盛岡・遠野・気仙沼2023 #5

これまで四回に分けて仙台市北部から盛岡へ、盛岡から遠野へ、遠野から気仙沼へ、気仙沼から宮城県内陸部へ、それぞれに魅力多いそのルートについて、実際に走ってみようと思われる読者への配慮としてルートにだけフォーカスして書いてきた。だがその道行きは走った道路だけでなく、途中立ち寄った場所・食事も同じくらい魅力的だったことは言うまでもない。本稿は番外編として食事内容や立ち寄った場所の所感などをまとめて書いてみる。

第一章 往路前半、宮城県内県道三昧ルート
第二章 往路後半、岩手県一関市から盛岡までの極上ピュア田舎道
第三章 復路前半、盛岡市内から宮古市経由遠野への眼福満載ワインディングロード
第四章 復路後半、遠野市から宮城県気仙沼市、宮城県内陸部の県道三昧

第五章 大金を払わずとも楽しめる岩手のツーリングメシ
第一日目編
本件は時系列でいこう。初日の昼食は岩手県花巻市土沢でいただいた。GoogleMapで事前調査をして目星をつけたのは「大幸」さん。だいこう?たいこう?。お店のすぐ脇に駅前商店街無料駐車場があるのも良かった。

taikou?daikou?

お店のメニューを改めて眺めれば正しく町の食堂のそれ。初めて訪れた店であまりにも特徴が出過ぎる可能性があるメニューをお願いする冒険は避け、それなりにお歳を召したご主人に「チャーシューメンと半ライス」と大きめの声で伝える。

これを見て盛り上がれる人とぜひごいっしょしたい店
chashumen+halfrice

画像を見ておわかりのとおり直球ど真ん中の醤油ベースのラーメン。だが構成要素のひとつひとつがうまい。複雑玄妙ではないが実直で淡泊なスープ。若干縮れのあるたっぷりの細麺。スープと麺と真っ向勝負可能な味付けと厚みのチャーシュー。でき合いと思われるメンマもこの場合はふさわしい。半ライスの方は、これはむしろ普段筆者が家で食べているごはん一膳よりも盛りが良い。しかも如何にも炊飯後そのまま長時間保温されていたようないやな臭みは一切なく、冷や奴や漬物さえあれば米の旨味を充分堪能できる上等の白飯である。あまり馴染みのない土地の初めて入った店でこのラーメンとご飯は嬉しい。いや嬉し過ぎる。夢中で食べてしまった。これで800円ぽっきりである(チャーシューメン700円+半ライス100円)。なんだか狐につままれたようだ。うまかった。ごちそうさまでした。

退店して周囲をぐるっと歩いてみる。土沢商店街の魅力とはなんだろうか。まずその規模。大通り(と言っても車線すら引かれていない道幅)沿いにだけ展開している。路地文化はない。いや、商店街そのものが大都市の路地商店街みたいな規模なのか。一応コンビニはあるしホームセンターやスーパーマーケットもあるが、商店街とは距離がある。つまり絶妙な規模感と強力に地場感が横溢している様が良いということになる。

tsuchizawa
再掲。土沢商店街のど真ん中付近。
昼時だからか閑散としてます

近年「土澤アートクラフトフェア」という現代美術と手づくりクラフト製品販売のイベントが定期的に開催されるようになり、若く現代的な設えのお店もちらほら見られるようになった。そういうモザイクのようなお店の並びは宮城県栗原市の岩ヶ崎を彷彿とさせる。よそ者にはひたすらウィンドウショッピングが楽しい町だ。

zarus
でもこういうざるが普通に商品として並んでもいる

さて盛岡市内。盛岡八幡宮に次いで立ち寄ったのは「もりおか町屋物語館」さん。その中の「大正蔵」の喫茶にてジェラートをいただく。

gerato

周辺には今も古い町屋が現役で点在している。「母屋」他の内部を見学し周辺の街路を歩いてみる。この周辺に限らず盛岡市内には昭和どころか明治大正時代の建造物がいくつも残っており、現代の街並みの中にすっかり溶け込んでいる様は素敵だ。

moriokamachiyamonogatarikan
natayocho1
鉈屋町界隈。なたやと読みます
natayacho2

そのすっかり溶け込んでいる最たるもの、岩手銀行赤レンガ館方面へロードスターで移動しさらに散策。品の良いとても居心地の良い喫茶店がふたつほぼ隣接している。まず立ち寄ったのは「豆と喫茶waltz」さん。インスタグラムでご主人体調不良による入院と、故に喫茶はお休みだが豆の販売だけは行っていることは知っていた。せっかくなので記念にコーヒー豆を購入する。ご主人の体調など伺いお見舞いを申し上げつつ退店。帰宅後そのwaltzオリジナルブレンドを一杯いただいたが、爽やかで適度に複雑な味わいで良かった。

waltz-morioka
豆と喫茶 waltz

豆を買ったその足で向かうは「紅茶の店しゅん」さん。初めて伺ったのはもう5年前のことになる。以来盛岡に来るたびに訪問しては紅茶を堪能したり満席で入店できなかったりしてきたが、定休日に当たったのは今回が初めてだ。まぁ良いんです。また来ますので。

shun
せっかくなので味わい深い看板だけでも……

晩ご飯と翌朝の朝食をパン屋さんで仕込む。肴町の「パン工房ミッシェル肴町店」さん。あまり量を食べられないので吟味が難しい。サンドウィッチなど購入。盛岡と言えば様々なコッペパンサンドで有名な「福田パン」さんがあるが、その日ホテルから一番近い支店は定休日。同じ市内にある本店は常に行列らしく選択肢に入らない。矢巾町や滝沢市方面の支店へクルマを出すのも気分じゃない。もちろん福田パンの商品も食べてみたいのだが、今回はそういう巡り合わせということで。

宿にチェックインすると思った以上に身体に疲労が蓄積しており、なんと昼寝(夕寝?)してしまった。目覚めたらすでに外は暗い。向かいのコンビニで飲みものと若干のおかずを補填し、ホテルの部屋でぱくつく。

michell
ローソンのおかずロースカツが明らかに余計だった……

昨年末くらいから睡眠障害がある。どうせ夜中に何度も起きてしまうのだからと22時前には寝てしまう。

二日目編
宿泊したのは「北ホテル」さん。シックで落ち着いており調度に不備もない。盛岡県庁裏という立地も良い。最新鋭のホテルというわけではないが価格と居心地のバランスがとても良い。今回は素泊まりとしたので朝食にふたたびミッシェルのサンドウィッチ。食べてすぐに出発。まぁほとんど同じ絵面なので画像は省略。

盛岡から遠野、気仙沼までのめくるめく大パノラマをいくつも経験して辿り着いた気仙沼大島。観光客向けに飲食店がいくつもあるが、実績を買っていつも訪問するのは「はま家」さん。いわゆる町の食堂だがメニューが海鮮もの中心なのは大島ならではであろう。筆者が頼んだのは安定のまぐろ丼である。

hamaya
maguro-don

ひとくち食べて驚いた。まぐろにたっぷり脂が乗っており一見赤身かと思ったがほぼ中トロのような濃い味わいである。刺身の切り方としては粗いがむしろ丼はこういうので良く、実際ご飯といっしょにお箸で掬うには都合が良い。こうなるとむしろあら汁よりもお吸い物の方がバランスが良いし、自家製と思われる漬物もうまい。正直に言おう。1,000円台で食べられるまぐろ丼を近年探索してきたが、はま家のまぐろ丼はぶっちぎりのトップである。これが1,650円というのは信じ難い。ただしよそわれたご飯は最低限の量で正直ネタの方が多かった。次回再訪時はご飯大盛りを頼むだろう。はま家は他のメニューももちろんおいしい。こういう店を知ってしまうと他の店をわざわざ開拓しようという気も萎えがち。罪なお店である。

そして大島とくれば「魚研」さんである。魚研さんご夫妻との出会い以下のエントリーに詳しい。

2020.01.19「プントエヴォで行く!ヘンタイ諸氏が気仙沼・大島を訪れねばならない理由を説明します

uoken
再掲。お客さんがひっきりなしで、
肖像権加工するのが面倒だから看板だけ(笑)

2021年冬に再訪したのだが、COVID-19の影響かお店は閉まっており大変心配していたのだった。今回訪れてみると無事にやってる……どころか大繁盛。魚研さんは鮮魚販売の他に海鮮丼も提供しており観光客がひっきりなしに注文しているのだ。一瞬の虚を突いて店員さんに「あのー、ご主人夫妻はいらっしゃいますか?」と声をかけると「ええ、いますよ」の声と同時に奥からご主人が現れた。久しぶりのご挨拶だったが筆者のことは覚えてくれていたらしい。AlfaRomeo Spiderと書かれたTシャツを着ている(笑)。あれは多分以前限定販売されたユニクロのものではないか。アルファスパイダーのTシャツを着て筆者オーダーの尾頭付きカツオを捌いている様はロックンロールである。やがて奥様も登場。ひとしきり近況報告など。

katsuo
魚研さんで購入したカツオを刺身にしてその夜食べた。
5月のカツオなのに脂たっぷり!う・ま・い!
yuransanbashi
おまけ。魚研さん裏の遊覧船桟橋。
湾の向こうが気仙沼市街地

今回のツーリングでの食事は廉価なものに統一した。ルートとその周辺景色が素晴らしいのに、その上味覚まで最上級に喜ばしてしまうと脳みそがパンクしてしまう。今回は道路と景色でパンクしてしまっていたとも言える。だからあまり特別ではない食事を心がけたのだが、意に反して歓喜の食事ばかりだった。またクルマを停めて歩いてみた土地の空気も素晴らしい。そういう場所を歩いていると実際に自分が住んでいる様を想像してみたりする。波長が合わない場所ではうまく想像できないものだが、今回に限らずこれまで訪問してきた場所を思い返すに、岩手という土地は自分とすごく波長が合うようだ。

gyojaninniku
もうひとつおまけ。
あにまるのリクエストにより遠野風の丘で購入した
「行者にんにく醤油漬」。
冷や奴にたまごかけご飯に、
なんだかなんにでも合う!

以上、旅のメシと実際に空気を吸ってきた土地の様子だけを書いてみた。ぜひ参考にしていただきたい。また当方盛岡市内の良いお店情報を引き続き収集している。「肉の米内」「いなちゃん飯店」などはすでに心酔しているところだが、もう少しバリエーションもほしい。一関市、花巻市の情報も然り。経験豊富なみなさまの情報をぜひお寄せいただきたい。これにて第二次岩手探訪第一段「盛岡・遠野・気仙沼」終幕。お付き合いいただきありがとうございました。

8件のコメント

  • まだ試してないのだが、行者ニンニクはカツオにも合うんじゃなかろうか
    進言するの遅かったね(苦笑)

    • いや、やったやった。カツオに合わせてみた。当然美味かった。

  • こんにちは。一番刺さったのは、北ホテル。まず名前からして良い。昭和の臭い。これからは、私も北ホテルにします。あとは、マグロ丼と魚研。海鮮は呼びますね~、私を。日帰りにはきついかもしれないけど、食べてみたいです。

    • 気仙沼大島だけなら日帰りは充分可能ですので、まぐろ丼と鮮魚系お土産で1本、北ホテル宿泊で周辺のウマイモノ屋さん探検で1本はいかがでしょうか。3月に家族と盛岡に行った際に、曜日が悪くほとんどのお店がお休みだった呑み屋街があります。盛岡城趾公園・櫻山神社真ん前の一帯です。おいしそうなお店がたくさんあったんですよ!いくつか開いてたお店も予約でいっぱいで入れず……。奥様が呑めるならぜひそっちも探検してみていただきたいです。

  • どれもおいしそう!特にまぐろ丼。いいなぁ。
    それにしても「そんなに量が食べれない」ひとの量じゃない(笑)

    • え?ぜんぜん食べられなくなりましたよ……(遠い目)

  • 行者にんにく醤油漬 は少しほしいな・・・何にでも合いそうですね。
    大手屋の鯛焼きついでに購入しにいこうか思案中 汗

    • 納豆がお好きなら納豆に加えてもおいしいですよ<行者にんにく醤油漬 最初どうしても見つけられず店員さんに訊いて判明しました。冷蔵商品なんですね。豆腐などと一緒に冷蔵ケースに並んでました。
        
      大手屋さんにオレが次回訪問できたらだんごを食べてみようと思います。あんこの実力はかなり高いはず!

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です