トーヨー プロクセススポーツ評

久しぶりにプン太郎のパーツ記事が書けて嬉しい。4月に導入したトーヨー プロクセススポーツの印象記を書いてみたい。最初に結論を書くが、プントエヴォにはぴったりのタイヤだ。

トーヨー プロクセススポーツ
215/45/R17 91W 2022年13週製造

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導入報告記事に書いたが、アバルト プントエヴォの正解タイヤはブリヂストン ポテンザRE050、ミシュラン パイロットスポーツ4である。少なくとも筆者の体験ではこの2種を履かせておけば間違いない。ではこれらを「正解」「間違いない」と言いきる根拠は何かというと、「グリップ能力(ドライ/ウェットとも)」「直進性」「静寂性=快適性」の三軸で評価する時、アバルト プントエヴォというクルマのキャラクターにぴったりだからである。プロクセススポーツをその三軸で評価するとどうなるか。

●グリップ能力
大満足だ。基本的に公道上での印象しか書けないが、前記したRE050やPS4とも違った、やや粘る感じのグリップ感。恐らくサイドウォールの撓み具合が、それら2種のタイヤよりも僅かに柔らかいのではないだろうか。それは本当にごく僅かな差で、旋回中の進路制御に何か差が感じられるわけではない。むしろその僅かに感じられる柔らかな撓みが、「もっとアクセルを踏み増しても、きっと粘ってくれるはず」という信頼感につながっている。

旋回中の進路制御と言えば、プロクセススポーツを履かせて以来、旋回がすごく楽になったことにある時気が付いた。進入速度を決めてコーナーに入っていく。イマジナリーラインをそのとおりにプン太郎が進む。修正舵を当てる必要がない。「旋回に入ったら1mmもハンドルを動かしてはいけない」が実現している。楽だし気持ち良い。別にかっ飛ばさなくても運転が楽しい。感覚的な面から書けば、劣悪スタッドレスタイヤから交換直後の印象なので、ややバイアスがかかっている可能性はあるものの、良いタイヤを履いて得られる代表的な恩恵は、旋回軌跡の正確性が担保されることだと改めて噛みしめてしまう。だからおそらく、仮に修正舵を当てる事態が発生しても、同じように楽なはずだ。

上記の印象はウェット路面でも概ね変わらない。グルービング路面での不安定さは僅かに感じる。PS4で唯一落胆したポイントだが、ラジアルタイヤでアシンメトリパターンでは不可避の減少なのかもしれない。プロクセススポーツはPS4ほどはよたらない。

●直進性
履かせてすぐは旋回時のグリップ能力の高さを無邪気に喜んでいたのだが、むしろ瞠目すべきは直進性能だと今なら言える。導入報告記事に直進安定がやや神経質などと書いたが、それは前後4本とも空気圧を2.5barに揃えて走り出したからで、これは阿呆のやることである。その後規定値(前2.3bar、後2.1bar)に落としたら神経質なそぶりは消滅した。規定値に戻して最初に驚いたのはセルフアライメントトルクの強さで、まるで勝手に真っすぐ走ろうとするかのようだった。それに慣れると今度は旋回動作収束から直進に戻ったことを意識していないことに気が付いた。直進にストレスがない、タイヤの存在が透明になる。何かの機能を突出させることよりも、このことはすごいと思う。

●静寂性=快適性
大誤算だったのがこの項目。別途レポートを上梓したが、タイヤノイズに閉口したスタッドレスタイヤ グリップマックス アイスグリップXと同等の音量を記録してしまった。ネット上の評価を見ると決してうるさいタイヤとは書かれておらず、今よりは改善するだろうと楽観してした分がっかりだ。リアからの漏れが大きいので、タイヤノイズの音量や音質も去ることながら、プン太郎の車体側の制音も劣化している疑惑まで湧く始末。とほほ。距離を重ねて一皮むけたか、市街地走行時のノイズは若干大人しくなったが……。音以外の快適性については、前述のサイドウォールの撓みが、アンジュレーションや段差乗り越え時のショックの軽減にも寄与している。ちゃんと路面を掴むが、つっぱりはしないという絶妙なバランス。コンビニ駐車場入口などのブロック段差、あれを乗り越えるのが気持ち良い。撓むと言っても路面情報が滲むようなものではなく、充分ドライでもある。

●総評
現状では大満足。旋回時のグリップ能力にせよ直進安定性にせよ、導入直後に「?」がついたあれこれは、単に評価に適正な速度域ではなかったということが今ならわかる。プロクセススポーツは日本国内なら高速道路くらいの速度域、即ち80-120km/hくらいで実に盤石な性能を示してくれる。ある意味過剰な速度でコーナーに進入しようと、高速道路で追越し車線に入って数台を追い越ししようと、不安どころか「お!むしろこの辺が得意な領域でしたか!」と嬉しくなってしまう。だからブンブン回してグイグイ走るクルマには最適。恐らくオンロードよりも、時々でもサーキットで走る人にこそドンピシャなのではないだろうか。市街地をゆるゆると走るには余剰性能と感じられるかもしれないが、高速域まで含めれば首尾一貫して全方位的に良いタイヤだと言える。筆者は日々このタイヤがどんどん好きになっている。

筆者としては評価軸に値しないが、経済性についても触れておく。導入レポートで書いたように、タイヤ本体(4本)だけなら96,360円。プロクセススポーツが1本あたり2万5千円未満で買えるのはバーゲンである。この価格なら静寂性が劣っていても納得するしかない。というか、これはスポーツタイヤで、ノイズ云々で評価を下げる方が見当違いだ。あとは寿命次第だが、こればかりは距離を乗らないとわからない。

宮城県岩沼工場で作られたというこいつは、真面目に高性能と価格のグッドバランスを追求して、見事にトーヨー独自の解答を提示している。筆者ランキングではPS4 > プロクセススポーツ > RE050。だが価格を考えると決してそのランキングが絶対正義とも思えない。元気に走るためのタイヤ、あるいはいざ元気に走る時にちゃんと信頼できるタイヤ、それもけっこう気軽に買えるタイヤがないか?と探している人、ここにありましたよ。

6件のコメント

  • こんばんは。「修正舵が必要ない」「かっ飛ばさなくても楽しい」これはすごく羨ましいことです。運転にも免許にも優しい訳ですね。加えて直進性も高いとなれば、少しくらいの音には目をつぶれますね。良いタイヤを選ばれてこちらまで幸せな気分になりました。

    • 実は市街地速度ではおいしい領域をすこーし、外れているんです(笑)。第一印象で「よくわからんなぁ」と思ったのは、今思えばそれが原因。早朝に田舎道を走って鳴瀬奥松島ICから三陸自動車道へ乗って、全体像がよーっくわかりました。(日本国内での)高速域で本領を発揮するからこそ、普段の市街地でも余裕余裕!ってなるんだな、と。全体像が分かった上でのツンデレのツン部分は、もう、大肯定です。幸せになれるタイヤでした。

  • 詳細なインプレありがとうございます!ほんとタイヤのキャラが狙い通りなようで楽しく拝見いたしました。個人的には正直トーヨータイヤ過小評価してたので反省してます。大袈裟に言うと「タイヤと手足がリニアに繋がっている」でしょうか?または、余計な演出が無い?

    • 確かに「タイヤと手足がリニアに繋がっている」です。別の言い方をすると「肌と一体になってる」とも言えますかねぇ。例えば走る人にとっての、足裏と一体になったシューズのような。履き始めは探り合いみたいでした。「こう(ハンドルを)切るとどうなる?」「こんな風に加速させたらどうなる?」「旋回途中で切り増したら?強制的に減速したら?」みたいなことを、3領域くらいで試してみて、ようやく分かった!って感じでしたけど。もしかすると、スポーツカーの「このクルマをちゃんと運転したいなら、こう座らないとダメだよ」みたいな、クルマが求めてくる運転姿勢と同じなのかもしれないです。タイヤが「こう走るとオレはなかなか良いぜ」とちゃんと言ってる。こっちに話を聞く態度、余裕があるかどうかも大事だな、と。

  • こんにちは、ご無沙汰してました。

    東洋ゴムっていうと岩沼市民からすると紙屋の大昭和の工場とともに悪臭のイメージしかなかったんですが、BSやMIに比べればお手頃ですし、インプレッションを拝読するとかなり良さそうですね。オートウェイでダヴァンティっていう英国タイヤ(中華製)を9月にMiToに新調したばかりなので次回試そうかな…

    てか29日仙台雪降ってましたけど大丈夫だったんですか?

    • はっはっはっ。やっぱり臭いんですか。いや、笑い事じゃない。ゴムですもんねぇ。単なるひとりのユーザーとしては、国産ってだけでちょっと気分が上がるんですが。あとは寿命がどれくらいか、なのですが、この値段でこの内容なら、MiToユーザーには大推薦です。少し速度を出さないと本領を見せてくれませんが、それがわかれば。
       
      4月29日の雪には参りました。もちろん積もったり凍ったりということはありませんでしたけどね。心理的にもそんなにプレッシャーじゃなかったです。ほら、去年の10月に栗駒山でノーマルタイヤで積雪山道走ってますから(笑)。

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