直進が気持ち良過ぎるという葛藤
エンジンオイルを交換して、ゴキゲンでチェックしていたら由無し事が頭の中にモヤモヤと漂い始めた。今の曉号は絶好調で筆者にとってぴったりの個体になっている。だがモヤモヤするのだ。
きっかけはやはりメンバーブレースや社外品ハンドルの装着、ブレーキライン(アルミメッシュホース)の交換というごくマイナーな改造を施したからである。改造を施す多くのオーナーと同じく、筆者も「理想のND5RCへ近づける作業」と位置づけて資金を投入したわけだが、この「理想のND5RC」とは何か?という根源的な問いがモヤモヤと漂うのだ。
まずマツダがこうあれかしと設定調律した「純正状態」というものがある。ここがスタートでありマツダはこれを「理想のND5RC」としているはず。実際は原価設定や政治的しがらみなど様々な裏事情はあったとしても、エンドユーザーとしてはここを起点としないと話が始まらない。で、エンドユーザーのほとんどは手を入れる。自らが考える「理想のND5RC」に近づけるために。
改めて筆者がND5RCの導入を決めた理由は「旋回教習車がほしい」と思ったからだ。それだけが全てではないが、何割かはそれが理由だ。不遜ながらFFハッチバックの旋回動作組み立ては、アルファロメオ MiTo、アバルト プントエヴォに合わせて11年以上乗り、もう理解した。NDは純スポーツカーでFRで2シーター、旋回動作を理解するのにこれほどうってつけの車種もない。
かと言って筆者はサーキット、クローズドコースにクルマを持ち込んでギャンギャン走らせるという経験もない。公道を走っていてもFFとFRというレイアウトの違いからくる旋回動作組み立ての違いは充分理解できるが、理解した上でクルマの限界挙動を確かめてみようとはしない(してみたいとは思っている)。でも、しかし、筆者にとってやはりND5RCというクルマはヨー運動や前後荷重移動やロールなどの感知能力を磨くための教科書なのである。言行の不一致と言われようとこれは筆者の頭の中の話であり、動かし難い。あれこれと論理の綻びはあるとは思うが、筆者にとって「理想のND5RC」とは旋回教習車なのだ。
そんな旋回マシーンとして導入したND5RCに、2023年7月にメンバーブレースその他を追加装着した。その結果ボディ剛性は上がり、旋回の初期動作の感知における緻密さが向上し駆動力ロスが減った。旋回動作の解像度は上がり、後輪の蹴り足が強くなったのである。これは大成功と言える。一方でボディ剛性が上がったことで直進もより一層盤石になった。これはボディ剛性だけでなく、17インチに格上げしたホイールとミシュラン パイロットスーパースポーツ205/45/R17という足周りもまた大きく影響しているとは思うが、これらはほぼ同時に施工したので筆者の中では直進安定性向上は同時発現と認識している。加えて気まぐれで装着してみたAuto Exeのステアリングホイール、握り径が純正比太く、握っての、また走らせての印象は「どっしり系」である。握り径がわずかに太くなっただけで、運転手が得る印象はずいぶん変わるものだ。一方でステアリングをひらひら回す……という感触からは遠ざかった。それらが一体となって「直進安定のツアラー」という印象に曉号を上書きしている。
つまり旋回教習車の直進がこんなに気持ち良くていいのか?という葛藤である。実際何か不都合があるか?いや、ない。日々の生活と折々の遠乗りを気持ち良くこなせれば、筆者の主力戦闘機としての性能は満たされる。あまりの快適さに安易な車高ダウンなど興味が失せた。やってみたくはあるが毎日が苦行になることが目に見えている。まぁリアだけはもう少しトレッドを広げても(見た目的に)良いとは思うが、それすら旋回動作に少なくない影響があるように思えて積極的になれない。
そもそも直進が気持ち良くなければ旋回が気持ち良いわけないという見方もあるだろう。一度でもクローズドでタイムを計ってみるような走りを1日してみれば、すっきりするのかもしれない。。「あぁ、やっぱり旋回教習車だった。良かった。もっと腕を磨こう」というオチになることを願っている。
「旋回教習車」!新しい日本語ですね!直進が気持ち良い、良いのではないでしょうか?もしかしたらMAZDAが泣く泣くトレードオフしたものかもしれないし。しかもコーナリングがダルくなっていないのはしてやったりかと。自分は直線又はそれに近いレイアウトの道路をリラックスして走るの好きなので、所謂スタビリティのある車好きです。ミトはコンパクトFFとしては、4CもMRとしては直進のスタビリティある方だと思うので言動の辻褄は合っているかと(汗)…。
旋回教習車、他にもあると思うんですが、日常使いでもストレスないのはNDかなと思ったことは思ったんです。本気の旋回教習車ならNB後期の上程度のものが最終解だと思いますが、2023年の今あの内装クオリティには耐えられん、と(笑)。
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>>もしかしたらMAZDAが泣く泣くトレードオフしたものかもしれない
あー、その発想はなかった!あと足周りの強度とかね(笑)。1t切りが悪い意味で足かせになったという噂はききました。その辺も含めての純正状態の緩さなのかもしれません。でも全体のバランスはあれはあれで納得でした。
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口では旋回教習車が欲しいと言いつつ、じゅんすかさんおっしゃる「スタビリティのある車」を好ましく思ってしまう自分という葛藤と言い換えてもいいかもしれません。そうそう、そっちに全振りしてアメリカンマッスルカーが欲しいって思ってたんだった!曲がるよりもひたすら真っすぐ走り続けて、しかもそれが気持ち良いクルマってことで。結局自分が欲しいものが分かっていないのが原因ですね(笑)。
124にロアアームバーとパフォーマンスバーを入れたとき、やっぱり躯体がしゃきっとして、きっちりリアが付いてきてくれるようになったおかげで走りやすくなったと感じたけど、レッスンでドリフトがしやすくなったとは思わなかったんですよね。車体の状態をより細かく伝えてくれるようになったので、滑り出す感覚はつかみやすくなったけど、ドリフト性能が上がった感はなかったんだよな。
対して、NCにLSD入れて蹴り足が強くなった時には峠を走るのが断然楽しくなった=グリップで旋回させやすくなったと感じたのよ。と同時に、レッスンでドリフトをさせやすくなったし維持もしやすくなったと思った。断然ドリフト性能が上がった。
入れたパーツが違うんだからそりゃ効果も違うんだろうけど、でもどっちも結局のところ「旋回マシーン」としての性能(ドリフトに限らず)が上がったと思った。
何が言いたいかっていうと、正しく好ましい進化なんじゃないかしら、ってことです。直進性能が上がったけれど、旋回性能が落ちたわけじゃない。より直進性の気持ちよさが感じられやすくなった、ってことなんじゃないかしら。ロドの「ひらひらさ」を実現するには違う方向なのかもしれないけど。どこを目指すかに寄りそうですな。
>>正しく好ましい進化なんじゃないかしら
そうそう、そうなんです。もっと旋回をシゴいてみればきっとはっきりする。あとはその姐さん言うところの「滑り出す感覚はつかみやすく」なるけど「ドリフト性能が上がった感はなかった」という点と、NCにLSDでドリフトしやすくなったってのは、確かに入れたパーツが違うから発現するものが違って当然だけど、NCとNDでも微妙に方向性が違いますからねぇ……。
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おっしゃるとおり「おまえは何を目指しているのか」がわかっていない故の納得できなさ=葛藤ってことなんだと思います。大して旋回負荷をかけるわけでもないのに、よくわからない理想の旋回性能を求めてもいつまでたってもわからないままですよね。決して後悔してるわけじゃないんです。今し方仙台・八戸間をE4東北自動車道と八戸自動車道で往復630km走ってきたんですけど(さすがに1泊した)、思ったより疲れませんでした。直進安定性向上の効果だと思います。大歓迎です。
東京近辺では数少ない憩い道である奥多摩周遊道路にて先日P姐さんのNCで走る機会を得ました。個人的な感想ですがFRの理解が少ないのが多分に影響していると思いますがロールが大きくうまく旋回を楽しむことが出来ませんでした。実はこの印象は以前にP姐さん所有の124スパイダーがメンバーブレースを入れる前に乗った時と同じでした。そしてメンバーブレースを装備した124はロールが納まり運転が楽しく多少売値が高くなっても最初から装備しててもいいのではないかと思ったものです。この前、試乗させてもらったNDも同様の楽しさを感じ点と点の試乗感想が最近繋がり始めてる気がします。世代を超えてノーマルに同じ印象を受けて剛性を上げた後のほうが好印象なのは自らの技術が未熟なためなのか、メーカーの送り出したノーマルの調律を上手く走らせるためにはどういう運転をすればいいのかと所有してないので答えが出ないのですが度々悶々と考えてたりします(笑)
きっとプロに訊いたら「ブレースでもLSDでも、入ってりゃ入ってるなりの運転をするし、なけりゃないなり」と言うんでしょうね(笑)。しまの助さんですらロールに手を焼くのか……。でも伺うところを私の経験と紐付けつつ総合すれば、やはりメンバーブレースやタワーバーである程度ボディ剛性を上げてやる方が、結果的に旋回挙動時のロール動作やボディの緩みを矯正できて、速く走ることができるってことだと思います。つまり旋回動作の限界値が上がった分、日常ではその限界値をかいま見ることができなくなり、一方で直進安定性は低速でも実感できるから「直進だけが良くなったように感じちゃう」ってことなのかもしれません。
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なんだ、じゃあ大正解じゃん(笑)。
「直進が気持ちよすぎる葛藤」なのね!う~ん、「直進」に対して個人的にあまり考えてなかった…というより、「旋回性能が高い」=「直進安定性が低い」といった場合が多いので旋回性を求めるあまり直進を楽しむ考えをしなくなってしまった…。ブログを読まさせて頂いてちょっと考えさせられました。
旋回性が損なわれることなく直進が気持ちよいのはマツダのロードスターに対しての造り込みを感じます。
きっとフロントサスだけでなく前後サスのジオメトリー設計が素晴らしいのでは!
性能ではない気持ちよさは数値化出来ないので作り手次第。
国産車においての個人的な感想では、サスについてはマツダが一番だと感じてます。
オイラのたいして多くない経験上ではありますが、今まで乗った車の中でサスの良かった個人的ランキング1位はスポーツカーではないミニバン?の「マツダプレマシー(2代目かな?)」なんです。
トータルバランスの良さに感心を通り越して唸りました!
オイラも自分の車の「直進」について改めてよく考えてみようと思います。
自動車ジャーナリストの森慶太は、新車インプレッション記事で「このクルマは真っすぐ走る。それだけでも大合格」みたいな書き方をすることがあって、逆に言うと直進安定性を蔑ろにしている製品が世の中溢れている……あるいは本当に気持ち良い直進を体現できているクルマは実は少ないってことなんだと解釈しています。私個人としてはハンドル中立から左右10-20mmくらいの微舵領域の解像度が高いクルマは、結果的に中立もどっしりしていて直進が楽という印象があります。1-2世代前のプジョーの208GTiとかのスポーツ寄りのモデルがまさにそれ。同じシャシーでもシトロエンの同クラスモデルはもう少し緩い感じでした。
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でもそういう微舵領域の美味は、なるほどサス周りの設計や調律に拠るってのは確かに大きな要因じゃないかと思います。いやー、サス設計でこんなに違いが出るなんて思いもしなかった。そもそもサス設計、設えについてはほとんど無知なので。で、このエントリーを上げてもまだモヤモヤしつつ、みなさんのコメントを読んで「もしや17インチに格上げしたのが直進どっしりの主要因じゃないか?」と考え始めています。サスの動作許容量は16インチ基準のはずなので。実際16インチの時はもう少し軽快感があったんです。ただメンバーブレース入れる前の話なんで決めつけは早計ですが……。スタッドレスタイヤは16インチに戻そうと思っているので、そこでヒントが得られるかもしれません。まさかスタッドレスタイヤを履かせるのが楽しみになる日が来るとは……(笑)!
妄想が完全に外れてしまったので(爆)、大変コメントしずらいのですが、近年のacatsuki様の高速道路で遠征という使い方を鑑みると、ご自身で仰っているとおり、直進性の向上は正解だったと思います。ただし、タイヤも交換しているので、ヒラヒラ感が薄れてしまったのは仕方が無い(トレードオフ)ですね。
そうそう208ですが、147と乗り比べるとホイールベースや車重、BセグとCセグという違いもあって、個人的には直進性が良くない印象です。Rの大きい高速コーナーの進入ではリーンアングルを固定しにくいため、147の方が安心して飛び込んでいけます。もちろん総合的に速いのは208ですけどね。
確かに高速道路の直進は楽になった印象です。トレードオフ、仕方ないのは頭ではわかっているのですが……。でも冷静に考えれば確かに直進安定性の方が日常生活では運転の安楽さには効きますね。
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あくまで個人的にですが、旋回動作の解像度の高さという意味では208じゃないかと思います。それが気持ち良いかどうかはなんとも言えませんが、147と208GTiの2台持ちって人は圧倒的に少数派。あおさんじゃなきゃ比較できない世界ですね(笑)。
直進安定性・・・M1王者ミルクボーイのつかみで言えば、「こんなんナンボあってもいいですからね!」
一般公道では完全フラットな路面など存在せず不整や荒れがあるのが普通であり、天候による外乱にも常にさらされます。現実世界での高度な直進安定性の実現は決して簡単な事ではなく、タイヤ・サス・ボディが一定水準以上の能力で、かつバランスしていなければなりません。「ただまっすぐ走って気持ちいい」はクルマにとって最高の褒め言葉の一つであり、曉号は高水準の基礎体力を有していると言っていいと思います。
相対的に「ヒラヒラ感」が後退したように感じるのは致し方ないとも思います。しかしこのヒラヒラ感は少しでも行き過ぎれば「不安定・怖い」という印象につながります。その手前の「軽快・コントローラブル」に留めているマツダ純正チューンには大いに敬意を表すべきですね。
あらためてメンバーブレースの形状を見ると、後輪側に質量を割いている印象を受けます。直進安定性=進路安定性には駆動方式にかかわらず後輪のしっかりした位置決め=いかに実際のサス動作を設計通りに近づけるかが要であり、その土台となるのはやはりボディ剛性です。後輪駆動であれば当然蹴り足も強くなります。
こういった性格のクルマは「振り回せる」はずです。ワインディングを「楽しむ」よりも「攻める」方向性・・・ND5RC側から言うとすれば、旋回挙動を教えるというよりは、もうお好きにどうぞって感じですかね(笑)
もちろん快適なスポーツツアラーとしても十分機能するし、軟派な需要にも応えるオールラウンドなミシュランとの組み合わせ・・・大きめの荷物さえ考えなければある意味無敵のクルマですよね、私個人はそう思います(笑)
一度返信コメントを入力したのですが、何かのトラブルで未入力のままになっていたようです。返信が遅れてすみません。
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>>「ただまっすぐ走って気持ちいい」はクルマにとって最高の褒め言葉
いやもう、まったくそのとおりと思います。別に「なんだよこれ、まっすぐ走るじゃねーか、ツマンネ」などと思っているわけではないのです(笑)。思えば私は耳年増、思い込みから自分の愛車の本当の姿を把握するのにひどく回り道ばかりしているなぁと最近つくづく思いました。プントエヴォを迎えた時も「アバルトは基本的に旋回してナンボ」みたいに思い込んでいて「アバルトなのに直進が気持ち良いってどういうこと?」みたいなことを書いてるんですよね、当時。まったく成長しておりません。おそらく私はきれいに旋回して公道で人より速く走ることができる人になりたいんでしょう。
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>>こういった性格のクルマは「振り回せる」はず
結果的にですが、メンバーブレース装着以前に比べてコーナーからの脱出が速くできるようになり、その際に明らかにリアが外に膨らみたがっている感触があるんです。安定一色だったものが「旋回マシーン」の片鱗をチラ見せしてくれているような……。先日小雨の中ワインディングで横滑り防止装置をオフって登ってみたんですが、怖くていつもより踏めませんでした(笑)。昨日で一段落したんですが、9月下旬から10月半ばまで音楽の仕事が続いていて、ロードスターを壊すとか精神的に酷く落ち込むようなトラブルはいかん!と自粛しました。いや、じゃあいつなら良いんだって話ですが、いつでも壊すのはNGですけどね(笑)。
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現状では誤差の範囲ですが、ほんの少しだけ純正から振り回せる方向に逸脱しかけており、本題に戻ればやっぱり直進も安定感が増したわけで、自分にとって非常に良いバランスだと思っています。11月にけっこうな量の機材を持ち運ばねばならないライヴ案件がありまして、すでに家人(とC3)のスケジュールを押えております(笑)。