EDO GT#3 気仙沼ゆう寿司バイパス店と岩井崎塩づくり体験館

※本エントリーは食べることばっかり書いていてクルマに関する表記はほぼありません。

親友あにまる、トシユキとのツーリング企画EDO。この度グルメツアー=GTと称する飲み食い特化型セッションが6年ぶりに開催された。トシユキの愛車スバル インプレッサ(GD型)にメンバー全員が乗り込み、筆者は1mmも運転していない。当ブログの通常エントリーとは趣が異なるが、筆者がクルマであちこち走りに行く、馴染みのお店で食事をする根源となるエッセンスがたっぷりの道行きだったので書き留めておきたい。

本GTで訪れたのは宮城県気仙沼市の寿司屋「気仙沼ゆう寿司バイパス店」さんである(以下ゆう寿司)。実はつい最近、2023年2月にもEDOメンバーあにまると共に訪れている。さらに未エントリーながら1月にも実は訪問している。我々EDOにとってゆう寿司が如何に大切な店かは2月エントリーに書いたのでそちらに譲る。当日朝9時にトシユキが運転しあにまるが同乗するインプレッサが曉スタジオに到着。そのまま出発。今回は泉PAICからE4東北自動車道に乗り、仙台北部道路を経由しE45三陸自動車道で大谷海岸ICを目指す。今回は全編トシユキが運転を担当してくれたおかげで、筆者とあにまるはインプレッサの助手席、後部座席をしっかり堪能することができた。トシユキの個体はすでに16万kmも走破しているのだが、ボディ、シートのヤレの少なさに驚いた。たまにスバル車を運転したり同乗させてもらうと、AWD由来の「路面、がっちり掴んでますから!」感にいつも感嘆する。ヤレ云々を感じにくいのは、この常にある「腰から下がしっかりしている」印象に由来していると思う。そんなわけで道中は大変快適だった。

11時には大谷海岸ICから旧来のR45へ。少し早めに気仙沼市内に到着したのは、「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(旧気仙沼向洋高校)」に立ち寄るためである。トシユキが仕事上で世話になっており、気仙沼訪問に併せてご挨拶。筆者とあにまるは伝承館を外から見学していたのだが、上掲リンクでお分かりのとおり、保存されている校舎は東日本大震災で発生した津波被害をそのまま残しているから凄惨を極めている。一方で訪問したこの日はかつて校庭だったと思われる広場でパークゴルフ大会が開催されており、とても賑やか。その光景のギャップに少し戸惑ってしまう。だがこれが被災地の現状であり、よそ者が戸惑う必要は、本当はない。地震や津波で甚大な被害を受けた土地の人々が、新しい日常を送っていることこそが大事なのだ。もちろん胸中は複雑であろうが、その複雑さはひとりひとりのもので、他人が甘ったるく同情したりできない。よそ者にできるのは「忘れないように努力すること」、これに尽きる。

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旧校舎の、象徴的な傷。
津波で流されてきた冷凍倉庫が
接触した時のものだという
ちなみに4階である
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伝承館のほど近くにある慰霊塔

伝承館の周囲をうろうろしていたら予約の時間が迫ってきた。ゆう寿司に移動する。R45を北上すれば10分もかからない。開店と同時に入店。

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今回カウンターに座る我々3人のアプローチは異なっており、「毎月訪店」を実践するあにまるは卒なく「おまかせ握り」(というにぎり寿司コースの最高峰)。そもそもゆう寿司の第1発見者トシユキも訪店は久しぶりで、やはり親方おまかせ。2月の訪店時にノンリミッターでお好み握りを喰いまくった筆者は、今回は逆張りで丼ものをオーダー。このところ女川で探求していた「鉄火丼」をゆう寿司カウンターでいただくという、これはある意味で暴挙である。ふたりのおまかせ握りの方が若干早めにスタート。次々現れるうまそうな握りを脇目にひたすら待っていると、鉄火丼が現れた。

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先に赤身と中トロの握りを食べたあにまるとトシユキが感嘆の声を上げる。「え?あの赤身と中トロがこんなに乗ってるの??」というわけだ。ふふふ。形勢逆転である。ひとくち食べて絶句。ふたくち食べて絶句。思った通りの別世界。ネタが美味いのは言わずもがなだが、少し驚いたのは酢飯である。にぎり寿司のシャリがそのまま丼によそわれているのだろう、よそのまぐろ丼/鉄火丼よりも炊き方がやや固め。ここで初めてにぎり寿司のシャリの特殊性がわかる。普段丼物やお茶わんでいただくご飯よりも飯粒が立っている。職人さんが握って客が口に入れてほろりとほどける食感は、握る技術だけでなく、シャリの炊き方から違うのか……と得心させられる。添えられた中落ちの叩きも、わざとだろう粗っぽく叩かれて赤身と中トロのちょうど中間の味わいが濃い。その辺の鉄火丼ではこうはいかない。抜かりがない。抜かりがないと言えば付いてくるあら汁である。この日はスズキ。気仙沼大島特産のゆずの皮が腕の底にちらりと控えているのだが、淡泊なスズキとゆずの香りが絶妙。そもそもこれ本当にあらか?スズキの「お吸い物」じゃないの??と疑うレベルで身もしっかり付いている。

筆者としては相当時間をかけて食べたつもりだが、それでも終わりはやってくる。食べ終わって陶然としていたら、となりのふたりの握りもゴールしたようだ。短いインターバルで訪れているので、ふたりが食べていたネタの半分くらいは筆者も食べた経験があるものだった。この日は敢えて丼物をオーダーした筆者ではあったが、隣でうまそうに握りをパクパクやられてはたまらない。やはり羨ましくなってくる。わざわざゆう寿司まで来て握ってもらわないなんてなぁ……とうつむく筆者にふたりが「握ってもらったらいいじゃん」と悪魔のささやき。結局ママコ(サーモンの一種で春先が旬)と鉄火巻きを追加。文字通り満腹である。

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これで勘定が4,675円ってんだから笑いが止まらない。繰り返し書くが、ゆう寿司で寿司を食うということは、単に文字が意味することだけではなく、親方と若旦那との会話もいっしょに楽しむことであり、魚の旬の勉強であり、昨今の社会情勢の縮図を知ることである。なんの心配もいらぬうまい寿司屋とは、結局どこもそういうことだ。

さて寿司を食べ終わってしまうとノープランである。いや、お土産は買わねばならない。ところがゆう寿司で新たなミッションが生まれてしまった。あるネタ(失念。白身だった)に塩が振られていた。「醤油を付けずにそのまま召し上がってください」というヤツだ。この塩がタダゴトではなかったらしい。結局筆者は食べ損ねてしまったのだが、市内の岩井崎にある「塩作り体験館」で精製した地元の塩で、若旦那曰く「寿司屋が言うのもヘンですけど、焼いた肉にちょこっと付けて食べても絶品ですねぇ」。特別なルートではなく、既製品を買ってきて使っているそうだが、供給に波があるらしく、いつでも必ず売ってるわけでもないらしい。食べていない筆者もぜひ欲しくなってしまった。そんなわけで一路「道の駅大谷海岸」へ向かい、3人で物色するも見つけられない。若旦那から聞いた「岩井崎に工場みたいな、そういう建物があるんです」という言葉だけを頼りに、なんと岩井崎に戻る。冒頭で訪れた伝承館のすぐ近くなのだ。

岩井崎は「三陸復興国定公園」という景勝地であり、潮吹き岩が有名。しかし2011年の津波で周辺はすっかり姿を変えてしまい、我々もそれぞれに訪れたことがあるのだが、周囲の眺めも地形も変わってしまっている。そもそも製塩工場なんてあったか??とインプレッサでうろうろ。見当違いの行き止まり道路で立ち往生。目視はあきらめて(そもそも目視かよというツッコミはともかく)Googleにでも訊いてみるか……と道端にインプレッサを停めていたら、見兼ねた地元のおじさんが声をかけてくれた。「塩がほしい」という頓狂な我々の説明に臆することなく、丁寧に道順を教えてくれた。おじさんありがとう!!農作業の手を止めて申し訳ない。で、たどり着いたのが「岩井崎塩づくり体験館」である。

製塩工場などではなく、塩づくり体験のための施設で気仙沼市階上観光協会が運営している。店番(?)のお姉さんも、突然おっさん3人が飛び込んできて「塩売ってくれ」というのだから驚いたろう。ゆう寿司で体験し、我々が求めていたのは上記リンク先公式サイトにも掲載されていない。「岩井崎の塩500円」を精製する時に生まれるごく粗い粒のプレミアム塩がそれである。名付けて曰く「小さな星の塩」。ジャム瓶程度の大きさで2,000円というプレミアム価格だが、実際に味を知っている我々に躊躇はない。残数がちょうど3瓶。これで数が足りなかったら殴り合いになってたなと笑ったら、お姉さん「それなら今から精製しますよ!」と、肉屋のコロッケみたいなことを言う。このお姉さんのホスピタリティも特筆すべき高さだった。お姉さんの口上にすっかり惚れ込んだ我々は、結局普通の「岩井崎の塩500円」も併せて購入。帰宅後あにまるは焼いた肉に合わせてみて大興奮した旨メールで報告してきた。筆者はバゲットにオリーブオイル+塩で食べてみたのだが、一発でこの塩の大ファンになってしまった。最初はピリッと粗塩らしい辛味が来るのだが、舌の上でどんどん角が取れて、飲み込む頃にはむしろ甘みを感じるという絶妙の変化をみせてくれる。サラダのドレッシングに使ってみても、やはりその印象が変わらないのがすごい。トマトソースペンネを作って500円の方も使ってみたのだが、こちらは塩味だけでなくコクが付加される実力派だった。

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岩井崎の潮吹き岩も見学。
この日は海が荒れていて潮吹きには
ちょうど良いコンディションだった
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「龍の松」
津波でほとんどの松が流出してしまった後も、
奇跡的に1本だけ残っていた

道の駅大谷海岸で何気なく購入してみた気仙沼パン工房のピーナツクリームコッペパンも凄かった。あとから調べたら気仙沼の新たな名産品に数えられるイキオイだという。そんな具合に、ゆう寿司以外にも「来たら必ず買う」レベルのおいしいものがまだまだあることを痛感した我々は、旧R45の快適さをトシユキに叩き込み、E45を使って往路を復元し帰宅した。長らく休眠企画となっていたEDOセッションだが、今年は息を吹き返す予感がある。ゆう寿司来訪は各自の宿題とするとして、いくつか温めているMTセッション(各自1台、MT車ばかりのツーリング)のプランを実現させることになるだろう。ともあれ今回のEDO GT#3、トシユキ君、運転お疲れさまでした。

10件のコメント

  • HBO(blog読者の方へ注:Happy Birthday Oretachiという誕生日の近いオッサン達が毎年繰り広げる宴のこと)の際は、各自”マイ塩”持参でww
    お店への差し入れは別途用意

    • いや、この塩はすごい。食パンにクリームチーズちょっと乗せて「小さな星の塩」をさらっと振ったらやっぱりすごかった。

  • こんばんは。いつもながらの、おいしいものブログ?が凄いです。
    ルートはチョット普通とは違う道のりですね。北部道路を使うのが、面白い。そして16万キロ越えのインプに乗っていくというのが、また乙。私もそのくらいまでは頑張りますか。
    さて、寿司についてのレポートは、食べたくなる気持ちでいっぱいです。その前に、女川のマグロ丼が待っていますね。
    牛野ダムといい、気仙沼といい、楽しさ一杯で、読んでいる方も幸せになります。

    • 仙台市泉区からだと三陸自動車道への連絡は北部道路が断然便利ですね。下道走ってもこの区間はあまり面白くないですし(笑)。インプ16万kmの堅牢さってのはなかなかですよ。オーナーとしてはあれこれ気になるところもあるのかもしれませんが、ひょいと乗せてもらう分にはくたびれ具合がよくわからない。運転してみたら違うのかなぁ……。
        
      初心に返って、このブログは「クルマの運転は楽しい!」「移動の自由を謳歌!」を書いていきたいと思います。牛野ダムも気仙沼も、やっぱりクルマがなくちゃこういう訪れ方はできないわけで、読んでくださった方々が「自分もクルマ欲しいなぁ」とか「今度の休みにいっちょ行ってみるか!」と行動喚起につながれば本望です。で、まぐろ丼ですが、まずは女川で召し上がっていただいて、その後ゆう寿司ってのがインパクト的には当方の狙いどおりということになります。

  • すごいおいしそうなんですけど!
    ぜひ連れて行ってください。連れて行ってくれないなら勝手に行きたい。
    リンクからメニューを拝見したのですが、やっぱり親方おまかせ握りかなぁ。
    このロケーションだと飲めないのが残念だ!

    • この「気仙沼にクルマで行くと呑めない」というのはEDOでも以前から懸案協議されてきた問題ですが、やはりここは気仙沼に一泊するしかないという結論に達しています。実はゆう寿司バイパス店からほんの少し南下したところにホテルルートイン気仙沼中央インターっつーのがありまして。ここに泊まっちゃえば歩いてゆう寿司に行けちゃう。
        
      せっかくだから姐さんを乗せてオレが運転していくという方法もありますな。効率無視のプランですが、仙台で姐さんを乗っけて昼食をゆう寿司で、また仙台に帰ってくる……という強行軍パターンでも1日でやれるっちゃーやれる。親方おまかせ握り+どうしてももう1回食べたいネタを再度握ってもらうプランがおそらく最適解だと思います。オレの場合ノーリミッターで全ネタ2貫ずつお好み握りで1万円くらいでした。酒呑まないからこんなもんかなぁという。あぁ、年に1回くらいはこれをやりたい……。

  • 塩大好きの私ですが、何年か前に某旅館ですごく美味しいフレークソルトが出て、無理言って分けてもらったんですが、それももうすぐ切れるんです。このブログに書かれている塩、なんとなくそのフレークソルトに粒が似ているので、かなり気になっています!

    • その某旅館の塩と拮抗するかどうかはわかりませんが、口中でとても面白い変化をする塩ですよ。塩好きなら好き嫌いとは別に、味わってみても損はないです!ただ一番最初に味わう環境は(この塩に限らず)大事じゃないでしょうか。例えば寿司屋や天ぷら屋のカウンターでのファーストコンタクトと、試食会でのそれではきっと違うと思います。

  • 今回は善良な市民に対し無差別に食欲を沸き立たせる、末恐ろしいエントリーですな。

    むう、やっぱり三陸モノの寿司は鮮度も良くて美味そうですね。
    赤身の熟成具合と中トロの身の張りっぷりが渾然一体となって写真からも奥深い雰囲気を醸し出してて、おそらくシャリも人肌の絶妙な温度加減もしっかりされてそうなのがたまらない。
    いわんやMiToのオイル代(工賃別)くらいの予算で本格的な堪能できるなんて。

    沖縄モノはトロピカルで風変わりなネタもあったりして観光客にはウケが良いんですけど、ずっと居ると三陸モノが恋しくなりますんで…、時々スシローなんかの三陸フェアで食べますけど、回転寿司と比べては失礼ですね。

    三陸ではないんですが、塩寿司だと大阪の堺に『まつ元』って江戸前で塩握りで有名なお店があるんですが、岩塩はじめ様々な種類の塩だけで握ってくれます。大阪行く機会があればぜひどうぞ。
    たしか大将の師匠が大河原出身でした。

    • もう20年以上前、那覇で居酒屋に入って、魚の種類と味のことは痛感しました。板さんが我々の食べっぷりを喜んでくれて、「今朝市場で仕入れてきたいちばん良いまぐろ(だったかな、とにかくお馴染のネタ)」をお造りで出してくれたのですが、知ってる魚の知ってる味じゃなくて驚きました。これはもう住んでるところが違うから仕方ないところであります。
        
      ところでなに?大阪?塩寿司??今まで大阪であれ食べたいこれ食べたいってのがほとんどなかったのですが、これは罪深いコメント!待ってろ「まつ元」!

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