【報告】得るものと失うもの・第一次ロードスター改造を実施
当スタジオのND5RCロードスターの第一次改造が完了した。旋回初期動作の精確化、制動能力初期応答性の向上が主な目的。その他不具合箇所の修繕、ステアリングハンドルの交換を行い、タイミングが良かったので12ヶ月点検も併せて実施した。盛りだくさんだったのである。仙台市泉区ファン・ファクトリーさんにて施工。総走行距離数61,186km。
1:床下メンバーブレース取り付け
メンバーブレースセット
Auto Axe MND4700 68,000円
2:ブレーキホース交換
ブレーキホースライン
Auto Axe MND5400 37,000円
3:ブレーキパッド交換
ブレーキパッド(フロント) Weds M292 11,000円
ブレーキパッド(リア) Weds M612 9,500円
4:ベルトラインモール/ガラスガイドモール交換
ベルトラインモールL/R マツダ純正部品 3,900円(@1,950)
ガラスガイドモールL/R マツダ純正部品 11,490円(@5,745)
5:スポーツステアリングホイール交換
Auto Axe MNZ1370-03 45,000円
6:法定12ヶ月点検(点検整備料のみ) 10,000円
パーツ代金小計 187,390円
以上の技術料小計 54,750円
消費税 24,091円
合計:265,000円(値引きあり)
結論から先に書こう。概ね狙ったとおりの結果となった。ステアリングは遅滞なくスッと舵角が付くようになったしブレーキタッチも速くなった。
ブレーキタッチが速くなったとは言え、狙ったほどでもないというのも正直なところ。もうちょっとガツンと効いてくれても嬉しかったが、応答性は間違いなく上がった。ステンレスメッシュホースは実物を見たら意外なほど細く(人さし指くらいだと思っていたら小指よりも細かった)成果に不安を覚える見た目。加えてKさんが「ウェッズのパッドは純正に比べると少し柔らかいかも」と印象を語ってくださったのでますます不安になったが、出来上がりはこうあれかしの8割が実現されていると評して良い。一番期待の大きかった改造なのでこっちも勝手に盛り上がっていた面はある。理想はアバルト プントエヴォの鬼サーボガツンタッチなのだが、多分それが実現したら「OH!やり過ぎ!」と嘆くことにもなるのだろう。少し乗ってみて様子をみたい。
床下メンバーブレース取り付けによるボディ剛性かさ上げが狙う「旋回初期動作の精確化」。これはつまりハンドル中立位置から10-20mmくらいの微舵域の応答性向上を狙ったもの。これは狙ったとおりのドンピシャ具合に。オーナーがシビアに改造前後を比較しないとわからない程度の向上とは言え、筆者にとって明確に気持ち良い微舵操作が実現した。
むしろメンバーブレース装着によって後輪駆動力の路面伝達時ロスが明確に減ったことの方が歓びは大きい。めっちゃ蹴り足が強くなった。搭載しているドライブレコーダーのGセンサーが旋回時にいつもよりも強くGがかかっていることを教えてくれる。微舵域応答性向上や蹴り足が明確に強くなる副作用を体感するにつけ、純正状態のND5RCは相当ボディが撓っていたのだと思わずにいられない。
蹴り足が強くなったという現象だけに注目すれば、990Sのキネティック・ポスチャー・コントロール機能を連想するし、コーナーからの脱出が速くなるという結果は同じと言うこともできる。が、結果に至る原因と過程は異なる。KPCはダンパーの電子制御でありダンパー制御の前/後に明確に段が付く。メンバーブレース装着はパーツ間の遊びを引き締めることで実現するボディ剛性向上による効果。後者の方が旋回動作推移は自然であるがどちらが良いかは運転手の好みだろう。電子制御無しの自然な動作推移でKPC同じような効果を得られたことは筆者にとっては「棚からボタモチ」だが、そもそもメンバーブレースの本来の効果はこっちだろう。ハンドル操作の初期応答性向上はお駄賃なのかもしれない。同じオートエグゼから「メンバーブレースとのセット装着を推奨」とアピールされるストラットタワーバーやフロアクロスバーを装着した方が応答性は劇的に向上すると思う。
純正状態へのドーピングには光と影が必ずある。ボディ剛性を引き締めたことで路面からの入力がやや強くなった。明確にわかるレベルだがイヤな共振などはなくカラリと収束するのは不幸中の幸い。これは先般行った17インチホイールとタイヤへのインチアップ効果(A.Sudさん曰くマスダンパー効果)も良い方に働いているはずだ。予想していなかったこのような変化を体感すると、ようやく俯瞰して今回の改造を総括できるような気がする。制動や旋回操作初期応答性の向上という「点」でそれぞれをブラッシュアップすることには成功したが、その結果ND5RCの超初期ロットが持っていた良い意味での緩さの何割かが失われた。製造から8年を経て未だ純正状態を維持していた当スタジオのNDにかつて試乗した人たちは試乗後一様に「いやー、いいわ!いいね、これ。これで充分」という意味のことを異口同音に伝えてくれた。そのいいねの正体はおそらくオープンカーならではのボディの緩さに起因する各入力の素晴らしい抜け具合だと想像する。硬いパーツ同士がギシギシと動くのではなく、パーツそのものとその構造体が当然の帰結としてユルユルと動くND特有のボディ剛性按分は、結果的に運転手をリラックスさせていたのだ。今回の改造ではその何割かを捨てることになった。後悔はしていないしその気になれば純正状態に戻せるので悲嘆もしていないが、あぁそうだよなぁ、やってみなきゃわからなかったなぁという思いはある。旋回と制動の初期応答性向上とリラックスドライビングを天秤にかければ、筆者は前者を取る。ザッツオール。そういうことだ。ま、言うほど硬くなったわけでもない(笑)。
その他の項目についても報告する。「ベルトラインモール/ガラスガイドモール交換」とは左右ドアの三角ガラス(ドアミラーの付け根付近)に立っているガラスガイドモールが、ドア部分との交差点に雨水が溜まってしまい錆びる案件。当スタジオの個体購入時にすでに右ドア側に錆が発生していた。これは「NDあるある」らしい。ディーラーに真っ正面から問い合わせたらリコール対象ではないという。で、とにかく工賃が高い。ネットを彷徨うと対策品と無料で交換してもらったという声もあり、ディーラー某店の見解と異なるのでモヤモヤする。今回調べてもらったところ部品番号も変わっているようだ。以上の状況証拠から初期不良であることを確信し、今回の改造施工に併せて左右とも交換した。もっとも現物と錆びの浮いた前任パーツを見比べてもどこがどう対策されたのかナゾ。撥水スプレーを塗布するなどオーナーの自己努力が必要かもしれない。
ハンドルの交換は完全に趣味の領域。純正は革で覆われているもののディンプル加工などがなくつるんとしており、ワインディングで右に左に忙しく動かす前提のものなのにこれはねーよなー、ドライビンググローブ買えってかと思っていた。MOMOとかSparcoとかハード指向の製品も検討はしたが、筆者の運転スキルでハンドルエアバッグをキャンセルするのは命の危険があると考え、エアバッグやスイッチ類をトレードインできるという理由でオートエグゼを選択。このスポーツステアリングホイールのインプレッションは別にエントリーしようと思う。
最後に12ヶ月点検。異常も消耗品のヘタレもなく点検料のみ。しかもファン・ファクトリーさんは12ヶ月点検にエンジンオイル交換が含まれているとのことで、これも助かる。前回のオイル交換時に「きっと部品が全部揃う頃には3,000kmくらい走ってると思うのでちょうど良い」と話していた。ミッションオイルは相変わらず未交換だが施工後のシフトノブの動きやギアの噛み具合に不備はなく、次回5,000km後のエンジンオイル交換まで様子を見ようと思う。
以上である。大前提としてND5RC(MY2015)の純正状態は自動車挙動三要素、いわゆる「走る・曲がる・止まる」はきれいにまとまっていると筆者は考える。動き出しの微速域からおおよそ80km/hまでの範囲でバランス良く運転できる。言い換えれば運転に没頭できる。実は今回の改造プランに加えローダウンスプリング装着も筆者は目論んでいた。だがKさんがそれを止めた。この手のクルマの車高調整(主に車検対策)はシビアに考えた方が良い、と。乗り味云々の前に車検のたびに純正スプリングと交換する羽目になる。そのうえ今の乗り心地は維持できない。今回の改造プランだけでもいろいろ印象は変わるだろう。一度に全部やると予想と違う結果だった場合の原因特定が複雑になると諭してくださった。今ならよーーーっくわかる。これでローダウンなんかやった日にはメチャクチャになったかもしれない。インチアップによる印象の好転もあり曉スタジオND5RCはピリリと山椒の効いた1台になった。なんの捻りもないお馴染のエンディングで締めくくろう。
大勝利であります!!
こんにちは。大枚はたいての結果が、ドンピシャで良かったですね。特に床下のメンバーブレースのくだりが良かったです。やはり自分が求めているのは何かをはっきりさせておかないと、手を入れても思うようにいかないという事ですね。緩めには緩めの、かっちりにはかっちりの目指すものがあるという事を再確認しました。別な言い方をすれば、塩梅を取るという事でしょうか。自分の愛車への愛情が深まりますね。
メンバーブレースは格好いいから赤く塗られているのですよね?憧れます。凄い存在感!
そうです!塩梅を自分で設定できていないと右往左往することになると思いました(お金もかかるし)。今回はちゃんと相談できる人に相談もでき、そのことも大きいです。こればかりは実例を知っている人じゃないと的確なアドバイスも難しいですし。メンバーブレース、床下だからさっぱり見えなくて残念(笑)!タワーバーとかならボンネット開ければ見られるんですけどね。今のところボディ剛性は求めるものになっているので、追加は当面ないでしょう。
AutoExeにウェッズ!もうゴリゴリのスポーツ系じゃないですか(笑)。ボディとブレーキは下り最速を狙ってんじゃねーかレベルのチューニングですね。まあこれだけやると得るもの失うものはあって当然かと(だから面白い!)。MAZDAが狙っているわけでは無いと思いますが、ある程度リラックスして運転できて、チューニングの余白を残した状態でロールアウトしてユーザーフレンドリーに門戸を広げ、後はユーザーの好みで好きにしてね、という好循環がロードスターには続いている感じがします(NCはMAZDAの理想ゴリ押し(笑)をやや感じましたが)。それにしてもステアリングが佳き!
確かに下ってる最中の制御はやりやすくなりました。ブレが無い分スッとラインを決めて行けるし修正も容易だったなぁ。でもマツダがロードスターに対して「このくらいにしておいて、あとはみなさんお好きに」というスタンスは珍しいものじゃないけど、その見切り具合がとても良いと思います。これでマツダスピードとかオートエグゼとか阿漕な値段でオプションばんばん販売してたらTやHと同じ穴の狢ですが、その辺があまり上手じゃないのも好感が持てますね(笑)。
当スタジオの2台のロードスター(NCとND)を試乗した唯一の人・じゅんすかさんが「NCはMAZDAの理想ゴリ押し」ってのはどういう部分なのか興味があります。NA、MBもオレ知らないしなぁ。ちなみにステアリングは装着二日目にして疑問符が付き始めました(笑)。
上手く表現出来ないんですが、むかし乗ってたFDとかなり共通項が多いです。変態的に前後重量配分と軽量化に拘り、ハンドリングもシャープさを執拗に追求する、理想というより「いやスポーツカーってこうですから!これが正しいですから!」という意地とプライドを前面に押し出してきてるなあ、とひしひしと感じました。乱暴に言うとNC+重量150㌔+100馬力+トルク15㌔≒FDです(異論は認めますw)。
じゅんすかさん、FDにも乗っていたんだ!じゃあ今の保有状況は至極当然の成り行き……ですよね!
マツダ規模の自動車会社がよそとの差別化を図ろうとしたら、徹底的に無個性の道具になりきるか理想論をぶちかまして啓蒙者的に振る舞うしかないのでしょうね。うーん。なるほど。ロータリーエンジンといい「人馬一体」スローガンといい後者に寄せることで生き残ろうとしてきたわけか……。だとしたらNDは確かに(マツダ車の中では)抑制が効いてる方かもしれません。それにNAから連綿と乗り継ぐ(あるいは乗り続ける)やんちゃな大人だけを相手に商売していてはいずれ立ち行かなくなりますもんね。
昨年2022年5月のオフ会でプントエヴォの次、オレは何に乗るべきかとネタにしてみたのですが、FDとかSE=今こそロータリーエンジン車に乗るっていう話も出たんですよね。あまりにメンテ費用が高過ぎるから止めておいた方がいいってヘンタイのみなさんが言うので止めました(笑)。
改造のお値段がうちのNC弄りとほとんど同じなのも、蹴り足が強くなったのも同じ。おもしろいねぇ。
メンバー、あたりでよかった!締まりすぎてつまらなくなったり、ほかの緩さが気になったり、なんてこともあるかとちょっと心配してた。よかったよかった。やっぱタイヤ&ホイールもいい方向に作用している気がする。うらやましい。やっぱ筑波で広場練習、やろうよ。
ところで、ブレーキパッド単価、安いよねぇ。ありがたい。
姐さんのブログに蹴り足云々はわからないけど……と書いた直後に改造NDが納車されて「おおぉ!これかぁ!」と喜んでおりました。タワーバーなどさらに組めばもっと機敏なステアリング反応になるだろうことはわかるのですが、それが幸せかどうかわからないし、さらにボディが硬くなるとロードスターに乗っている意味が自分の中で希薄になってしまいそうで(笑)。とにかく今回はちょうど良い絶妙な結果になって良かったです。
筑波に行くかどうかはアレとしても、蹴り足がググッと効く様を体感するにつけ、横滑り防止装置のキャンセルボタンを押したくなってしまいます(笑)。せっかくのミシュランをすり減らしたくないし(どんだけ貧乏根性なのか!)、グッと我慢しています。