ロックナットの功罪

ロックナットと呼ばれる商品がある。ホイールを固定するボルトを通常の6角ナットから専用のソケットが必要な変形ナットにすることで、ナットの取り外しを困難にし、ホイールやタイヤの盗難を防止するカーグッズである。2022年7月に納車された当スタジオのNDロードスターには、最初からロックナットが付いていた。

自業自得バースト案件の際、このロックナットの専用ソケットを車載していなかったことで解決方法がややこしくなった。自宅から120km離れた山里でバーストし、しかもホイールは外せない。じゃあどこに運んでどう処理するのよ、と。しかも時期が悪く、ノーマルとスタッドレスの端境期。指定サイズのノーマルタイヤがなかなか見つからなかった。

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思い出すと萎えてくる……

顛末は前段冒頭のリンクに詳しいので省略する。本稿で考えたいのは、このロックナットは本当に有用なのかどうかだ。筆者のように専用ソケットを自宅に置いてきたなんてのは愚の骨頂だが、筆者とてボケッと徒に玄関に置きっぱなしにしてきたわけではない。車載しなかったのは「ソケットを見つけられなければ賊は諦めるんじゃないか」と思ったからだ。つまり「車載しないことこそ最上のセキュリティ」という考え方だ。だが市販のカーグッズである以上、適合するソケットを賊が持っている可能性もゼロではない。山がつぶれてもいい、とにかく外す時だけ回りゃいいと、ロックナットを「破壊」することもあり得るのではないか。ソケットを別保管にしても盗難防止という基本性能が万全ではない。うーん、どうしたもんか……と、下駄箱の上のソケットをちら見して毎日逡巡していたのだ。

しかしソケットを車載しないことは、盗難云々の前にパンクという日常のリスクに対応できないという根源的かつ最大級の不備を託つことにもなる。一方で常時車載する場合、言うまでもなく発見されたらアウトである。どちらにしても賊がロックナットに気付いた段階で、車内やトランクを探すだろうし、そうなれば最小範囲とは言え窓やドア、トランクリッドを破壊……とまではいかなくても傷つけられることになる。賊に目をつけられた以上、積んでも積まなくてもクルマには何かしらの被害を受けることになる。ロックナット装備の唯一のメリットは、盗みの作業に時間がかかることで、犯行現場が発見されやすくなり、だから犯行そのものを賊があきらめることではないか。

ある日駐車していたロードスターに戻ってみたら、ドアやトランクにガリガリ傷が付いていた……なんてことは想像したくないが、ロックナットという製品はどうしたってそういう絵柄を想起させる。「くっそー、あちこち傷つけられたけど、ホイールは盗まれなかったぞ!よかったー」という思考は、筆者にはない。こうなると盗難対策の対象は車両本体であり、ハンドルロックや盗難アラームなどを併用するしかない(それだって完璧ではないだろう)。

そもそも論はあまり言いたかないが、2015年初年度登録のマツダ ロードスターSパッケージを盗むメリットとはなんだろうか。筆者には思いつかない。況んやその純正ホイールをや。アルミホイールを盗んでパーツ屋に売って小遣い稼ぎってのは、昭和50年代くらいまでは割と身近なリスクだったが(シャコタン★ブギ参照)、普通の人が買う普通の軽自動車ですらアルミホイールを装着しているこの2022年、ホイールを盗むってのも利の薄そうな犯罪だなぁ。

高級車のセキュリティ破りの手法の解説を見聞きすることはあるが、地上波ニュースでも取り上げられていたのだから相当件数が多く深刻なのだろう。それにクルマ窃盗団の目的がクルマであるとも限らない。パーツだったりそのパーツを構成している金属その他の材料そのものという場合もあるのだろう。クルマの盗難防止というジャンルは、勉強し続ける必要がある。

10件のコメント

  • おはようございます。
    ロックナットはたしかに防犯の定番アイテムですがたしかに守るべきはホイールやタイヤではなくて車体の方ですね!
    現在だと20インチ以上のホイールもそこいらにありますしよくあるサイズだと盗難というよりはイタズラ対策になるのかも知れませんね。
    ロックナットにこんな功罪があるとは思いませんでしたが1番の防犯はやはりあまり放置しないで動かすということなんですかね!

    • なるほど、盗難よりもイタズラの標的になる可能性の方が高いかもしれませんね。人様に迷惑をかけるような運転はしないよう心がけてはいますが、どこでどう恨みつらみを買うかわからないし、そもそもロードスターという「チャラいクルマ」そのものが気にくわないって人はいるかもしれん。ボディに傷をつけられたりとかしたら、凹むなぁ……。自宅はともかくとしても、出先での用心ってのはいるのかもしれませんね。で、やっぱりロックナットはあまり必要ないという結論に……。

  • 私的には、普通のナットに戻した方がメリット沢山あると思います。でも、ソケットを持ち歩くならそれでも良いと思います。盗む側は多分ほぼ常習犯だと思うのでロックナット用のソケットなんて何種類も持っているように思います。やはり、最後の砦は保険でしょうね。。。盗難やイタズラは、自衛もある程度できると思いますが、絶対ではありませんから。

    • 一関市の郊外でバーストさせて、駆けつけてくれたレッカーの作業員さんが親切にもあちこちのプロに連絡を取ってくれたんです。その電話でのやり取り中に多角形ロックナットの解錠ソケット持ってない?っていうのがありまして。それを脇で聞いていて「あ、プロはソケットをいくつも持ってるのか!」と初めて気がついたんです。みいさんが書かれているように、常習犯ともなれば、「一般的なロックナットの適合ソケット」をいくつも持ってておかしくないですよね。増してやプロの窃盗団ともなれば、あんなの付いてても付いてなくてもいっしょみたいなもんかもしれません。

      さらっとネット検索してみると、昨今の車両盗難のトレンドは当然SUV(ランクルやLXとか)らしいです。でも意外にもプリウスやハイエースも上位にいて、つまり高額車両だけが狙われてるわけでもない。数が多く出回っている車両はパーツ狙いでやられるみたいですね。NDロードスターの場合、そうそうターゲットにはなるほどの人気車種ではないものの、ある程度数が出ている車種ですからねぇ。盗難保険か……。

  • ロックナットは結局持ち歩きとかに気を使わなきゃならなかったり、どこやった?がありますからね。そこにあまり自分のリソース使いたくないのが本音です。なので皆さんおっしゃるとおりだと思います。アフターのBBSとかだと心配だけど、今ホイール盗難でどれくらいあるんでしょう。

    • 30秒くらいネット検索しても、ホイールだけの盗難件数のエビデンスは見つけられませんでしたが、パーツ泥棒ということになると、数は多いんじゃないかと想像しています。怖いのは売ってるお店も買い手も盗難品とはわからずに売り買いしてる例もあるかもしれないってことです。確かに中古屋さんにNDロードスター純正ホイール4本セットで1万円(キズあり)とかで売られてたら、買う人はいると思うんですよね。高額車両、高額パーツだから狙われるというわけでもなさそうで、盗難品のニーズを把握しないと対策も立てにくいです。

  • こんばんは。車の盗難関係は心配の元ですね。幸い宮城県は発生件数がそれほど多くなく、全国26番目のようなので、ちょっと安心です。でも、今日スマホの記事で、ひどい部品の取られ方の記事が載っていました。部品をいろいろ取った挙句、車内に消火器を噴射した、という記事です。ボンネット内にも噴射されたので、エンジンもダメなようです。何とも酷い話です。宮城、仙台ではそこまでの話は聞いたことがありませんが、いつ移ってくるかわからないので、やはり心配です。警察にも頑張ってもらって、こういう悪事が割に合わないということにして欲しいです。

    • この記事を書いてから、少し追加で書けることがないかと思い、少しネットで情報を集めてみたんですが、途中で具合が悪くなってやめました。酷い話ばっかりですよ。消火剤は指紋消しらしいですね(それでどうやって指紋を消せるのか)。外道はいつの時代でもいるものですが、今後少子化がさらに進み若い人の分母が小さくなれば、こういう犯罪に手を染める若い人も減るかも……と一瞬前向きになれたのですが、いやちょっと待てと。格差と貧困がすぐに解消されるとも思えないので、「数少ない若者の中で、貧困を理由に犯罪の道に入っていく人の比率は高まる」のかもしれないと思うと暗鬱としてきます。ホント、腹立つ!

  • 今日の朝のZIP!で、タイムリーに86のタイヤが盗まれたニュースが流れました。ブロックに乗せられ、フロントガラスも割られ、中は指紋隠しのピンクの消火剤まみれ。ひどいもんです。廃車だそうです。

    https://youtu.be/1wxFjNlcHl4

    • 86でもやられるのか……。まぁ確かに社外品オプションてんこ盛りみたいな個体を時々見ますものね。ああいうのがおいしい標的になってしまうんでしょうか。もはや世紀末ですね。←まだ22年しか経っていない

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