岩手県探訪シリーズ#4・東磐井大規模林道 爆裂の章
気がつくと10月も20日を過ぎて、東北地方を北に向かうにはタイムリミットが近づいてきた。岩手県探訪シリーズとして泊まりがけ案件を目論んでいたのだが、あれこれスケジュールをやり繰りしてみても、どうもそれは難しい。だが先日の会津ツアー以来遠乗りらしい遠乗りもしていない。そこで折衷案。今年5月にプン太郎と走った岩手県・東磐井大規模林道を、今度はロードスターで走ってみよう。興が乗ったら大船渡でも遠野でも一泊してしまえばいいやという、かなりラフなプランだけを脳内で組み立てて、朝9:30頃に出発。
東磐井大規模林道の南端は一関市藤沢町である。宮城県側からアプローチするなら、K295を北上、その途中に起点(終点)がある。問題はそのK295、登米市までどうやって行くか、である。今回は宮城県の内陸をふらふらと走って登米市東和町へ至り、R456を北上して岩手県入りした。
少し疲れているが、久しぶりにオープンでのんびり走る。とにかく東磐井大規模林道に乗ってしまえば、ひたすらマイペース走行できることはわかっているので、宮城県内陸部ではペースが遅かろうが信号が多かろうが、あまりカリカリしないで流れに乗ることだけを考えて走る。上掲最初の画像は加美郡色麻町から三本木町へ抜けるK156なのだが、ここで写真撮影の際にあるものにシャツの裾を引っかけて、少しビリッとやってしまった。お気に入りのシャツだったのにぃ!と、ここで若干テンションダウン。思えばこの不注意がすべてを象徴していた。「まぁロードスターを傷つけたんじゃなくて良かったと思おう」と気持ちを切り替え、なるべく走ったことのない道を選んで登米市へ向かう。
東和町の「道の駅林林館」に到着すると、いよいよイントロが終ったなという気持ちになってくる。R456に乗ると、意外や対向車が何台も走ってくる。珍しいことだ。県境の雨量観測所にはリアハッチゲートを開けて腰かけ、ギターを弾きまくってるお兄さんがいた。R456、いつもと様子が違う。これも予兆と言えば予兆だったのかもしれない。岩手県一関市藤沢町でいよいよ東磐井大規模林道へ。
5月に走った時は探り探りだったが、この日は自信満々で。それにしても暑くもなく寒くもなく、晴天でもなく曇天でもなく、オープン走行には最適な天候。最高じゃないですか。大勝利であります!5月にプン太郎と写真撮影したポイントが現れた。林道とK218との交差点付近。比較の意味で撮っとくか。
路肩に寄せたら強烈な衝撃。ン?なにか踏んだか?寄せきって停車、確認すると側溝があるではないか。夏草が繁っていてまったく見えなかった。不覚。ざっと左側面を見るが異常はなさそうだ。いや、リアのホイールに傷が……。あー。やっちまったか……。ま、仕方ない。サイドシルなどボディや底をこすった痕は見当たらない。不幸中の幸いだった。再び走り出して違和感。直進せず左に流れていく。あ、パンクか??再び路肩に停車。がーん。左前輪が完全に空気抜け。ホイールに強烈なガリ傷とタイヤサイドウォールのえぐれ。これはかなりマズいパターン。一縷の望みを託してエアコンプレッサーで再充填してみるも、空気圧を示す数字はぴくりとも動かず。ダメだこりゃ。
なんだよー、林道に乗ってからまだ10分も走っていないじゃないかー。今日はここで終わりかよー。「みんなオイラが悪いのか♪」どうでもいいけど、この歌詞で有名な尾藤イサオの「悲しき願い」の原曲は「オレは悪いヤツじゃない、そこんとこ、誤解しないでくれよ」という歌詞なのに、日本歌詞は真逆の内容なのだ。などと考えつつ次の手を考える。まぁ任意保険を使ってレッカーを呼んで……か。来るのは積載車でレッカー車なんか来ないのに、レッカー呼ぶって言い方、へんだよね。などと考えつつ……って、まぁ少し混乱していたわけだ。混乱するのも仕方ない面もあった。なにしろロードスターには予備タイヤは積まれていないし、パンク補修キットも未購入。自力ではどうにもできない。しかも間が悪いことに、7月に買ったばかりのこのND君にはセキュリティナットが装着されていた。7角+切り欠き付きのニクいヤツ。で、そのナットを回すためのロックナットは自宅玄関に置いてある……。ここんとこ、重要。「ロックナットは自宅玄関にある」。つまり積載車を呼んでどこかに運ばれたとしても、処置しようがないのだ。
最近あれでしょ?こういうの、「詰んだ」っていうんでしょ?
まぁとにかくここで途方に暮れていても事態は好転しない。保険のレッカー受付に電話して出動要請。なんか、もうやり取りも慣れたもんですよ、ははは。思えば一関市藤沢町、保呂羽湖の近くで携帯電話の電波が通じていたのは本当に幸いだった。もし格安SIMかなにかで電波が届いていなかったらと思うとゾッとする。オープンのままエンジンを落とし、運転席でじっとしている。先日買ったばかりのネックピローが良い仕事。時々風が吹き抜けていく。クルマはほぼ通らない。どこかで雑草を刈っているらしく、草刈り機のエンジン音だけが遠くから聞こえるだけ。長閑だなぁ。うとうと。
気仙沼市から「レッカークマガイ」さんが到着したのは40分くらい経ってからだった。このレッカー屋さんがとっても良い人で、筆者から事情を訊くとあちこちに電話して195/50/R16タイヤの在庫があるか、7角のセキュリティロックを外す方法があるか問い合わせてくれた。まぁこれらが決まらないとどこに搬送していいのか決められないという事情もあるが。とにかくこの段階で筆者は、タイヤ在庫がある、あるいは取り寄せ可能なタイヤ屋さんへロードスターを搬送してもらうしかないと考えていた。当の筆者は気仙沼に一泊するか、JRか高速バスで仙台に帰り、翌日ロックナットを持参してタイヤ交換してもらい、自走で仙台に帰る。幸い翌日は当スタジオ女主人も休日だったから、シトロエン C3で気仙沼までツーリングすりゃいいや程度に考えていた。
しかし問い合わせも空しくタイヤがない。10月も下旬になると、タイヤ量販店の在庫は一斉にスタッドレスタイヤに切り替わってしまうらしく、195/50/R16なんてヘンなサイズのノーマルタイヤなど置いておくスペースなどないらしい。こうなると近くの千厩町や一関市に運んだところであまり状況は変わらないだろう……。いよいよ本格的にヤバい感じになってきたゾ!エモい!!
レッカー屋さんが「仙台に運んだ方がいろいろ有利じゃないですか?取りに行くにしても楽だし、タイヤの在庫だけの問題ですよね?どこか親しくしているタイヤ屋さんとかありませんか?」と提案してくれた。とは言ってもそんなお店ないしなぁ。仕方なく購入店のオープンカークラブSENDAI・H田さんに電話。事情を話すと「ちょっと懇意のタイヤ屋さんに在庫がないか訊いてみます」。うわー、お願いしますー。数分で返事が。中古だがバラの在庫があった!確保のうえロードスターを一泊預かってくれるという。おお!神も仏もここにいた!!ということで仙台に運んでもらうことに。筆者は途中まで同乗させてもらい、千厩町あたりから一関市へバス移動、一関から高速バスなり新幹線に乗るつもりだった。ところがE4東北自動車道経由の搬送道中、レッカー屋さんも筆者も、確実にバスに乗れるポイントを探し当てられない。若柳金成ICがどんどん近づいてきてしまう。基本的にレッカー屋さんは最短距離しか走ることができず、途中寄り道などできない(そもそも筆者が同乗していること自体がイレギュラーなのだ)。やむを得ずとうとう仙台まで同乗させていただくことに。繰り返すがこれは非常時対応で、万一道中筆者が怪我などしても保障がない。とにかく今回は「やむを得ない」案件だらけだった。
結局17時頃に「タイヤショップ東仙台」さんに無事到着。H田さんから聞いてますよ、ロックナットは持ち歩かなきゃ、と言うお店のお兄さんの「いい歳して素人だなぁ、このおっさん」というある種の蔑みの目が忘れられない。筆者にも言い分はある。玄関の下駄箱の上に置いてあるロックナットを見ては「積むべきか積まざるべきか」と逡巡していた理路はあるのだ。が、今は空しい。はい、重々身に染みました。たまたま夕方まで用事のため仙台市街地にいた女主人にC3で迎えにきてもらう。バーストさせたのが12:30ころだから、結局昼食抜き。安心してめちゃくちゃ腹が減った。最寄りの「びっくりドンキー」さんに入店。ケチが付き続けのこんな日にふさわしい夕食を摂ったのだった。
翌日。再びタイヤショップ東仙台さんへ。ロックナットを渡し、さっそく作業してもらう。
しかしここは面白いな!基本激安中古タイヤ+ホイールのお店なのだが、筆者のようなヘンタイにはワンダーランドである。なんか全部安いし。いろいろヘンなものも見つけた。
作業は30分もかからず終了。なんとダンロップ ル・マンである。ディレツィアよりいいじゃねえか。フロントとリアで銘柄が違う事態は本意ではないが、どうせスタッドレスタイヤへ履き替えるまでの1ヶ月少しだけのことだし、そうなれば前後異銘柄タイヤ状態を体験してみるのも悪くない。ル・マンが1本5,000円で作業工賃とタイヤ廃棄代、締めて14,850円也。やっす!安いっす。助かった。丁重にお礼を言って退散。さすがにこの日は家で大人しくしていたが、東磐井大規模林道走破を諦めたわけでは決してない。なんとこの翌日にリベンジツアーに出かけるのだが、読者もいいかげんこの長文に付きあうのも疲れたろうから、章を分ける。
(つづく)
こんばんは。「ガーン」でしたね。それにしても東磐井広域農道の入口で、このアクシデント!走る気満々で、ガチョーン!出鼻をくじかれたというのは、こういうことを言うのですね。私もお勧めいただいて実際走って、その楽しさを知っているので、尚更心中お察し申し上げます、ですね。
それにしても、本田さんは頼りになりますね。いつもニコニコして、こちらのことを考えてくれるという人。助かります。
そして、最後の一節、この翌日リベンジツアーに出かけるのだが、⇒凄い。偉すぎます。もう体調もすっかり戻ってきたということですね。早く続きが読みたいです。
H田さんの返信は地獄に仏でした……。助かったー。
>>凄い。偉すぎます。
いや、だって、これじゃあまりにも蛇の生殺し過ぎますもの(泣)!厄落としは早い方がいいですし。気合いを入れて同じ服装で出かけたんですよ(笑)!なにもかもやり直しじゃあ!ってんで……。そしてこのリベンジツーリングがすっごく良かったんですよ!第2章をお楽しみに! ←おまえがいうな
読者です(笑) 全然疲れません、もっと続けてください! なんか同士を見つけて嬉しいです。私も今年2回パンクしてますから(汗) サイドウォールだし深そうなので修理不可ですね。パンク修理剤でもこれは無理だったんじゃないでしょうか?というか修理剤はよほどのことが無い限り入れないほうが良いと思います。素直にローダー呼んで正解です!ホイールのガリは、この色なら、革靴のクレヨンみたいな色修繕ペンで目立たなくなると思いますよ(^^4Cのときにやりました(笑) ともあれ大事にならず不幸中の幸いが重なりましたね。何事もなくてよかったです。
嬉しいコメントをありがとうございます!タイヤショップのお兄さんにも言われたんですけど、「ここまで深くえぐるともう補修剤なんか効かないし、最近のクルマは予備タイヤ積まないから、ホント困りますよね!」ええ、困ります。困りました。セキュリティロックはその存在自体に疑問符がついているので(私の脳内で)、普通のナットに取り換えてしまおうかなぁ……。
ま、でも今思い返すと、積載車の到着を待っている間が一番心が凪いでいたなぁ(笑)。風がそよそよ、田舎の片隅、エンジンを止めたロードスターの運転席でうとうと。バーストさえしてなけりゃ、かなり贅沢な時間の使い方ですよね(笑)。色修繕ペン、探してみます!
おお、タイヤバースト仲間!
しかし、さすがだなぁ。積載車待つ間にウトウトできちゃうなんて。私が積載車待ちしてた時は、もう不安で不安で…。ボクスターん中で震えてたよ~。(いや、盛り過ぎた)
ロックナット不要説、支持です。アバルト・アルファロメオは毎回ロックナット付けてたけど、結局それってディーラーでしか変えられないってだけになってました。
ともあれ、acatsukiさんとNDのお身体がご無事でよかった。続き、楽しみにしてます~!
もー、盛らないでよー。仲間っていうけどさー、オレの場合は原因がホントしょぼくてやンなるわー。姐さんのロックナット案件、それってつまりロックナットはディーラーが持ってるってこと?だとしたら戦国時代の人質とおんなじじゃん。ちょっとなぁ。まぁあお師匠や姐さんみたいに顧客リストの1ページ目に記載されているような人はそれでもいいのかもしれないが……。
もっとも自分でレンチ使ってタイヤ交換している姐さんとか想像できないけど(笑)。だからいいのか、それで。
スーパー厄払いで次回タイヤ(ミシュランとかスゲー奴)+ホイール(レイズとかBBSとかスゲー奴)で新調とか(嘘)。車本体と人間が無事で何よりです!路肩でガリキズはミトて数回やらかしてますから、凹み仲間ですね。ただの報告ですが自分のミトも19万キロ迎えそうです。
ところがですね、タイヤショップ東仙台さんで中古格安ホイールと中古タイヤの山に埋もれてみると、こういうのを次々に履き替えてみるのも楽しそうだなぁ!とか思ってしまうんです(笑)。やっすいんですわ(笑)。でもおっしゃるとおり、車体と身体に傷がなくて何よりでした。
みなさんけっこうガリガリやってるんですね(笑)。少し気が楽になります(笑)。そしてMiTo、優秀ですねぇ。隠れた名作かもしれない。