迷惑をかけてしまう。頼むから運転をやめてくれと言い言いしてきた。
一方で障害者の息子(筆者の弟)の世話を自身に課せられた使命と思い込んでいる母としては、自動車運転は必須のスキルであった。また自己承認意識の低い母が自信を持って出来る数少ないことのひとつが自動車の運転でもあった。早い話が自動車運転は母にとってプライドでもあったのだ。
そんな母がパッソを手放したのは車検整備費用が思わぬ高額になったからだ。めっちゃ聞いたことがある事例である。普段整備を任せているトヨタディーラーに見積りを頼んだところ、驚きの55万円という結果に。がさつな母はあちこちぶつけたり擦ったりしたボディには補修等を施しておらず(念のため書くがぶつけたり擦ったりしたのは我が家の駐車スペース内の話で他者は関わっていない)、詳細はわからないが「ここを補修しないと車検通りません」という箇所があったそうだ。またブレーキ周りにも大掛かりなアセンブリ交換案件があったらしい。走行距離数はともかく約20年オチの国産最底辺車種である。トヨタも阿漕な商売をしているわけではないだろう。50万円で購入した中古車の車検整備に55万円をかけるのは一般的に考えて愚かである。母もそう思った。加えて車検満了の1週間くらい前に、母は右膝を傷めてしまった。玄関先でちょっと捻ったら激痛が起こり膝を曲げられないという。その治療でやれ通院だやれMRIだとてんやわんやしている内に満了日を迎えたのだ。
正直な話、ディーラーでなく市井のファクトリーに預けて車検を通過できる最低限のことだけやってくれないかと頼めばもっと安くすることはできたかもしれない。あるいは次の2年間だけで乗り捨てても後悔しないような激安中古車を購入して騙し騙し乗るという手もあったかもしれない。母は最後までその可能性のことも口にしていた。筆者がパッソ後継車種選定を一手に引き受けるという選択肢もあっただろう。母も内心それを期待していたのかもしれない。だがもう無理なのだ。現実の道路事情にはほぼ対応できていないし、緊急回避能力だって当てにならない。そもそも自動車に乗って知らない場所に行くことができないのは、筆者基準でそれは運転できているとは言わない。ここ数回の認知機能検査ではウェブで公開されている検査問題を直前に必死で丸暗記して望んでいた。それで免許証は更新できるかもしれないが運転スキルとはまた異なる次元の話。あれこれ運転人生の延命策を口にする母を前に、筆者は敢えて黙っていた。これは親不孝なのだろうか。
そもそもなぜ母がトヨタ車に乗っていたかというと、一番故障が少なくて安心だからという理由だった。クルマが前に進む、曲がる、止まるそれぞれの原理を一片も理解しようとしないから整備の勘所もまったくわからない。出先でクルマが動かなくなることは母にとって恐怖そのものだった。そういう人間が車検通過のための最低限だの激安中古車だのに手を出してはいけない。これが友人知人であれば筆者も口をきいたかもしれないが、82歳のおばあちゃんである。運転やめろというのがまともな神経をもった人間というものだ。パッソを買い取ってくれるというトヨタディーラー某店まで最後の運転をし、同行した筆者のクルマに乗って帰宅した母は酷く落ち込んでいた。「43年運転してきた」と自らを褒めるようにつぶやいた。気の毒だとは思うが「下校途中の小学生の列に高齢者運転の乗用車が突っ込む」なんてニュースが現実になる前に運転を止めたことの方が重要だ。筆者としては自らの来し方行く末を見るようでもある。
母は運転免許を返納するわけではない。今から一念発起して新しいクルマを購入する可能性もゼロではないが、筆者が全力で止めることになる。だから母の今後の移動手段はタクシーになる。近隣に営業所のあるタクシー会社に利用内容を伝え、月間あるいは年間契約のように支払いを簡略化できないか問い合わせてみたのだが、個人では都度発注・支払いという利用方法しかないらしい。現実には筆者が足替わりになることもあるだろう。膝の治療だってまだ目処が立たない。これがいわゆる「潮時」というヤツだ。年齢を重ねると生活の変化への対応が難しくなる。その一例を筆者家族は今体感しているところだ。
高齢者の運転ってホント難しい問題だわ。「運転しないでくれ」としか言いようがないけど、じゃあ実際問題どうやって移動しろっていうのよ、だよね。足腰も弱れば荷物だって持てない。都会にいればタクシーもつかえるけど、その費用はどこからねん出されるのか。そもそも移動手段の限られている地域だともっと難しい。
うちの母も免許を取ったのが39歳で、最初からまさに知っているところ以外は絶対に行かない、でした。コンビニすら寄らない。そんなんなのになぜ免許を取ったのか、「40歳になる前に何かしたかった」ですって。さしたる需要もなく免許を取ったから、免許返納制度ができたら速攻返納してた。10年くらいしか乗らなかったんじゃないかな。
ともあれ。おかあさま、実質、もうクルマの運転はされない状態になって周りは安心だけれど、ご自身はさぞかし気落ちされていると思います。運転していなくてもこれまで通りがんばってるね!とぜひ認めて差し上げてください。運転はおかあさまのアイデンティティに影響ないことをぜひ積極的に示して差し上げて。
勝手な外野からのつぶやきです。
これって母親と息子の関係性にも多いに依存するので誰にでも当てはまる解決策ってないと思うんです。「ウチではこう伝えた」みたいに「ウチでは」が前提。だからかなり赤裸々に家族の内情を書いたつもりです。で、その上で「運転していなくてもこれまで通りがんばってるね!とぜひ認めて差し上げてください。運転はおかあさまのアイデンティティに影響ないことをぜひ積極的に示して差し上げて。」は胸に迫ります。こういうのが自分も母親も苦手で。どうしても正論を高圧的に口にしてしまうんですな、自分は。向こうも愉快じゃないですよねぇ。
我が家ではこれまでガソリン代金として1万円/月を負担する替りに任意保険代は本人が負担してました。実際に月間走行距離数は大した事はないので、タクシー利用代金はそのままガソリン代金を流用し、保険代はかからなくなるので、むしろ費用は浮くんじゃないかと試算しております。ただ折り悪く母親の右膝不調治療と治癒後の生活がどうなるか不透明なので、費用については暗中模索というのが正しいのかな。
日々免許を返納された方と接する機会があり話をさせてもらってますがやはり1番は家族からの要請、説得が多いようですね。
P姐さんの言われるように地域により移動手段の必要性が違うでしょうから難しい問題ですね。うちの両親はもともと運転はしませんが自転車乗ることや歩道を渡る時でも横着しないで横断歩道にいくように言い聞かせてます。
いろいろと運動させたり脳に刺激をあたえることをさせてみたりと知らず知らずに口うるさくなってしまってます。
そうそう、高齢者に限らず歩行者や自転車乗りのマナー問題ってのもありますよね。それこそ地域性にも大きく左右されると思います。親だからこそ口うるさく言ってしまう現実ももちろんあるので、なかなか難しい……。家人には「自分の親にはイライラして当然」と慰められました。とほほ。
我が家が近未来全く同様のケースに直面します。ど田舎なので車は必須、母は70代、身体能力はまだ大丈夫だが運転はやや拙い状況です。以前は207がお気に入りでしたが、今は先代ジムニー(私の弟の車。仕事で秋田に赴任したときに必要に迫られ購入)がお気に入りです。母曰く「どっちも運転し易いけど、207の大きさが億劫。あと視点が高いのが楽。」とのことでした。この経緯から自分なりに考えたのは「加齢により手の内に収まるマスは小さくなる。」、「結局しっかり走るクルマがシニアにとって安全。」です。自身も少しずつ感じていることなのであながち間違いではないと思います。a様の母上が運転しなくなるのは残念ですが、シニアやエントリー層をターゲットにすると、近くに行くことしか考えていないクルマに偏り、運転が楽しい、もっといろんなところに行きたい、と思うクルマ作りを疎かにした日本のメーカーの責任は大きいと思います。
実は「運転初心者や高齢者こそ運転しやすい良質な乗用車に乗るべき」というテーマでエントリーを書いてみようとずぅっと思っていたんです。きっかけは整備代車の206や207に数日乗ってみた経験からなのですが、ジムニーね!納得です。あと偏見と言われようが何と言われようが、初心者と高齢者こそマニュアルトランスミッション車を運転すべきです。減速時にクリープによる「意図しない前進する力」が働いているAT、CVT車は減速ー停止時に無意識の内に必要以上に神経を使っていると思います。要はブレーキコントロールが難しい。もちろん軽自動車やリッターカーの加速動作もAペダルを踏んでからシフトダウンしてビーッと不快な音でエンジンが回るからそっちも神経を苛みますし。少なくとも加速と減速だけを取り上げてもMTの方が操作と結果の関係がすっきりする。その上そういう日本の実用車は、じゃあ旋回動作はきれいでやりやすいのかと言われると決してそういうわけでもないですし。つまり一見コンパクトでオートマで運転しやすいと思わせておいて、実は加速・旋回・停止のすべての要素で運転手の生理にそぐわないのが日本の小型車。視力や身体能力が徐々に落ちている高齢者が運転するには相応しくありません。もちろん初心者もベテランも。『近くに行くことしか考えていないクルマに偏り、運転が楽しい、もっといろんなところに行きたい、と思うクルマ作りを疎かにした日本のメーカーの責任は大きい』、まさにおっしゃるとおりです。
今週は意外な所でバッタリお会いし、一瞬どなたか分からずの状態になってしまい、大変失礼いたしました。パッソは5月に代車で運転する機会があり、そのブレーキ性能のあまりにもの低レベルさ加減に、acatsuki様の話が誇張では無いことを実感しました。そんなパッソですから、御母堂の年齢や身体面の衰えを考慮すると退役は正解だと思います。なお、ダイハツの名誉のために申し上げますと、今の軽自動車の方が、ちゃんと走りますし、止まれます(曲がれるとは言いませんが…)。
ともあれ、御母堂のこれまで運転してきた矜持もあるとは思いますので、ここはチューリップの「青春の影」を脳内BGMにして(意味不明)、これまでの出来事を振り返りながら、御自身にとって納得いく別れを迎えることを願います。
むしろあの場所で「ほー、白い147……。こんなところにもヘンタイは生息しているんだなぁ。よかよか……。ん??ここで白い147だと??」とあおさんに気付いた自分を褒めてあげたい。
これからエントリーする改造ネタでロードスターが3日半入院した際の代車が11万km走ったスズキ ウィットMRワゴンだったんですが、確実にパッソよりも運転しやすかったです。KGC10系はトヨタの大失敗ネタのひとつだと信じて疑いません。……以下トヨタディスり大会の長文コメントをタイプしてしまいましたが、あおさんへの返信で書くことじゃないんで消しました(笑)。いつかエントリーとして書くかもー。ともあれそうですね、「矜恃」。それは誰もが持っているものですから母のそれを軽視してはいけませんね。かなり自棄っぱちになって挙げたエントリーですが、私のカウンセリングみたいなコメントをたくさんいただけて本当に感謝しております。
こんにちは。今回の内容は私には目前に迫ってくる内容です。お母様の年齢にはあと15年。その頃にはやはり止めるべきなのでしょうね。10歳上の先輩はまだまだ大丈夫なので、自分も気を付ければ(いろいろ努力瀬売れば)いけるかな、と思っていましたが、その6歳上となると途端に変わって来るようですね。あと10年から15年かと思うと、切なくなりますねえ。今の内に車で行きたい所には行っておきたいです。避けては通れない良い話題をありがとうございます。
個人の運転技術に拠るので、80歳過ぎたから必ず免許返納……と限った話ではないとは思います。母の場合はそもそも自動車運転に一切の趣味性はなく、ひたすら生活のためだけに運転していたというだけですからねぇ。その分生活の不自由という対価が発生するわけですが、なんと言っても向上心のないドライバーの事件・事故だけはホント勘弁してくれなので、これで良いと私は思っています。
でも考えますね!自分が最後に乗るクルマはなにか?とか最後にひとりでツーリングに行くならどこか?とか。
あーーー、退役後は私の出番でしたね笑
ご連絡いただければ対応しました。
ちなみに、パッソさんは1000ccエンジンがD社製で1300ccエンジンがT社製だったか、逆かもしれません。
エンジンマウント、ショックのアッパーマウント、ギアボックスあたりが定番で痛みますね。
いいわけじゃないのですが、Hさんに連絡……とまず思ったんですよ。でも営業日数があと10日くらいというタイミングだったので、今さら引き取りとか売買のお話を持って行くのもクローズ作業に追われているであろうHさんの負担になるかなぁといらぬ遠慮をしてしまったのでした。
あのパッソの1LモデルはエンジンがどうこうよりもECUのチューニングがザ・トヨタなので、初めて運転した時は驚くとともにマジでトヨタを信じちゃいけない、結果だけを見ろ!と思いました。