曉スタジオ的アバルト プントエヴォ総論
実戦配備されたNDロードスター。配備前からあれこれパーツを社外品に取り換える計画を立てていたのは、すでにエントリーでご紹介したとおり。その中にはハンドル交換も含まれていて、ステアリングにはテレスコピック機能がないので、社外品でコーンの深いのを付けてブイブイ言わせるか!と、あれこれ商品検索に勤しんでいた。わざわざ純正から取り換えるわけだから、「良い方向」に変えたい。径を小さめにしてクイックにしてみてはどうか。NDのステアリング交換事例をあれこれ見てみると、350mm径か330mm径のものがほとんどのようだ。あまり極端に小さくしても逆にパワーアシストが効きにくくなって、ハンドルが重くなるとも聞く。ふーむ。350mmが適当かねぇ。
ふと、プン太郎のハンドル径を知らないことに気がついた。みなさんは何mmだと思われるだろうか。実際に計ってみたところ、これが370mmだった。筆者はプン太郎のことを「ハンドリングの良いヤツ」という認識でいたが、ハンドル径はあくまで実用的なサイズで、クルクルひらひらではなく、直進安定優先なのだった。少し意外だったが、心のどこかでは「ああ、やっぱりな」と、メジャーの数値を確認しながら思った。
アルファロメオ MiToからアバルト プントエヴォに乗り換えるということは、同車種内の個体の差し替えに近い。MiToはファイヤーエンジン/RHDで、プン太郎はマルチエアエンジン/LHDという違いはあるものの、シャシーは同じなのだから。一方でモデルイヤー2009年のMiToと2011年のプン太郎とでは、年次改良によるものと思われる変化も小さくない。アルファとアバルトというブランドイメージ戦略に基づくチューニング領域での差異だけでは、ああも印象は変わらないはずだ。明らかに足周りの煮詰め不足でリリースしてしまったMiTo1.4T Sportに比べ、アバルト版のプントエヴォは、リアの挙動が別物と言って良いほど違う。軽薄に浮きたがるMiToの後輪とは違って、アバルト プントエヴォの後輪は旋回中もスリップアングルを慎重に付けてくる。リア優性の色が濃い。どういう種類の旋回であれ、プントエヴォは舵角だけで曲がって行ける。破綻するとしたらオーバースピードの果てのアンダーステアしかない。従って旋回に入るまでに進入速度を決めて、カーブの入口で舵角さえ決めてしまえば、プントエヴォはキレイに想定通りの軌跡で曲がる。まだ余裕があると思ったら、Aペダルを踏み増しても良い。それは別の言い方ではタイヤ依存性が高い旋回能力ということにもなるが、この「進入速度」「舵角」双方の見定めというのは、自動車における旋回挙動のイロハで、これらが意のままにできるようになると曲がることが楽しくて仕方なくなる。
実際こういったロジックを体得したのはプン太郎に出会ってからで、その意味でプントエヴォというクルマは旋回挙動のイロハを学びやすいクルマだと言える。後輪の設えに加えて前荷重の多いFFだから、よほど雑な操作をしない限り破綻する確率も低い。筆者のような「なんとなく曲がれている」初心者にはうってつけのクルマだったのだ。筆者が知る限り、ルノースポールの2車種(トゥインゴRSが無くなっちゃったからね)、シトロエン DS3スポーツシック、おそらくレーシングも、そしてプジョーのGTiモデルは、各ブランドごとの信念や作法の違いはあれど、旋回挙動はプントエヴォ同様、前荷重を活かして盤石なリアを軸にした操作ロジックで旋回挙動を作っているはずだ。※
だがMiToも含めて13年も同じパッケージのクルマに乗ってきた身から言うと、前述のようなFFスポーツモデルには、旋回挙動の正解がそのひとつしかない。細かいことを言えば旋回挙動にはカーブの数だけ正解があり、「プントエヴォにとっての正しい旋回」にも、その範囲内で無限のバリエーションがあるのも事実ではあるが、大掴みのところでは「最初に進入速度を決める。そして舵角を決める」の一択だ。そのことがわかってくるにつけ、FF/小排気量エンジン/ターボ過給というフォーマットのフレンドリーさにしみじみ心が動くし、加速(というかシフトチェンジの作法)や制動にも、まだまだ自分が学ぶべきことがたくさんあることがわかってくる。
アバルト プントエヴォは、その加速も旋回も制動もオーナーの期待値を上回る性能でもてなしてくれる。初めはそのことに浮かれていれば良い。どこに行くのも楽しい。一方で実験部隊がこうあれかしと目指し調律した範囲内でしかキレイには動かない。それは現代のクルマとして決して間違いだとは思わない。手練れからそれこそ筆者のような「なんとなく曲がれている」ような人まで乗るのだし、アバルトの看板に引き寄せられて、無茶をしたがるような人の含有率も高いだろうから。掛け値なしに楽しいクルマだし、ある程度運転技術を身につけた人には心の底からお勧めすることができる。
その反面、実直に動いてくれるクルマだからこそ、運転手の巧拙を浮かび上がらせもする。自らの腕ではなく、クルマやタイヤの性能で曲がっていることが徐々にわかってくる。それを理解した上で、無理のない範囲で刺激的な走りを楽しむのもひとつの生き方ではある。が、筆者はもっと違う景色も見てみたくなった。MiToやプントエヴォの対極と思われるモダンアメリカンマッスルカー夢見たが高価で果たせず、自他共に認める純スポーツカーのマツダ ロードスターという選択に至った。これすべて、プン太郎のおかげである。プン太郎の在席期間は4年半、その間の総走行距離は78,824kmだった。感謝しかない。
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プジョー 308GTiの270の方はLSDが入っているのでちょっと違うかもしれない。250しか試乗したことがないうえに、そんな限界挙動など検分する腕もない
プントはミトのマイナーチェンジ後のQVから乗り換えたら、もう少し近しいフィールに感じたかもしれないですね。ほんの少しですが運転させてもらったプントに自分も感謝です!今度お会いしたときは、ちょーななも混ぜて「軽さは正義話」に花を咲かせましょう!
実は敢えて触れていませんが、MiTo QVとアバルト プントエヴォの印象は近しいです。でもリアの挙動中心に検分したことがなく、軽々に比較してもな……と思い濁してしまいました。まだロードスターの軽さを実感できていませんが、ぜひぜひ、一緒に花を咲かせてください。
こんばんは。プントエヴォとキッチリみっちり付き合ったことが伝わってくるまとめです。特に、カーブについての表現が、刺さりました。私はどちらかというと、すぐに乗り換えるほうなので、今の愛車はacatsukiさんのように、じっくりと付き合って、運転も今よりはうまくなりたいです。じっくりと付き合えば車は応えてくれるということを読んで感じました。。頑張ります。
毎度ですー。プントエヴォ、ひいては多くのFF車の「最初に進入速度を決める。次に舵角を決める」メソッドって、分かるとすげー楽しいんです。どのカーブでも狙ったとおりに走り抜けられる。失敗した場合は大抵進入速度を見誤っている。つまり進入速度にマージンさえ持たせておけば、基本的に破綻しないわけです。楽しいのですが、他にも曲がり方ってあるんじゃないかと思ってもしまうんです。C43にはC43独自のメソッドがあるはずですし、きっと応えてくれると思います。楽しいですよね(笑)。
その侵入速度とステアリングのこと、前回のレッスンで習ってきたのよ~!
自前で実感して実践してる!って感激しました。
どんなレッスンだったかは、エントリ(書くのか?)かF2Fで〜。
「どうしてFRが欲しいのか」あれこれ考えていた事を文章化できて良かったです。レッスンの内容、気になりますねー。それに姐さんが124で身につけたことは、ほぼそのままロードスターにも応用できるのではないか。うしし。
まず持って新しい戦闘機の着任おめでとうございます!ハイシーズンに入り、NDなどがオープンで、交差点を曲がっていくのを見ると、思わず見入ってしまいます。
しかも、最近見たのはご高齢のおじさま、おばさまドライバー。ピュアな楽しみを知る生き方に憧れさえ覚えます。クラウンもあそこまでやるならスパッとオープンかつFR回帰でだせば、キャリア人生のピュアで新しい価値観を世界に提示できたのに…… 逸れましたが、車線幅3500mmに対し車幅1740mmのFFミト。その差1760mmを利用してワインディングを可能な限り直線軌道に変換し、多少のアンダーを出しながら蓋のない側溝ギリギリをかすめていく…のが安定のAWDから乗り換えて悩んだあとのFFの乗り方です。長い距離は無理ですが。ただ歳を重ねるにつれて側溝の恐怖に勝てなくなって来ました。安全マージンとった運転にして、FFミトを楽しみたいと思います(笑)
ありがとうございます。仙台ではけっこう若い(たぶん20代だと思われる)お兄さんもNDを運転しているのを見かけますが、残念ながら(?)お姉さんがひとりで運転しているのを見たことがない。でもなんとなくわかってきました。自然吸気エンジンの、まったりサクッと回転数が上がって行く感じ。若い人で「これこれ!この感じ!」って喜べる人は少ないかもなぁと思います。
MiTo(FF)の旋回挙動、特にアンダーが出るか出ないかのヒリヒリしたレベルで側溝ギリギリを攻める感じ、わかります(笑)。プントエヴォはLHDでしたから、右旋回は本当にギリまで寄せるも寄せないも自由自在でした(遠い目)。今はNDの車両感覚を一から叩き込んでいるところで、まだまだぜんぜんそんなレベルじゃありませんが……。いずれにしても、公道を走る時は自車だけじゃなく、突拍子もない行動をする対向車などの他車ファクターとの安全マージンがめっちゃ大事ですよね。どうも最近、その重要性が高まっているように思います。なんか、変な運転する人が急に増えたように思うのです。気のせい?
駆動方式の違いはとても面白いテーマですよね!簡単に分けてFF,FR(MR,RR),4WDとなりますが、どの駆動方式にしてもメリットがありデメリットがあります。それが個性となって 本来デメリットな面もその乗り手には面白いと感じてメリットになってしまうのが車の面白いところですよね!オイラは昔FR偏愛主義者であったのですが、FF車で速く走ろうとした時に、決してそれがつまらないものではなく目から鱗が吹き飛んだのが今でも衝撃的に覚えています。FFからFRに乗り換えた際に感じたacatsuki-studioさんの率直な感触を是非直接「生」で聞きたいです!!
私が経験していない4WD使いの方のお話もこのブログで是非聞きたいです。駆動方式だけでなく色々な嗜好の車好きがここが良いよねみたいな話を聞くのはとても楽しいですよね!
駆動方式の違いを意識して、「そんなに違いがあるのかー。体験してみたいな」と思えるようになったのも、このブログを通じたリアルお付き合いのおかげなんです。ひとまずFFだけなら言語化できるんじゃないか……と挑戦してみたわけです。FRについても頭でっかちにならずに、体感要素を積み重ねて言語化してみたいです。
>>本来デメリットな面もその乗り手には面白いと感じてメリットになってしまうのが車の面白いところですよね!
おっしゃるとおりだと思います。クルマの挙動の良し悪しは、あくまで「こういう前提なら/こう仮定すると」という縛りがあって初めて評価できると思ってます。「スポーツカーを名乗るくせに加速が悪い=けしからん」しかし「ファミリーカーとしてなら安全マージンが大きい=おすすめ」という評価ができると思います。乗り手がそのクルマをどうあってほしいのか、なるべく具体的にしておかないと、評価も寝ぼけたものになってしまいますし……。某自動車掲示板で新型クラウンについての反応を見てみたのですが、そりゃもう酷いもんで(笑)。褒めるにしても貶すにしても、前提や仮定を示してほしいものです。ただ「今どき駆動輪が前か後ろかなんて気にするやついるの?」という一文にはショックを受けました。こんな意識のヤツが普通に路上走ってるのか……と。まぁその人が免許持ってクルマを運転している人かどうかは掲示板の発言だけではわかりませんけれど。
生で意見交換できる日が来ると良いですね!ちょーななさんの軽じゃない方の愛車(笑)もぜひこの目で見てみたいです。