考察・NDロードスターとはなにか#3

2022年7月就役のNDロードスターの全体像をまとめることができないので、要素ごとに、折々に書いていくことにした。今回は加速について考察してみる。

#1 運転環境

#2 ハンドル

釜房ダム湖畔の定点

FF/FRというレイアウトによる違い、旋回中の蹴り足についてはいずれ書くと思う。今回はあくまで大きな意味での加速動作について。NDロードスターはAペダル動作の解像度が高い。微妙な踏み/抜きがとてもやりやすい。改めて「加速」という動作を考えたくなる。その感動には直近13年の筆者車歴も大いに影響しているはずだ。

アルファロメオ MiTo(2009-2018)、アバルト プントエヴォ(2018-2022)のどちらも「ダウンサイジングターボ」で、基本的にはターボ過給による上乗せ加速が売りだった。一方でロードスターは1.5リットル自然吸気ガソリンエンジンを絶妙なギア比でコントロールする。ロードスターの環境に慣れると、あの小排気量ターボ過給パッケージの加速が、いかにもやんちゃだったと思わずにいられない。こう書いたからと言って「宗旨替えしたとたんに上から目線かよ!」などと思わないでいただきたい。あの2台の3,500rpmより上の炸裂感に、何度アドレナリンを過剰放出したか知れない。大好きだった。

ロードスターに乗り始めて数日の、まだ運転姿勢が定まらなかった頃、筆者は無意識にペダルから離れ気味にシート前後位置を決めていたらしい。オルガン式Aペダルを、足首ではなくつま先だけで踏み込み量を加減していた。それではせっかくのオルガン式の利点が得られない。むしろ梃子の支点から浮いた状態だから、微妙な加速制御はやりづらい。その結果、ロードスターの加速を必要以上に「かったるい」と評価しかけていた。テンゴのNAなんてこんなもんか、と。馬鹿愚か(©️長女)である。

その後正しく運転姿勢を調え、踵を支点にAペダルを操作するようになって、前述の解像度云々の感動を得た。すると微妙なアクセルワークがきちんとクルマの加速に反映されていることがわかる。加速は言うに及ばず、Bペダルを踏むまでもない「抜き」の減速も同様。もっと慣れれば、1km/h刻みの速度調整もできると思う。これは恐らく、サーキットやワインディングでリアの流れ出しに神経を使いつつ限界速度を探る時に、必須の解像度なのだと想像する。そしてその高解像度具合は、近所のコンビニにアイスを買いに行こうとロードスターを出すだけでも享受できる、自動車運転の根源的な快楽でもある。

ロードスターの運転が楽しいのは、この高解像度Aペダルに加えて、Bペダルの動作=制動もまた同じように解像度が高いこと、そしてマニュアルシフトのクイックな動作の三位一体による成果だと思う。効き始めから停止まで、どこにもピークのないリニアなブレーキ動作は、特に加速と表裏一体となってロードスターの魅力を高めている。


マニュアルシフト動作の美味加減については、シフトノブを交換して深く考えることになった。そちらもご参照いただきたい。

シフトノブとキーケースを新調
素晴らしき哉純正シフトノブ

8件のコメント

  • こんばんは。今回のブログの内容と若干ずれますが、acatsukiさんに触発されて、ドライビングポジションを詰めてみたら、C43の評価が良い方に変わりました。大事です。ただ、ギヤが車任せの時が多いので、三位一体という感じは薄いです。(実際は最適なギヤを選んでくれていると思いますが、自分でやってないので印象が薄い)
    三位一体を味わうには、マニュアルでないと無理なのでしょうか。このことは、911の試乗の印象にも関わってくるかもしれませんね。
    先日山形K27を走ってみて、東北の道もまだまだたくさん良い道があると再認識しました。これからも新しい道を開拓しつつ、なじみの道も大切に走っていきたいです。

  • ドライビングポジションの件は、みんなわかっていると思うんですが、声高に言う人があまりいないように思うので、こうやってシツコク書いています。クルマの評価に直結する要素なので、いちど決まるとその姿勢以外では運転したくなくなる……というか、感じられない、感じにくい事象が増えるので、なんだか運転してて損した気分になるんです。「今のカーブ、もっと気持ちよく曲がれたんじゃないかなぁ」とか「今の路面の穴からのショック、こんなに大げさに感じなかったかもなぁ」とかね、思っちゃうようになるんですな。MiToでもプントエヴォでもロードスターでもそうでしたが、ベストポジションで運転すると、車体が小さく感じられるようになるんですよね。肌感覚に近くなる。
      
    で、トランスミッションが自動か手動かって話は、そのうえでの話で、自動の場合、変速が気持ちよく感じられる速度域が少し上がるんじゃないかと思うんです。マニュアルでしみじみ運転できるのって、やっぱり40-80km/hくらいじゃないかと思います。それより上でスパスパ変速を決めたいなら、今は自動の方が物理的に速いし、結果的に気持ち良いんじゃないかと想像します。そういうクルマを滅多に運転しないのでアレですが(笑)。
      
    山形K27も素敵ですし、岩手の大規模林道も素晴らしいですが、関東方面も遊びに行きたいですよね(笑)。

  • ABべダルの解像度となるとECUの緻密さやエンジンマウント、ブレーキ廻りの剛性とかも関係してくると思うのですが、やはり軽さの影響は無視できないのかなあ、と思いました。今自分の手持ち2台はMy車歴の中でも軽量な部類なので特に感じます。4Cは同クラスの中では分かりませんが(個人的には良いと思ってます。)、ミトは解像度という点ではコンパクトクラスの中では佳作に入ると自負しております。この辺スゲー拘る&コスト掛けてそうなポルシェの感触はやはり気になります。

    • エンジンマウントだけで言うと、縦置きが初めてなんです。加速でも減速でもエンジンマウントがシャクらないのが大変嬉しいです。ブレーキは必要最低限ってのは見てわかるので、おそらく軽さが効いているのでしょう。なので、乗るたびに針の穴を通すようなバランスだなぁと思います。そうなるとあれこれパーツを替えると……。こわーい!

  • でもさ、ロドスタ乗りはごまんといるから、先人がいろんなチャレンジしてくれてるよ。数多のレポートから自分のしたいことと照らし合わせてみれば、やばい方法はおのずと淘汰されて比較的いい感じのだけが残る。ミトやプントよりもずっと先人から学べるよ~。やろうぜやろうぜ!

    ところでドラポジですが、先日ドリフトレッスンの時に911のドラポジ確認を先生にしてもらいました。びっくらぽんなことに、PDKだから後ろなら後ろなほどいい、と。ステアリングもめいいっぱい手前まで出して、ブレーキが踏み切れてステアリング12時で腕が伸び切らない程度でって。クラッチきらないから、今までと比べるとぜんぜん後ろに自分がいる感じ。私らチビだから視界的に不利なので、せっかくオートマなんだから後ろに下がりなさい、と。なんか、今まで考えていたことの根底が覆される気分でした。でもいまだに「これだ!」って場所が見つけられない。難しい。

    • 見た目的なことだけを考えれば、やっぱり車高を20-30mmくらい落として、んでツライチかなぁとかね、思うわけです。現状突き上げとか路面の波打ちとかはギリギリ最低限ちゃんと丸めてくれているので、車高調はともかく、下手なスプリングに入れ替えたら泣きを見るなぁとかね、思うわけです。こないだ山形で様々な足周りの改造例を見ましたが、純正状態はほぼ2割くらいで、あとはみんな落としてるんですよね。これが30歳ならイケイケドンドンなんですけど、もうおじいちゃん手前だからさぁ(笑)。ま、やってみないことにはわからないですけどね。
        
      PDKだから目一杯後ろに下がっていいってのは、確かに目からウロコですね!後ろに下がると視界も広がるのか……??考えたこともなかったです。うーん。

  • 1次安全:危険な状況を回避できるか
    ABS/ESCや自動ブレーキ、自動カウンターステアなど
    2次安全:被害を軽減できるか
    衝突安全ボディ、シートベルト/エアバッグなど
    3次安全:被害拡大を防げるか
    安全燃料タンク(電動系:バッテリー配線切断機能)、自動通報機能など
    ・・・
    上記に対して「0次安全」という言葉があります。
    0次安全:危険な状況に陥らない
    適切なドラポジ、良好な視界、適切なインフォメーションと操作系など
    いわゆる「イイ車」の0次安全性能は高い。
    昨今の国産車が売りにしているスマート某は0.5~1.5次安全の領域にありますが、本来この0次こそクルマとしてキッチリ仕上げるべき領域であり、0次より先に頻繁にお世話になる時点で大問題と言えます。
    もちろん0次安全にはドライバー自身も深く関わります。特にドラポジは0次安全の根幹を成すものと考えています。道行く他車を観察していると、その姿勢でまともに運転できるのか?というドライバーがいかに多いことか…
    しかし0次安全性能はカタログで表現するのは難しく、かつ実車で瞬間的に体感するのも難しいでしょう。
    マツダ車はスカイアクティブを標榜し始めたあたりから、ドラポジや先のエントリーにもあったブレーキフィールなど、0次領域について世界的にも先進的な取り組みをしており、ロードスターなればこそのベストポジションかもしれませんね。
    ・・・
    遅ればせながら、「黒船襲来」の日に、どうやらすれ違ったようです。駐車場で談笑されているところをお見掛けしましたww
    家族が連休で帰省中の折、久しぶりに御釜に行こうと言い出したためです。

    • や、オレぁ気付いてましたよ!「お、あれ、A.Sudさんじゃね?」と見送りましたもん。でも正解ならそのまま駐車場に入ってきてくれるもんなぁと思ったものです(笑)。おつかれさまです。
        
      自分のこともちゃんとやれていないのに、人様のことにあれこれ言うのもナンですが、対向車の運転手の運転姿勢にも疑問を持田ざるを得ない人が多いですが、ネットの車掲示板もたいがい酷いですよ(笑)。ハンドルはどこを握るか?とかは(内容はともかく)視点として良いと思いますけど、基本的にクルマが好きな人って、かなりのマイノリティだとよくわかります。「乗れて燃費が良ければそれ以上何が必要なんだ?」っていう人に、ちゃんとした姿勢で!と言っても理解されないでしょう。
        
      一方で今まで乗ってきたイタリアのクルマは、クルマがちゃんと特定の運転姿勢を要求してくるとも思います。そうじゃないとちゃんと走らせられない。そういう風に作ってある。ロードスターも然り。そういうクルマに出会えたことはラッキーでした。多分クルマが好きで、クルマのことを少しちゃんと考えれば、どのクルマにも「こういう姿勢で乗れ」っていう特定の範囲があるんだと思います。

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